『BPL SDVX』ファイナルの激闘をレポート 「マジカルでもミラクルでもイリュージョンでもない」戦いの結末は

コナミアミューズメントが運営する音楽ゲームのeスポーツリーグ『BEMANI PRO LEAGUE』(BPL)最新シーズンのフィナーレを飾るイベントが、3月20日に船橋アリーナで開催された。

『BEMANI PRO LEAGUE -SEASON 3- SOUND VOLTEX セミファイナル・ファイナル × 私立ボルテ学園アルティメットガクエンサイ!2024』と称するこの催しは、音楽ゲーム『SOUND VOLTEX』を題材としたプロリーグの最終決戦に、関連アーティストによるDJライブをカップリングした、約9時間にも及ぶ壮大な祭典であった。

イベントの『BPL』パートでは、全7チームで繰り広げられてきたリーグ戦(レギュラーステージ)の上位4チームが、トーナメント形式でセミファイナル2試合+ファイナルの計3試合を実施。株式会社マタハリーエンターテイメントがオーナーを務めるSILK HATが栄冠に輝いた。

決戦の舞台となったイベントから、本記事では『BPL』の各試合について詳細にレポートする。試合と交互に披露されたDJライブ『私立ボルテ学園アルティメットガクエンサイ!2024』の模様については、本記事で共に扱うには情報量が膨大過ぎることから、別稿にて詳述したい。

■セミファイナル第1試合 SILK HAT vs. APINA VRAMeS

試合前のオープニングでは『SOUND VOLTEX』を代表するキャラクターであるグレイス(CV:石橋桃)、嬬武器雷刀(つまぶきらいと/CV: 悟代武)・烈風刀(れふと/CV: 吾妻奎太)の3人が登場。レギュラーステージを通してResident DJとして試合間のバックグラウンドミュージックとなるDJプレイを披露していた雷刀・烈風刀の兄弟は、この日もそれぞれセミファイナル第1試合・第2試合の司会とDJを担った。

これまでのレギュラーステージは先鋒戦・中堅戦・大将戦の3試合で構成されていたが、セミファイナル以降は次鋒戦・副将戦を追加した5マッチによる熾烈な戦いが繰り広げられた。

先鋒戦はSILK HATのSTR(すとら)選手とAPINA VRAMeSのKND*48TE(よばて)選手による対決。試合形式はメガミックスバトル。指定された楽曲リストから各チーム5曲ずつを選択、イントロ・アウトロを追加した計12セクションでポイントを獲得し合う、『SOUND VOLTEX』が独自に編み出した音楽ゲームの試合形式だ。

本来、BEMANIシリーズをはじめとする多くの音楽ゲームの素性は楽曲&譜面とプレイヤーの真っ向勝負であり、人と人との勝負はシステム的に想定されていなかった。もちろん前世紀に実施された初の公式大会『beatmania BATTLE OF THE CLIMAX 1998』以来、音楽ゲームによる対戦という概念は洗練を重ねてきており、『BPL』でも各タイトルでそれぞれに魅力ある試合形式が試みられている。

そのなかでも『SOUND VOLTEX』が、楽曲接続技術「AUTOMATION PARADISE」(2019年)をさらに磨き上げることで完成したメガミックスバトルは一つの大発明だ。ゲージ消費を利用する星取りシステム「EXCEED GEAR」による逆転に次ぐ逆転の演出、各選手のいわゆる武器曲の活用促進、自選曲をひとつ落とすことの絶望感。1セクションごとに情緒を振りまわされるこのバトル形式は、観戦者視点での魅力において、音楽ゲームを用いたeスポーツ中でも頭ひとつ飛び抜けている。

本試合では第1~3セクションまで、互いに満点にあたるPUCを獲得し点差がつかず。なおセミファイナル~ファイナルの全試合を通して、プレイ対象は少なくともレベル17以上の譜面のみで構成される。一発勝負でPUCが頻発する奇跡を、BPL選手たるプレイヤーは彼らの水準の高さをもって、さも当然であるかのようにこなしてみせる。第4セクションでKND*48TE選手がたった1つのノーツを落としたのを契機に一進一退の攻防が始まり、息を呑む展開となった初戦を、SILK HATのSTR選手が制した。

次鋒戦はDAIKI.(だいき)選手 & 082(おおやぶ)選手 vs. YU11(ゆーいち)選手 & PAPER.(ぺーぱー)選手によるタッグバトル。 『SOUND VOLTEX』ならではの要素といえるHAND-TRIP(片手操作中に逆側に降ってくるノーツが多い譜面)がテーマの対決では、SILK HAT側が「Help me, ERINNNNNN!! -Cranky remix-」、APINA VRAMeS側が「エンゲージ〆ント」を選曲。自選曲を互いに食い合う熱戦で両チームが星を分け合った。

中堅戦はSTR、YU11の両選手によるマッチ。選手の出場コストを計算していた熱心なオーディエンスは、APINA VRAMeSがエースのYU11選手をあえて大将戦に温存しない意外な戦略を取ったことを、この時点で読み取っていただろう。その意外性を振り切るように幕を開けたメガミックスバトル。この試合を、筆者はこの日のベストマッチに挙げたい。

静まったアリーナを包み込む心臓の鼓動を響かせた「Turn the story」、連打が一つ外れたらすべてが吹き飛ぶギリギリの緊張感を駆け抜けた「び」……レベル18譜面でのツインS-PUCという信じがたい一幕すらオマケと言わんばかりに進んだ試合は、最終「Grandeur」セクションでレベル1のEXCEED GEARを通してYU11選手が最後の2点差を追いすがり、双方ドローの結末を迎えた。

副将戦は082選手 & STR選手と、PAPER.選手 & YU11選手によるタッグバトル。SILK HAT側から本日初のストラテジーカード(相手の選曲を無効とする戦術的選択肢)が発動され、楽曲は「MG277」「Wings of Glory」の2曲に決定された。

タッグバトルの対戦画面レイアウトでユニークなのは、得点が「理論値からの失点数」で表示されることだ。たとえばファンの呼称する「1個」とは、約2分間にも及ぶ演奏中に、満点から1つだけノーツ取得に小さなミスを犯したことを意味する。筆者の知る限り、少なくとも20世紀末頃には『DanceDanceRevolution』等の高度プレイヤーコミュニティで用いられていた文化だが、音楽ゲーム競技の最新鋭たる『BPL』に至って、ファン間で広く通用する一種のミームへと昇華されていることは感慨深い。

ミリ秒単位の誤差がミスカウントとして積み重なるたび、心の藁を一本一本抜かれていくかのような戦い。試合のラスト数秒で突如の引き離しが発生した「MG277」、こちらもしのぎを削る戦いとなった「Wings of Glory」を超えて、またも互いの選曲を取り合うクロスカウンターが発生。1試合を残してチームスコア6-5という大接戦にもつれ込んだ。

大将戦はDAIKI.選手とKND*48TE選手のマッチ。「Fiat Lux」「ЯeviveR」とコンポーザーxi絡みの2曲で星を分け合ったのち発表された最後の課題曲は、『BPL S3 SDVX』オリジナル楽曲コンテストで優秀賞楽曲を獲得したxi「Xeno Gravity」。xiの得意とするアートコアの完全新曲に挑む両選手は、顔元カメラでその心を表情に窺わせながらBPM286を駆け抜け、決着に至る。最後の最後までもつれ込んだ一旗を打ち立てたのはDAIKI.選手。ここに至り、セミファイナル第1試合はSILK HATが劇的な勝利を飾った。

至高の試合を全身に浴びたオーディエンスたちはすでに決勝戦を観終えたかのような余韻に浸るも、本大会はさらに熱気を増していく2つの試合を残していた。

■セミファイナル第2試合 GAME PANIC vs TAITO STATION Tradz

DJライブを挟んでの次なるセミファイナルは、レギュラーステージの2位と3位を僅差で分け合ったGAME PANICとTAITO STATION Tradzの対決だ。

その冒頭を飾る先鋒戦は、まさに双璧の正面激突。昨年11月の公式個人大会『KONAMI Arcade Championship(2023)』(KAC)最新回を制覇した“SDVX Hero”ことKANEKO(かねこ)選手と、全選手中最高のVOLFORCE(ゲーム内の実力指標値)を誇る米国プレイヤーXD*LEVI.(れびあーん)選手のマッチであった。

メガミックスのセクションが終わるたびPUCの文字が踊り、区切りが訪れるたびオーディエンスがざわめく。第9節までの延べ18譜面中14譜面がPUCという異常なバトル。KANEKO選手が取り、XD*LEVI.選手が返し、最終セクション「二分間の世界」も果たして同点かと思われたラストの数秒、KANEKO選手がわずか1箇所のミス。同地帯をPUCで切り抜けたXD*LEVI.選手が勝利を飾った。『BPL S3』の名試合列伝にまたひとつ名を刻む、虎と獅子が互い牙を立て合い身悶えるかのような緊迫の7分間であった。

これまでレギュラーステージの全6試合を通し、メガミックスバトルに勝てないジンクスに苦しめられてきたTAITO STATION Tradz。“異国からの刺客”ことXD*LEVI.選手が、大舞台でその苦悩を見事に払ってみせた。

次鋒戦はPURAIMU(ぷらいむ)選手 & KN5(けんご)選手と、MURAKAMI(むらかみ)選手 & 350B1(みそび)選手のタッグバトル。「PIZZA TIME」と「ムーニャポヨポヨスッポコニャーゴ」による対決では、両チームが互いに自選を取り合い、2-1ポイントに持ち込んだ。

PURAIMU選手とMURAKAMI選手による中堅戦、そして次鋒戦と同陣容で繰り広げられた副将戦は、TAITO STATION Tradzがその圧巻の実力を魅せる。メガミックスバトルで3回のEXCEED GEARをすべて通してみせたMURAKAMI選手。他機種からの移植曲である「KAMAITACHI」「リリーゼと炎龍レーヴァテイン」の2曲が『SDVX』で繰り広げる難譜面を、終始の安定感を保って演奏した350B1選手。VOLFORCE総合2位・3位の実力を有する2人が、計3試合の全てをもぎ取り、大将戦を待たずしてチームのファイナル進出を確定してみせた。

大将戦はKANEKO選手とXD*LEVI.選手による再びのエース対決。シングルバトル1曲目は、ぺのれりが『The 4th KAC』楽曲コンテストで最優秀賞楽曲を射止めたシンフォニックなアートコア「Everlasting Message」。ここではGAME PANICが序盤をリードしつつTAITO STATION Tradzが粘り腰で中盤に逆転。続くデッドヒートの末に再逆転を見せたKANEKO選手が1勝を獲得する。

2曲目「Undead Raving Scare」。RoughSketchがRoughSkreamZ名義で2023年9月に繰り出した変則ミクスチャーロックによる対決は、終始崩れを見せず盤石のリードを維持したXD*LEVI.選手が制した。

セミファイナルのトリを飾る3曲目は、『BPL S3 SDVX』オリジナル楽曲コンテスト最後の優秀賞楽曲に輝いた、打打だいずによる新曲「Cuz we <3 this Game」。作曲者自ら「ボルテがあったからこそ生まれた音楽ジャンル」と語る、『SDVX』というゲームタイトルへの愛と敬意に溢れた華やかな高速ポストロックの超難度に、二人の選手はただ二本の腕で挑む。 満場の観衆とネット配信越しによる数千の瞳からの注目を受けながら、モンスターのような実力を如才なく発揮するXD*LEVI.選手が徐々に差を広げる。このまま勝利の凱旋かと観衆の誰もが思った刹那、完全初見の譜面が牙を剥く。突如現れた悪魔のような出張に点数を奪われたXD*LEVI.選手と、信じがたい霊感でトラップを見抜いて対応したKANEKO選手。須臾の間に劇的な逆転が果たされ、GAME PANICが最終楽曲で一矢を報いた。 もともと『KAC』の『SDVX』部門では、超高難度曲の初見一発勝負という演出が、2012年の初回から現在に至るまで決勝戦最終楽曲の伝統として引き継がれている。筆者の推しであるKANEKO選手が、最新の『KAC』でBlackY feat. Risa Yuzuki「Λkasha」の初見対決を制して個人戦の頂点に輝いたチャンピオンとして、まさに面目躍如を果たした一幕であった。 GAME PANIC側もきっちりと見せ場を作ったセミファイナル第2試合、各チームの最終スコアは5-10。総合力を見せつけたTAITO STATION Tradzがファイナルに駒を進めた。 ■ファイナル SILK HAT vs TAITO STATION Tradz 2024年3月20日。この日の午後、船橋アリーナ周辺をひとときの驟雨が通り過ぎた。雨上がりには陽が差し、空には虹が見事な弧を描いていたという。 ファイナル開始前には選手が観客席の中央に設けられた花道を通って登場する演出。チームイメージミュージックのTsubusare BOZZ feat.madoka*「Colorful Magical Parade」をBGMに、会場の白いサイリウムに見送られ、“マジカル・ミラクル・イリュージョン!”をキャッチフレーズに掲げるteam SILK HATの082選手、STR選手、DAIKI.選手が舞台に歩みを進めた。 一方のTAITO STATION Tradzのイメージカラーは赤×黒。誰が称したか「紅白ボルテ合戦」とは粋な表現だ。グレイスによる選手紹介アナウンスと、493Water「NO SURRENDER」の強烈なディストーションが掛けられたキックに乗って、“The Party Rockers here to beat.”を標榜するTAITO STATION Tradzの350B1選手、MURAKAMI選手、XD*LEVI.選手が姿を見せた。 ファイナルの口火を切る先鋒戦は082選手と350B1選手によるメガミックスバトル。セミファイナルからさらに課題曲のレベルが引き上げられ、この戦いの基準レベルは18。相互PUCでのタイが発生しづらくなり、序盤から各自の選曲による点の取り合いが頻発。自選曲をひとつ落とすことが後の致命傷につながる熱い展開を、2セクション連続S-PUCという信じがたい展開すら見せた350B1選手が制した。 次鋒戦はSTR選手 & DAIKI.選手、XD*LEVI.選手 & MURAKAMI選手によるタッグバトル。ここではSILK HATが終始安定したプレーで自選曲「HAVOX」を通すと、その勢いでTAITO STATION Tradzによる選曲「Dogeza Stairs」までSTR、DAIKI.両選手がMAX-1ケタという驚異のスコアで打破。2連勝でポイントの逆転を果たした。 中堅戦はSTR選手と350B1選手による対決、課題曲の譜面レベルはついに19に突入した。「Verse IV」「For UltraPlayers」「Dyscontrolled Galaxy」といった、KAC最終課題曲を含めた超難関楽曲が無数に飛び交う恐怖のメガミックスバトル。レギュラーシーズン第12試合の先鋒戦や大将戦でも鮮烈な激戦を繰り広げた2人が、ここでも凄まじい試合を見せつけた。 レベル19をものともせず相互に星を取り合った第2~5節、自選で発動させたレベル3のEXCEED GEARを互いに撃ち落とし空振らせてみせた第7~8節、ラスト直前にポイントを均衡させた第10節。瞬きひとつすら許しがたいダイナミックな展開が観衆の琴線をごりごりと揺さぶる。 勝負を決するアウトロセクションはTAG作曲・cosMo@暴走P編曲による「GERBERA-For Finalists-」。ファンから畏怖を込めて「壁」と称される難地帯を取りきり、STR選手が粘り勝ち。この一日で最も観衆の脳内物質を放出させたであろう驚愕の一戦は、SILK HATの勝利に終わった。 副将戦はSTR選手と082選手、MURAKAMI選手と350BI選手による最後のタッグバトル。「月光乱舞」ではSILK HATがリードするも、中盤からじわじわと差を縮めたTAITO STATION Tradzが逆転、わずか8点差で勝利の果実をもぎ取る薄氷の展開。 そしてタッグバトル最大の熱戦となった「Absurd Gaff (Metallize Remix)」は、序盤にSTR選手主導で相手に水をあけたSILK HATが、シーソーゲームを経て終盤で突き放し、TAITO STATION Tradzの選曲にカウンター。チーム総合スコアを、総合優勝にリーチのかかった6-3へと広げてみせた。 ファイナルにふさわしい激戦を制したSILK HAT。これほどアツいタッグバトルは『BPL SDVX』の2シーズン史を通してもなかなか類を見ない そして『BPL S3 SDVX』のフィナーレを飾る大将戦は、DAIKI.選手とXD*LEVI.選手によるエース対決。音楽ユニット・隣の庭は青い(庭師+Aoi)によるThe 10th KAC オリジナル楽曲コンテスト優秀賞楽曲「Xb10r」では、DAIKI.選手がシーズンの主人公格たる安定感を発揮して自選曲に勝利。BlackYooh vs. siromaru「BLACK or WHITE?」も、ブレイク地帯で0点差という大接戦をDAIKI.選手が制した。 そして3曲目の最終課題曲として、『BPL S3 SDVX』オリジナル楽曲コンテスト最優秀賞楽曲、隣の庭は青い(庭師+Aoi)「NEMSYS ARENA World Hexathlon」が発表された。 ここでは粋な演出として、画面表示が『BPL』形式の対戦レイアウトではなく、通常のゲームプレイ画面をベースとしたものに変更。素性の枠を越えてエキシビションマッチとしての芳香すら漂わせる対決では、NOTES、ONE-HAND、TSUMAMI、HAND-TRIP、TRICKY、PEAKという『SDVX』の譜面傾向を全て織り込んだ最高レベルの楽曲での対決では、TAITO STATION TradzのXD*LEVI.選手が勝利を飾った。 SILK HATとTAITO STATION Tradzの最終チームポイントは10-5。ドラマチックな名試合の数々が生まれたセミファイナル~ファイナルを制覇し、栄冠を手にしたのはSILK HATであった。 ■表彰式 大会に続いては表彰式を開催。かつて『SOUND VOLTEX』というシステムそのものを立ち上げたひとりでもある『BPL』エグゼクティブ・プロデューサーの西村宜隆 常務執行役員、そして『BPL』チェアマンを務める沖田勝典 代表取締役社長が、3カ月にわたるシーズンを彩った選手たちと優勝チームを祝福した。 レギュラーステージの個人賞として、PUCスターのYU11選手(APINA VRAMeS)、ベストバディ賞のMURAKAMI選手 & 350B1選手(TAITO STATION Tradz)、EXCEED GEAR賞のSTR選手(SILK HAT)がそれぞれ表彰を受けた。 優勝を果たしたSILK HATの表彰では、オーディエンスも一面の白色サイリウムで祝福。司会の森一丁は、SILK HATが昨年のSEASON 2ではクォーターファイナル敗退という結果に終わり、その苦難を乗り越えて成し遂げた偉業を踏まえたうえで、「マジカルでもミラクルでもイリュージョンでもない、本物の実力で上り詰めた」と、チームキャッチフレーズに引っ掛けて3人を激賞した。 SILK HAT各選手からの優勝のあいさつで、082選手は嗚咽に声を途切れさせながら、「このシーズン中、なかなか振るわないこともあったが、最後の最後に一矢報いることができた」とコメント。「みなさんの応援のおかげで優勝できた。今日のことは一生忘れません」と言葉を絞り出し、会場から大きな拍手を浴びた。 STR選手は、自身がチームで唯一『SEASON 3』からの新規参戦者であったことに触れ、「分からないことだらけでチームに参加したが、2人とファンのおかげでここまで来れた」「『BPL』はVOLFORCEがすべてじゃないぞ、を見せられた」と、ゲーム内スキル値では測定できない真の実力者として、実績に裏打ちされた言葉をファンに向けた。 そしてドラフト1巡目のDAIKI.選手。前シーズンからの苦難を超えて優勝トロフィーを手にし、082選手が流す涙を目にして優勝を実感したと話し、「SILK HATって、仲が良いチームみたいに認知されていると思うが、ここにくるまでずっと楽しかったわけじゃない。つらいこと、しんどいこともあった。でも最後まで、優勝まで乗り越えられたのは、メンバー、ファン、近くで支えてくれてくれた人々のおかげ。本当にありがとう」とあらためての感謝を表明した。 最後に「絶対言いたいことがある」と前置きのうえで、「seatrus! やったよ、優勝したよ!」と呼びかけ。事情があり前シーズンをもってSILK HATを退団した大切なチームメイトに向け、この場にいなくてもずっと一緒にいたのだと、感動のコールで優勝コメントを締めくくった。 ■『BPL S3 SDVX』はまだ終わらない 試合後にはeSports推進室の室長を務める植松斎永氏が登壇し、ゲーム内イベント等を含む数々の告知が行われた。最注目といえるのは、4月20日に開催予定の『ULTIMATE DREAM MATCH』と称するスペシャルな企画だ。 これは『BPL S3 SDVX』本戦に出場した7チーム21人の選手に加え、事情から本編出場の機を逸していた3人のスーパープレイヤーが共に出演、2チームに分かれて激突する特別イベント。esports 銀座 studioでの現地観戦に加え、バブリックビューイングやオンライン配信も提供される。 船橋アリーナでの激戦を越え、音楽ゲームeスポーツの最先端たる『BPL』は続いていく。これからの展開からも目が離せない。 (文・写真=市村圭)

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