花譜の歌声合成ソフト「可不」本人が違和感を抱き発売延期に

発売延期となっている人工歌唱ソフトウェア「音楽的同位体 可不(KAFU) collaboration with Synthesizer V AI / The Right Stuff ver.」について4月12日、KAMITSUBAKI STUDIOのプロデューサー・PIEDPIPERさんが自身のXを通じて理由を明らかにした。

「可不」は、KAMITSUBAKI STUDIO所属のバーチャルシンガー・花譜さんの歌声をもとにした歌声合成ソフト。その最新版の発売延期が2023年12月下旬に発表され、今後の動向に注目が集まっていた。

PIEDPIPERさんの投稿によれば、Synthesizer V AI版の可不が歌った「フォニィ」の反響を受け、譜さんから懸念の声が上がり、発売延期の打診があったという。

KAMITSUBAKI STUDIOが展開する「音楽的同位体プロジェクト」の一環として開発が進行していた中での発売延期。そしてその理由に、ファンから心配や不安の眼差しが向けられている。

「可不」新作が発売延期にいたるまでの経緯

「可不」は、音声創作ソフトウェア・CeVIO AIをベースに制作されたソフト。

2021年7月7日に「ARTIFICIAL SINGING SYNTHESIZER KAF+YOU」として、正式販売された。

同作品発売後、花譜さんと同じくKAMITSUBAKI STUDIOに所属するシンガーの理芽さん、春猿火さん、ヰ世界情緒さん、幸祜さん4人の歌唱ソフトウェアも制作・販売されている。

その人気を受け、新たに歌声創作ソフト・Synthesizer V(※)をベースにした新作として発表されたのが、今回の「音楽的同位体 可不(KAFU) collaboration with Synthesizer V AI / The Right Stuff ver.」だ。

※Synthesizer V:Dreamtonics社が開発した歌声創作ソフト。より人間らしく歌わせられるのが特徴。

Synthesizer V版の「可不」は、2023年9月4日に先行予約が開始され、2023年冬ごろの正式販売を予告していた。

2023年12月13日には、「音楽的同位体プロジェクト」のYouTubeチャンネルにて、デモ音源として「フォニイ」のカバー動画が公開。

そのクオリティの高さに、ファンから驚きの声が上がっていたが、12月23日に公式Xを通じて発売延期が発表された。

「本人としては結果として違和感を持ってしまった」

長らく発売時期や延期の理由が明かされないままだったが、今回PIEDPIPERさんから詳細な経緯が発表された。

発表によると、リリースにあたっては、歌声の提供者である花譜さんとの合意形成が必要不可欠であり、発売決定に至るまで、本人と複数回にわたり合意形成を重ねてきたという。

加えて、花譜さん本人の意向を踏まえ、「完全に『本人そのもの』にはならないように」と開発会社とも丁寧にやり取りを重ねてきたと説明している。

しかし、Synthesizer V版「可不」で制作した「フォニイ」のデモ音源を公開した際の反響等を経て、「本人としては結果として違和感を持ってしまいました」と経緯を語った。

花譜が納得できる製品へ調整中も、発売中止の可能性にも言及

発表では、「私達としては本人が出したくないものを発売する事は出来ないので発売延期とさせて頂き、ここ数ヶ月は歌声の試行錯誤をしている状態となります」と近況を報告。

その上で、現在は、開発するDreamtonics社ならびにAHS社とともに、花譜さん含め関係者全員が納得できるプロダクトにするべく、調整作業を進めていると説明した。

PIEDPIPERさんは、「完成する製品は『The Right Stuff ver.』と呼べるものとは違うものとなるかもしれませんが、花譜が改めて承認した『可不』となる事は間違いありません」と明言。

一方で、「但し話し合いの結果としてリリースが出来ない可能性もございます」と発売中止の可能性にも触れつつ、「制作は進行中ではありますので、引き続き今後の進捗を見守っていただけたら幸いです」と呼びかけた。

過去にはCeVIO AI版「可不」も発売延期に

実は、2020年から2021年にかけて開発が進んでいたCeVIO AI版「可不」でも、SNS上でデモ音源をいくつか発表しアンケートを集めたところ、5500件近くの回答があり、賛否両論を巻き起こした経緯がある。

結果、当初予定していた2020年冬の発売が2021年へ延期されたが、発売後の展開・広がりは前述した通りだ。

今回の発売中止に関して、4月15日現在までに、花譜さん本人からのアナウンスなどは確認できない。

これまで同ソフト群は「音楽的同位体プロジェクト」として、タレントそれぞれの歌声をもとにビジュアルや衣装が制作され、公式のオリジナル楽曲を発表したほかライブにも出演している。

KAMITSUBAKI STUDIOが生み出す世界観を彩る存在として、また音楽制作ソフトとして、今後どのような方向に進むのか注目される。

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