【MM Another Story:レンジローバースポーツSVの「別腹」】史上最高性能をスピリッツから味わうための「特別すぎるメディアドライブ」に嫉妬してみた

2024年4月1日から発売中「MotorMagazine5月号」の第一特集「ニューSUVへの期待を確かめる」では、パート2でランドローバー レンジローバースポーツのハイパフォーマンス仕様「SV」海外試乗会の模様を紹介中です。ここでは、本編では語られなかったもうひとつの「物語」を、「MotorMagazineDigest」とは違った切り口でご紹介。二泊三日でそのブランドが追求する精神世界に浸りきるための、特別なプログラムの魅力にスポットを当ててみました。(写真:Jaguar Land Rover)

移動もステイも、ウェルビーイングに彩られた時間

「ポルトガルにようこそ!」から始まった、新型レンジローバースポーツSVの海外試乗会。首都リスボンから少し南に下ったアレンテージョ、アルガルヴェ地方を巡るスケジュールの充実ぶりを見ているだけでも、「Performance Champion」の謳い文句は伊達ではないことが理解できます。

革新的なパフォーマンスを誇りながら同時に、ラグジュアリースポーツとしてのリラックス性能、エモーショナル性能を高い次元でバランスさせている。

南ヨーロッパで開催されたドライブツアーは、オンロードあり、サーキットランあり、オフロードあり。はては5つ星ホテル宿泊&美食堪能に至るまで、すべては「SV(Special Vehicle)」の世界観を濃厚かつ深々と味わうために用意された、最高の「テストコース」・・・いや、たとえるなら「テイスティングフルコース」でしょう。

日本から選ばれしモータージャーナリストのひとりが、大谷達也氏。本誌での紹介はポルティマオ・サーキットでの全開走行が中心ですが、プログラムの概容とオフィシャル画像の数々を見ながら改めて担当が思ったのは「おんなじコースでSVを堪能してみたい!」という率直な願望でした。

旅のスタート地点となったのは、高級シューズブランドを生み出したフランス出身のファッションデザイナー、クリスチャン・ルブタンが経営するHotel Vermelho Melides(ホテル ヴェルメーリョ メリデス)です。ホテル名は、村の名前であるメリデスと、ポルトガル語の「赤」を合わせたもの。ルブタンのシグネチャーモチーフを反映しているそうです。

クリスチャン・ルブタンがこよなく愛したというメリデス村の風景。白塗りの壁や彫刻が施された木製のドアなどに、ごく自然に洗練された上質感が漂う。

ポルトガルの建築家Madalena Caiadoや、スペイン風デザインの専門家であるPatricia Medina Abascalとともに、ルブタン自身が手掛けたという設えとともに、ギリシャ出身のマルチメディアアーティストであるKonstantin Kakaniasが手ずからペイントした壁など、調度のすべてが芸術的で多彩なメッセージを発信しているようです。

建築に当たっては、かつては宿泊施設などなかった小さな村の片隅、静かな海岸沿いの環境にも配慮しています。提供される料理は、地産地消を基本としたガストロノミー(食事を通して文化との関係性、土地の社会性を考察すること)。暖房を含む空調のすべてが地熱エネルギーを使用しています。

二泊目の宿泊場所には、プライア ド カナル ネイチャーリトリートが選ばれました。7万4000ヘクタールという広大な国立公園の中に設けられた、220ヘクタールのリゾートエリアは、さまざまな形で「ウェルビーイング」へのアプローチが図られています。

プライア・ド・カナルは、華美な装飾ではなくくつろぎ感に満ちた優しい空間が魅力(の様子)。これもまたウェルビーイングのひとつの理想か。
新型レンジローバー・スポーツSVのボディ&ソウルシートには、心拍変動(HRV)に影響を与えることで精神的・生理学的ウェルビーイングを高める特別に開発された6つのウェルネスプログラムが含まれている。

環境への配慮に加え、リラックス、疲労回復、体力の向上など、トータルで心と身体のコンディションを整えてくれる取り組みは、新しいレンジローバー スポーツSVがもたらす様々な価値に、通じるものがあると言います。

レンジローバー体験の締めくくりにふさわしい穏やかな空間「Villa Boa Vista, Alentejo」。帰途に着く前に、リラックスした時間を過ごすことができるという。

旅の最終目的地は、再びメリデス至近のヴィラ。Villa Boa Vistaはメリデスの丘陵地帯を見下ろすパノラミックな景色が、部屋の中から楽しめます。田園風景と居住空間のシームレスなつながりもまた、くつろぎというラグジュアリー体験を象徴するものです。

こうしたさまざまな「カルチャー」としての側面を旅の中で実感しながら、試乗はAutódromoInternacional do Algarve(アウトドローモ・インテルナシオナル・ド・アルガルヴェ)、通称ポルティマオ・サーキットでクライマックスを迎えます。

6Dダイナミクスサスペンションの本領を試す

ポルティマオ・サーキットは、2008年に完成したばかりの新しいサーキットです。FIM(国際モーターサイクリズム連盟)とFIA(国際自動車連盟)の両方から公式戦開催のホモロゲーションを取得しました。

2020年と2021年に、F1ポルトガルGPが開催されたAutódromo Internacional do Algarve。最もパワフルで、最もダイナミックなレンジローバー・スポーツのパフォーマンスを探求するのに最適な場所として選ばれた。
ドライバーが選択可能なまったく新しいSVモードで、より集中したスポーツカーライクなドライビング体験を味わうことになった。

4.653kmのレイアウトは、14カ所のチャレンジングなコーナーと、激しい高低差があるそうです。人呼んで「ハイスピード・ローラーコースター」。、しばしばドイツのニュルブルクリンクサーキットにも例えられると言いますから、本格的な全開走行を試すにもってこいのステージと言えるでしょう。

試乗会ではとくに、サーキットスピードでなければ体感できない領域での、新型レンジローバースポーツSVのポテンシャルがチェックされています。カギを握るのは。世界で初めて採用された「6Dダイナミクスサスペンションシステム」です。

最高出力635ps、最大トルク750Nmの4.4L V8ツインターボ×MHEVエンジンは、先代レンジローバー・スポーツSVRのスーパーチャージャー付き5.0L V8エンジンよりも60ps、50Nm向上している。
世界初の6Dダイナミクスサスペンションシステムは、このクラスで最も洗練されているという。先進のシャシーおよびサスペンションシステムとシームレスに連携して作動する。

これは、油圧連動式ダンパー、高さ調整可能なエアスプリング、ピッチコントロールを組み合わせたセミアクティブシステムで、アンチロールバーを不要としているのが特徴です。

コーナリングや加速時に生じるピッチおよびロールといった挙動変化を大幅に低減させて、ボディを水平に近い理想的な姿勢に保ちます。それは軽量化に貢献するとともに、グリップの向上、快適性、洗練性に大きく寄与するといいます。

他にも、レンジローバーとして初めて採用されたカーボンセラミックブレーキ(CCB/オプション)と、専用のブレンボ製8ピストンブレーキキャリパー「OCTYMA」(フロント)、独自のクロスシェイプピストン配列など、速さに安心を裏打ちするための制動性能にも最大限のこだわりを見せています。

ミシュランのパイロットスポーツオールシーズン4タイヤを標準装備する。1.1Gを超える横加速度はスポーツカーに匹敵する数値で、先代SVRのサマータイヤ装着時と比較して、22%向上しているという。カーボンセラミックブレーキ(CCB)はバネ下重量を合計34kg削減、23インチ超軽量カーボンファイバーホイールは合計35.6kgのバネ下重量軽減に貢献している。

アクティブロッキングリアデファレンシャルや、クイックレシオのパワーステアリングになど、新型レンジローバー スポーツSVは、ドライバーが積極的にそのドライバビリティを操る醍醐味に満ち溢れています。

さらにさまざまな制御システムを「操る楽しさ」に最適化したドライビングモード「SVモード」は、サーキットでこそその本領を発揮します。車高を15mmダウンするとともに、サーキット走行に適したスタビリティコントロールプログラム「TracDSC」も作動し、ダイナミックバランスをより自由自在に楽しむことができます。

新型レンジローバー スポーツSVは、日本には75台が割り当てられ、もちろんすでに完売しています。「最も目の肥えたお客様に向けたパーソナライズされたアプローチ」という意味で、この「旅」はまさにレンジローバースポーツSVの世界観を静かに、そして誇らしげに、体現していると言えそうです。(写真:JaguarLand Rover)

ジオメトリーと整合性を見直した新しいリア・サブフレームやサスペンションリンクなど、特別に開発したシャシーコンポーネントも備えている。新しい電子制御パワーアシストステアリングラックは、これまでのRANGE ROVERファミリーのなかで最もタイトなレシオで、俊敏性とステアリングフィールを向上させている。

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