マイホーム購入時、絶対に避けたい〈地価が下がるエリア〉とは【専門家が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

マイホームを購入したものの、コントロールできないのが市場価値。しかし、「今後価値が下がる可能性の高いエリアを予想することはできる」と、住宅ローンに詳しい公認会計士の千日太郎氏は言います。千日氏の著書『住宅破産』(エムディエヌコーポレーション)より、詳しくみていきましょう。

地価が下がるエリアを「立地適正化計画」から予想する

マイホームの購入後の市場価値(地価)については、自分でできることは極めて限られてきます。しかし、少なくとも今後価値が下がる可能性の高いエリアを予想することはできます。国土交通省が平成26年8月に施行した改正都市再生特別措置法に基づく立地適正化計画をチェックするのです。

立地適正化計画とは?

今後、地方都市では高齢化が進んで福祉や医療費の増加は避けられません。一方で働き手になる若年層の人口は減少しています。これまでの地方都市は高度成長期に拡大路線を取って膨張して来たのですがそれでは効率が悪いというので、これをコンパクト化して効率化しようというのが、立地適正化計画の狙いです。

・居住誘導区域に緩やかに住民の居住エリアを誘導していく

・都市機能誘導区域に医療、福祉、商業施設を誘導していく

・拠点間を結ぶ交通サービスを充実させる

このように駅前を中心に都市機能誘導区域や居住誘導区域にして、医療や福祉施設をまとめて立地して高齢者をはじめ住民達が公共交通手段で手軽にアクセスできるようにしようという内容です。

居住誘導区域外は市場価値も使用価値も下がる

つまり、居住誘導区域外のエリアは今後取り残される運命にあるということです。地方の市バスは赤字路線を抱えています。一部にはこれを民営化しようという動きなんかもありますが、赤字では手をあげる民間企業はなかなかありません。だからと言って急にやめるわけにもいかないので、徐々に居住区域を利便性の良い場所に誘導しようとしているのです。

居住誘導区域外では近所の市立病院は統廃合によって無くなり、バスの停留所も無くなっていくのです。市場価値はもちろんですが、使用価値も下がってしまうでしょう。

立地適正化計画の作成について具体的な取り組みを行っている都市については、国土交通省のホームページで各団体が具体的にどのエリアを居住誘導区域としているかを地図で調べられるようになっています。

これからマイホームを購入する人は、そうした居住誘導区域外のエリアやその境界線に近いエリアを買わないように注意してください。すでにそのエリアに入ってしまっている人は、早めに住み替えることをお勧めします。

[図表]立地適正化計画=コンパクトシティ・プラス・ネットワーク 出所:『住宅破産』(エムディエヌコーポレーション)より抜粋

購入後に「建物の価値」を維持する方法

不動産の価値は土地と建物によって構成されます。所有者は、建物を維持するための費用を払うことになります。その費用の発生の仕方については、マンションは管理費と修繕積立金で毎月支払いを続けていくのに対して、戸建ては必要なときにまとめて払うという違いがあります。

マンションの場合は、1ヵ月のmあたりの管理費単価を216.43円(2011年不動産経済研究所首都圏マンション管理費調査)とし、mあたりの修繕積立金単価を218円(平成23年国土交通省マンションの修繕積立金に関するガイドライン)と仮定すると、60mの物件で毎月2万6,066円となり、30年間で約938万円となります。

一方で戸建ては、外壁塗装や屋根塗装、クロスの張替えなど、必要になるたびに数十万円から100万円程度の修繕費がかかります。一般的な相場をベースとして30年間で集計すると約700万円前後となります。

ただし、戸建ては古くなっても必ずしもメンテナンスするとは限りません。マンションに比べると意思決定が家族だけでできるので、建物の状態を見ながら維持にかける費用の調整がしやすいです。

これに対して、マンションは適正な長期修繕計画に従うと数年ごとに修繕積立金が上がっていくことが通例です。売り出しのときの修繕積立金の金額は売るために過度に安く設定されているのです。購入後はマンションの所有者で構成される管理組合で話し合って、修繕積立金を上げていくことになります。

修繕積立金が上がっていくのは損な感じもしますがマンションの価値を維持していくのに必要な費用なのです。そして、それは自分の力の及ばないところで勝手に決まるのではなく、自分もまた、管理組合のメンバーとして発言する権利、議決権を持っています。

マンションのコミュニティー=管理組合のレベルは貨幣単位では測定できませんが、適正な修繕計画を立案し実行してマンションの耐用年数を延ばすことが出来るかという面で善し悪しがあります。住人がまとまらず、計画通りに修繕できないと建物の寿命が短くなってしまいます。

コミュニティーの価値を上げましょう。そのコツは一人一人がマナーを守り、互いに挨拶をし、管理組合の総会に出席することです。住民が管理組合の意思決定に主体的に参加することで、その価値は上がります。これがコミュニティーの価値を上げるコツであり、ひいてはマンションの市場価値を上げることにもつながります。

千日 太郎

オフィス千日 代表社員

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