『366日』明日香が迫られた“人生を左右する大きな選択” 遥斗の妹・花音が背負う覚悟の重さ

もしも愛する人が突然、意識不明で寝たきりの状態になってしまったら? そのまま一生、目覚めない可能性があるとしたら? それでも奇跡が起こり、「おはよう」と微笑みかけてくれる日を待ち続けることはできるだろうか。

『366日』(フジテレビ系)第2話では、明日香(広瀬アリス)が人生を左右する大きな選択を迫られる。高校の同級生である遥斗(眞栄田郷敦)と再会を果たした明日香。2人は高校時代、お互いに片思いしていたが、誤解やすれ違いで思いが通じ合うことはなかった。けれど、奇跡が重なり、明日香と遥斗は12年越しに結ばれる。これから一緒に新たな未来を生きるはずだった。

しかし、遥斗は橋から落ちそうになった子どもを助けようとして転落。搬送されたのは、偶然にも明日香が働く音楽教室に娘を連れてきた友里(和久井映見)が脳神経外科医として勤務する病院だった。彼女の迅速な救命措置により遥斗は一命を取り留めるが、予断を許さない状況。一般病棟に移っても意識は戻らず、最初は気丈に振る舞っていた遥斗の両親が日を追うごとに憔悴していく姿に胸が痛む。息子が東京で大きな仕事を任され、頼もしく思っていた矢先にまさかこんなことになるなんて。その苦しみは到底計り知ることができない。

一方、明日香は「あの日、約束なんかしなければ……」と自分を責めていた。待ち合わせの時間を過ぎても遥斗が現れず、心配して送ったメッセージは未読のまま。既読になって、返事を待ち詫びていた時間さえも幸せに思える状況に、明日香は頭が追いついていけず、遥斗が目覚めてくれることをただ祈ることしかできなかった。

そんな状況でも時は絶えず、進んでいく。明日香は頻繁に病院へ通うが、仕事に加え、理学療法士の資格を取るために勉強している莉子(長濱ねる)や、社会人野球の練習で忙しい智也(坂東龍汰)はなかなか遥斗を見舞うことができない。それでも莉子は遥斗の容態を知るために花音(中田青渚)と連絡を取り合い、智也も遥斗が早く完治するように神社で祈祷してもらうなど、それぞれが今できることを精一杯やっている。誰一人として遥人のことを諦めてなどいない。

それは明日香も同じだ。音楽教室でクラリネット講師の空きが出て、上司から推薦を受ける明日香。一度は諦めたものの、音楽講師になるのは明日香の長年の夢だった。だけど、講師になるには仕事が終わってから研修を受ける必要があり、そうなると遥斗を見舞うことができなくなる。自分に今できるのは、遥斗の家族を支えることだけ。そう思った明日香は講師の話を断ってしまう。「また、機会があれば」と何気なく明日香が発した言葉に、遥斗がいつか目覚めるという無意識の確信があるように思えた。

だが、その矢先、明日香は遥斗の意識が一生戻らない可能性があることを告げられる。さらに花音から「よその人に中途半端に関わってほしくない」と見舞いを拒絶され、ショックを受ける明日香。それは花音なりの優しさだった。花音は高校時代から遥斗と明日香が両思いなのも気づいていたし、莉子から2人が付き合い出したことも聞いている。本当だったら、妹として祝福したかっただろう。だけど、このままだったら明日香を一生目覚めることがないかもしれない遥斗のもとに縛り付けておくことになる。明日香を解放するために敢えてキツイ言い方をした花音。遥斗の家族として全てを背負う覚悟の重さに胸を打たれた。

かたや、明日香は「この状況を遥斗の彼女として背負っていく覚悟ある?」という莉子の問いかけにすぐ答えることができなかった。長年付き合っているならまだしも、まだ思いを伝え合っただけなのだから、無理もない。今ならまだ引き返せる。期待して傷つくくらいなら、期待しない方がいい。明日香だってそう思って生きてきたのだから。だけど、期待してみた先に幸せが待っていることもあると教えてくれたのは遥斗だった。期待を込めて送ったメッセージや伝えた言葉が遥斗に届き、12年越しに恋が実った。友里に言われた通り、明日香は今一度自分に問う。“どうするべきか”よりも、“どうしたいか”を。諦めたくないと、明日香の心は答えていた。

「話せなくても笑えなくても遥斗は遥斗だから。諦めたくないんです。何もできないし、自分勝手だってわかってるけど、そばにいたいんです」

遥斗の家族に自分なりの覚悟を伝えた明日香。その帰り際、花音から明日香に遥斗が搬送された時に持っていたプレゼントが渡される。開けてみると、そこには遥斗がオススメと言っていた桜のハチミツが入っていた。ハチミツを食べた瞬間、遥斗が意識を失ってからずっと曇っていた明日香の表情に笑顔が戻る。第2話の冒頭、「君が笑ってくれるなら、なんだってする」という遥斗のモノローグとともに描かれた二人の高校時代。遥斗は眠ったままだけど、明日香を笑顔にする力がある。というより、明日香を笑顔にできるのは遥斗だけなのだ。二人が一緒に笑い合える未来が再び訪れることを願わざるを得ない。

(文=苫とり子)

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