ヒップホップの音楽が流れる中、子どもたちがステップを踏みながらグラウンドを前進する。あけとみ陸上クラブ代表の金子敏雄さん(70)は、自ら手本を示し「軸足をしっかり伸ばそう」「だんだん良くなってきた」とテンポよく声をかけた。
「陸上クラブの練習に見えないと言われることもあるが、運動能力の発達が著しい小学生時代は、いろんな運動をするほうが将来ほかの競技に進んでも役に立つ」と話す。
新潟県出身で、高校や実業団時代に長距離選手として活躍した。その後、京都市の中学校の保健体育教諭として陸上部の顧問などを長年務めた。2012年に始まった京都マラソンの立ち上げにも携わった。
同クラブは17年11月に設立。「陸上をしていた自分の子どもたちが大会に出るたび、地域を挙げて応援してくれた。その恩返しをしたかった」。
現在、約60人の子どもたちが毎週土曜に滋賀県守山市内のグラウンドで汗を流す。最大の特徴は、「走、跳、投」の基本的な運動能力を高める練習だ。ボールや縄跳び、バスケットボールなどさまざまな動きや競技を取り入れている。「昔と比べ自然の中で遊んだり、運動したりする経験が少ない子どもたちが多い。どうしたら夢中になってくれるか、夕食を食べながら練習メニューに頭を悩ませる」という。
陸上だけではない練習ながら、地域の駅伝やクロスカントリー大会で入賞する子どもも少なくない。中学生になり、ボートやテニスなどで活躍している卒業生もいるという。
一方で、自身もハードル種目でマスターズ陸上競技大会に出場して大会新記録を出すなど、生涯現役選手を目指している。「先頭にたって夢中になっている姿を見せることが大切」と考える。
これまでの取り組みなどが評価され、同クラブは先日、日本陸上競技連盟の「BEST THINK賞」を受賞した。「指導者不足が課題だが、どんな子どもたちも楽しめて、運動が好きな大人になるよう指導していきたい」。守山市水保町。