男子サッカー、アジア最終予選きょう初陣の中国戦! 8大会連続のオリンピック出場なるか? “死の組”突破のキーマンは――

8大会連続の五輪出場を果たせるのか――。大岩剛監督が率いるU-23日本代表がパリ五輪のアジア最終予選を兼ねたU 23アジアカップに臨む。

今大会は1月にA代表のアジアカップが開催された影響で、当初の1月ではなく4月半ばの開催となった。そもそもインターナショナルマッチウィーク外の開催であり、海外組の招集が思うようにいかないことが想定されるなかで、ヨーロッパのシーズン終盤の時期と重なれば、なおさら事は簡単に進まない。交渉は難航し、今大会のメンバーには、これまでチームの主力を担ってきたMF鈴木唯人(ブレンビー)、MF斉藤光毅、MF三戸舜介(ともにスパルタ)、MF小田裕太郎(ハーツ)の招集は叶わなかった。

海外組が増えたからこその悩みであるとはいえ、五輪を目指す上では大きな問題だ。しかし、下を向いている暇はない。グループステージの初陣は4月16日の中国戦。8日から開催国カタールでトレーニングをスタートさせたチームは、30度を超える気候に適応しつつ、大会に向けて順調に調整を行なっている。
11日にはイラクとの親善試合を実施し、1−0で勝利。翌日はオフとし、13日から再びトレーニングを再開させた。13日の練習ではDF半田陸(G大阪)が最初から別メニューとなり、MF荒木遼太郎(FC東京)とMF田中聡(湘南)は途中からジョギングやストレッチなどで調整したが、荒木と田中は14日に復帰。半田も徐々に状態を上げており、離脱するようなアクシデントではなさそうだ。

アジアに与えられた出場枠は3.5。準々決勝を突破して、3位以上に入ればストレートインできるが、4位になった場合はアフリカ4位のギニアと5月9日にプレーオフを戦う。グループステージは16日に中国(日本時間22時)、19日にUAE(日本時間24時30分)と対戦。そして、最終節の22日は最大のライバル・韓国(日本時間22時)と顔を合わせる。グループステージは全て中2日のタイトな日程で、ターンオーバーも含めて23人全員の力が必要になるのは明白だ。

そうした状況下で、日本はどのように戦うのか。まず、中国との初戦は是が非でも勝点3が欲しい。とはいえ、オープニングマッチ特有の緊張感、中国の高さや堅守速攻のスタイルに手を焼く可能性がある。ボランチのムテリップ・イミンカリなど、中盤には大柄でテクニカルな選手が揃う相手に対し、日本は慌てずにボールを支配できれば展開は楽になる。守りを固めてくる可能性があるなかで、焦れずにパスを繋ぐ。そして攻撃のスイッチが入ったタイミングで、一気に攻撃のスピードを上げる。そうした戦い方で早い時間帯に先制点を奪いたい。キーマンはボランチのMF藤田譲瑠チマ(シント=トロイデン)。アンカーのポジションでボール回しの起点になるだけではなく、守備でもカウンター封じを担う。攻守のリンクマンとして欠かせないタレントであり、チームのリーダーとして寄せられる期待は絶大だ。 2戦目のUAEは1月のアジアカップに出場した選手が数名おり、タレント力は侮れない。特に両SBはA代表歴を持っており、テクニカルなスタイルを嗜好しながらスピードで勝負できる選手をサイドに揃えている。

ボールを動かすという点では日本と類似しており、戦いにくい相手ではない。冷静にパスを繋ぎ、相手がボールを持つ時間になれば前線からのハイプレスで相手の自由を奪いたい。キーマンとして挙げたいのはMF平河悠(町田)。左サイドを主戦場とし、右サイドでも機能するドリブラーは切り込み隊長として日本に必要不可欠だ。相手のSBに高い位置を取らせないためにも平河の働きはポイントになる。また、最前線からプレスをかけ続けられる体力を持ち合わせており、守備でもファーストDFとしてチームに欠かせない。攻守両面で平河のパフォーマンスに注目だ。

3戦目の韓国は言うまでもなく、グループステージ最大のライバルとなる。五輪でメダルを獲得すれば兵役免除になるため、死に物狂いで戦ってくるのは想像に容易い。仮に両チームが突破を決めていたとしても、勝敗が順位決定に大きく関わる。A組の1位は開催国のカタールが濃厚で、地力もある上にホームのアドバンテージも受けられるのは厄介だ。カタールを避ける思いがあっても不思議ではなく、単なる消化試合にはならない可能性が高い。
その中で韓国のアンダーカテゴリーはフィジカルを生かしたサッカーではなく、後ろから丁寧にボールを繋ぐスタイルで戦うことも最近では珍しくない。ただ、そうした相手に対して、日本が滅法強いのは好材料。欧州の強豪国のように戦術が整理されているチームに相性が良く、ハイプレスとショートカウンターで相手を凌駕している。22年6月のU23アジアカップ準々決勝で対戦した際は、ボールポゼッションを高めてきた韓国を圧倒。2歳上のチームで臨んできた相手を3−0で下したのは記憶に新しい。

そんな韓国戦で鍵を握る選手は、内野航太郎だろう。昨年10月のアジア競技大会では決勝で先制点を挙げ、今年3月下旬の第23回大学日韓(韓日)定期戦でも2ゴールを挙げるなど、韓国に対して相性が良い。「アジア勢に対する自信はあんまり気にしていなかったけど、振り返ってみると、アジア勢から結構点が取れている。その自覚もあるし、良さも出せていると思う」と内野自身も手応えを口にしており、崩した後の仕上げ役として期待したいところだ。

日本はU23アジアカップを勝ち抜き、8大会連続の五輪出場を果たせるか。GSを突破しても、準々決勝ではカタールかオーストラリア、準決勝では世代最強と称されるサウジアラビアや進境著しいウズベキスタンと対戦する可能性がある。立ちはだかる壁は高く、簡単に勝たせてくれるチームはひとつもないが、日本の未来を切り開くべく大岩ジャパンが最終関門突破を目指す。

文●松尾祐希

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