岩手県内は去年5月の新型コロナ5類移行後初となる、「花見」の季節を迎えました。宿泊施設は“サクラ目当”ての外国人観光客の獲得に力を入れています。
岩手県花巻市の花巻温泉でソメイヨシノの開花が宣言された4月11日。夕方を過ぎるとホテルには多くの観光客を乗せたバスが到着しました。
乗っていたのは台湾や香港からの観光客。いわゆる「インバウンド」です。ほとんどが4泊5日で東北の観光地を巡ります。
(台湾からの観光客)
「(何を楽しみに?)花見です。とってもきれいでした」
この時期の外国人観光客の目当ては「サクラ」。花巻温泉にとっても中華圏の旧正月に当たる春節や秋の紅葉と並ぶ書き入れ時です。
花巻温泉は新型コロナ5類移行後のインバウンドの増加を見据え、去年8月から佳松園、ホテル千秋閣、ホテル紅葉館、ホテル花巻のグループの4つの施設で大規模なリニューアルを進めていて、工事は今年12月まで続く予定です。
サクラの季節を前にすでに全体の40%にあたる190室の改装が済んでいます。
外国人観光客のため大きなスーツケースを収納できるカウンターを設けるなど、受け入れの準備は万端です。
25年余りにわたりインバウンド獲得に力を入れてきた取締役の佐藤寿美さんも、新型コロナ明けの集客に手ごたえを感じています。
(花巻温泉 佐藤寿美取締役)
「2023年度で見ますともう2019年度をちょっとオーバーしたということで、外国人全体で見ると1万人ぐらいは多くお越しいただいてますので、これからにも期待はしております」
宿泊施設の外国人の受け入れにはハード面だけでなく、ソフト面の充実も求められます。
花巻温泉に入社して8年目、台湾出身の陳美慧さんです。陽気な人柄ときめ細やかな気配り。そして何よりも行動力がインバウンドに対応する施設の力となっています。
それぞれのホテルに外国人観光客が到着する度に陳さん、走ります!
「あした何時出発?」
「あした7時45分」
添乗員と調整するのは宿泊客の出発時刻などについてです。サクラの見頃を逃さないよう配慮します。
「南のところが満開のようですから早目に出ないといけないですね」
(陳さん)
「(忙しいですね)忙しくない。普通ですね。(バスは1日に)十何本。一番多い時は20本の時もある」
同じ頃、夕食会場で行われていたのは、カニの握り寿司にカニ鍋など、カニ尽くしのバイキングプランの準備です。
台湾から訪れる観光客に人気が高く、当初の3月末までから9月末までに、期間を延長しました。
(佐藤取締役)
「京都だったり西の方は“オーバーツーリズム”ということでいろんな問題が大変だって言ってるんですが、この広い岩手はですね、まだまだ伸びしろがあるというふうに思っております」
コロナ禍の反動と円安、そしてサクラの人気を背景に順調に回復するインバウンド需要。この流れをいかに地域経済につなげるかが重要です。