名門・東九州龍谷高に強力ルーキーずらり、スーパー1年生アタッカーの相棒は「肝っ玉セッター」 監督がほれ込む心と技術

東九州龍谷高の注目1年生コンビ、セッターの吉村はぐみ(右)と忠願寺莉桜

高校バレーボールの女子の強豪校で、過去に通称「春高バレー」を5連覇するなど数々の金字塔を打ち立てた東九州龍谷高(大分)に楽しみな「肝っ玉セッター」が加わった。吉村はぐみ(1年)は西部中(佐賀)時代に年代別日本代表として活躍。抜群のハンドリングやトスワークに加え、メンタルの強さも備えており、スーパー1年生アタッカーの忠願寺莉桜(ちゅうがんじ・りおん)とともに日本一への原動力になる。

部員25人は自分で選んだ1年間のテーマを練習着に書いている。「不退転」「強気」「勝負心」「誠実さ」…それぞれの決意が伝わってくる。「見えないところまで『見抜く』という意味もあると知って、気に入りました。普通のセッターではしないようなプレーをしたいので」。吉村が選んだのは「洞察力」だった。

春高、全国高校総体、国体のいわゆる「高校3冠大会」を過去12度制した相原昇監督(55)は「ぶれない」と評して、二つの特徴を挙げた。一つ目はトス。「ハンドリングもいいし、オーバーハンドのトスがシュッと飛ぶんです。伸びるんですよ。しかもレフト側から(逆サイドの)ライト側まで、バックトスで持ってくることができます」。非凡な才能は技術面にとどまらない。二つ目は心。「普通なら舞い上がってもおかしくないような場面でも、肝が据わっている」。司令塔に不可欠な気持ちの強さも感じ取っている。

「リオンと高校でも一緒にプレーを」

佐賀県鹿島市出身。地元のバレーボールクラブで、気が付いたらトスを上げていた。「中学の途中まではツーセッター(6人のプレーヤーのうち2人をセッターにするフォーメーション)でスパイクも打っていたんです。でも、腰を疲労骨折したので、それからはセッター一本です」。中学3年の春。年代別の代表合宿に招集された。以後、何度か呼ばれるうちに「私にも可能性があるかも…」と、光が差し込んだ気がした。

同年の夏に中国で開催された「第1回アジアU16女子選手権大会」では、高校でチームメートとなる忠願寺莉桜らとともに優勝に貢献。「リオン(忠願寺の愛称)と高校でも一緒にプレーしたい」との思いが強くなり、通称「東龍(とうりゅう)」の門をたたいた。

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フルセットで勝利した4月6日の福岡大との交流試合でデビューした。久しぶりの実戦に加え、チーム練習に参加して日が浅く、コンディション面でも万全ではなかった。「トスで(相手のブロックを)振ろうとしても、ミドル(ブロッカー)が付いてきますし、遅れてでも(ブロックに)跳んでくるんです。やっぱり大学生はすごいなと感じました」。それでも随所で非凡なトスワークを披露した。昨年度の春高バレーにも出場するなど1年時から大舞台のコートに立っている楢﨑杏菜(2年)とプレータイムをシェアしながら、果敢にオフェンスを率いた。「1本だけ、いいプレーがありました。ポイントにはなりませんでしたが、右手…ワンハンドでトスを上げて、いいラリーができたんです」。照れるようにして、ほほ笑んだ。

「駆け引きが好きなんです」

好きなプレーは、相原監督も指摘した「ファーサイド」へのトス。「ブロッカーを惑わすために、飛ばしたりします。そういう駆け引きが好きなんです。コート上では一人だけですし、ラリー中に一番ボールを触れる。そこがセッターの面白いところです」

吉村が憧れる久光スプリングスの栄絵里香(撮影・西田忠信)

憧れのセッターはVリーグ女子1部(V1)の久光スプリングスの栄絵里香(33)だという。「(速攻の一つで2~3メートル前方へ上げる)Bクイックを一回見せておいて、ラリーでもう一回Bを使うところとか…そんな強気なトスにひかれます」。身ぶり手ぶりで説明した後、未来の姿を思い描いた。「頑張って努力して、Vリーグ(今秋から発足するSVリーグ)のチームに入ること。そして将来日本代表の正セッターになることです」。バレー人生の最高到達点へ向かって、15歳のトスが一直線に伸びていく。
(西口憲一)

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佐賀県鹿島市出身、好物はミニトマト

吉村はぐみ(よしむら・はぐみ)2008年11月2日生まれ。佐賀県鹿島市出身。ポジションはセッター。バレーボールをやっていた3学年上の姉きららさん(18)の影響で同市の能古見小浅浦分校(18年3月に閉校)1年の誕生日から「能古見ジュニアバレーボールクラブ」で競技を始める。同市の西部(せいぶ)中3年時に16歳以下の女子日本代表に選ばれた。23年7月に中国で開催された「第1回アジアU16女子選手権大会」で優勝に貢献し、ベストセッター賞を受賞。佐賀県選抜で出場した同年12月の「全国都道府県対抗中学大会」では、年代別代表のエース忠願寺莉桜を擁する大分県選抜に準々決勝で屈するも、大会の優秀選手に選出された。身長168センチ。名前の「はぐみ」の由来は、父隼人(はやと)さん(41)の「は」と母めぐみさん(43)の「ぐみ」から。好きな食べ物はミニトマト。

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★は年代別日本代表

宮ノ陣中出身のミドル! 四国No.1アタッカー‼

今夏に地元の大分県中津市で開催されるバレーボールの全国高校総体(インターハイ)で、日本一奪回を目指す東九州龍谷高に有望な1年生が加わった。年代別日本代表のエースで「中学ナンバーワンアタッカー」と呼ばれたオポジットの忠願寺莉桜(ちゅうがんじ・りおん)=大分・稙田南中出身=ら8人が、4月9日の入学式を経て正式に「東龍」の一員となった。

佐賀・西部中時代に同代表で忠願寺とホットラインを形成したセッターの吉村はぐみも即戦力で将来性十分。同じく代表メンバーの松尾侑和(ゆな)=福岡・宮ノ陣中出身=は身長179センチのサイズとジャンプ力を生かすために、ミドルブロッカーとして育てていく方針だ。アウトサイドヒッターの鎌倉詩織も香川一中時代に「四国ナンバーワン」と評された逸材。サイドアタッカーとしての総合力は高く、チームの紅白戦でもレフト側からの強打で存在感を示している。

「安田や竹内が成長していくことで…」

忠願寺と同じくサウスポーでオポジットの安田愛梨(あいり)=大分・東部中出身=と、セッターの竹内茉音(まお)=大分・長洲中出身=は大分県選抜のメンバー。「中学での実績や経験面では忠願寺や吉村に劣っても、3年間トータルで考えたときに、安田や竹内が成長していくことで戦術面での広がりを持たせられることになる」と相原監督は期待を寄せる。

兵庫県選抜でサイドアタッカーだった廣瀬安寿紗(あずさ)=兵庫・甲子園学院中出身=は高校入学と同時にミドルブロッカーへ転向した。「パワー、ジャンプ力ともに非凡なものを持っている」と相原監督も伸びしろを感じ取っている。4月6日の福岡大との交流試合にリリーフサーバーでコートインした福田結衣(ゆい)=岡山・金光中出身=はリベロとして早期出場が見込まれている。

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