NHK夜ドラ「VRおじさんの初恋」でさすがの演技 野間口徹はバイプレーヤーから堂々の主役級に

どんなキャラでもハマる(C)日刊ゲンダイ

主演じゃないのに、どうも存在が気になってしまう――。この人はその筆頭かもしれない。俳優の野間口徹(50)。バイプレイヤーとしてすっかりお馴染みだが、現在放送中のNHKの夜ドラ「VRおじさんの初恋」(月~木曜夜10時45分)では、堂々のNHKドラマ初主演。言わずもがなだが、VRは「Virtual Reality」の略、「仮想現実」のことだ。

「『VRおじさんの初恋』では、野間口さん演じる直樹が装着するゴーグルの中で展開する仮想現実の世界と、直樹が生きる現実の世界が行ったり来たりする。テレビ離れしている若年層にターゲットを絞った“夜ドラ枠”らしい、チャレンジングな作品です。高齢の視聴者なら《意味が分からない》と離脱しかねませんが、そこはさすがNHK。この内容で連ドラとは強気ですよね」と笑うのは、ある民放キー局プロデューサーだ。

野間口演じる直樹はタイヤメーカーに勤める冴えない独身中年社員。家に帰るとゴーグルを装着してVRに没頭する。仮想現実での直樹のアバターであるナオキは女子高生の姿をしており、演じているのはNHK連ドラ初出演の新人、倉沢杏菜(19)だ。

「現実の直樹はコミュニケーションが得意ではない、暗めのオジサン。それが家に帰れば上下グレーのスエット姿でバーチャルに没頭。アバターが走る時には、現実の直樹もその場で走るのですが、大きなゴーグルをつけて息を切らしながら走る直樹の姿はちょっとこっけいでもあり、どこかもの悲しさもあり……現実世界の直樹を演じる野間口さんの悲哀ある演技はさすがのひと言です」と、ドラマウォッチャーで芸能ライターの山下真夏氏は、さらにこう続ける。

「野間口さんは冴えない普通のオジサンから狂気を感じさせる怖い男まで、どんなキャラでもハマる。特にここ数年、多くのドラマに引っ張りだこではありますが、どんな役であっても印象が強く、《もっと野間口さんの演技が見たい!》《出番を増やして》と思わせる役者さんですよね。『VRおじさんの初恋』は主演ですから、繊細な野間口さんの演技がたっぷり楽しめる。あっと言う間の15分間です」

ネット上にも《現在リアタイするほど気に入っています》《この世界観、面白い》《ナイスキャスティング!》などなどエールを送る声も少なくない。

一方、アバターのナオキを演じる倉沢杏菜の演技にも注目が集まっている。倉沢は2021年から22年にかけて開催された「レプロ30周年主役オーディション」で約5000人の応募者の中から見事合格した、期待の新人。演技初心者ながら「VRおじさん」では、直樹のアバターという難役に挑んでいる。

「直樹のアバターなわけですから、見た目は女子高生でもセリフを喋る際には直樹を、つまり野間口さんの口調と似通うように意識しなければならない。撮影にあたっては、野間口さんが先に自分のセリフを読み、その後、倉沢さんに同じセリフを読んでもらい、丁寧につきっ切りで指導したそうです。そのかいあってか、性別も年齢もまるで異なるのに、だんだんナオキが直樹に見えてくるから不思議なんですよね」(テレビ誌ライター)

作り込まれた仮想現実の世界も美しく、視聴者からも《きれいで癒やされる》と好評だ。仮想現実でナオキが好きになるホナミを演じる井桁弘恵(27)の“コスプレ姿”にも注目が集まっているが、主演として画面中央で輝きを見せる野間口の演技、しっかり見ておきたい。

© 株式会社日刊現代