「賞賛し、尊敬に値する」米記者も涙を浮かべたブル中野のWWE殿堂入り式典の“英語スピーチ”が反響止まず!「満足に話せないはずなのに…」

伝説の日本人女子プロレスラーが披露した、珠玉の英語スピーチが大きな感動を呼んでいる。

全世界165か国で放映され、10億人以上が熱狂するスポーツエンターテインメント団体「WWE」のホール・オブ・フェーム(殿堂入り)が現地4月5日に行なわれ、かつて全日本女子プロレスやWWF(現WWE)、WCWなど日米マットで一世を風靡したブル中野が同授賞式に出席。日本人女性として史上初となるWWE殿堂入りの喜びを語った。

全日本時代から交流のある“メドゥーサ”ことアランドラ・ブレイズの紹介で登場したブル中野は、現役時代を彷彿とさせる青いフェイスペイントで入場。「世界の女帝」として、米マットでも恐れられたレジェンドの威風堂々とした姿に会場は大興奮。観衆から割れんばかりの歓声が送られた。
56歳になった彼女は「お久しぶりです。この賞を受け取れることを本当に嬉しく思います。ずっとずっと待っていました」と、なんとすべて英語で話し始めた。

「WWEで1994年、最高の経験をしました。30年前です。私は26歳でした。WWEでの生活は本当に大変で、プロレス以外何も知らなかった私は辛い経験をしました。1か月で28試合、本当にタフな期間を過ごしました」

米国に来た当時は英語がまったく喋れず、携帯電話もないため会場への移動やホテルの手配に苦労したエピソードを明かすと、「とてもとても大変な日々でしたが、たくさんの友人に助けられました。みなさんの手助けもあり、遠征を続けることができました」とファンに向けて謝意を示した。

続けて、「プロレスは世界共通」と表現すると、「英語が喋れなくとも、同じ空間で試合をしてリングに入って過ごす。そこで私は生きていると感じました」と話し、ライバルのメドゥーサはもちろん、米国時代にサポートしてくれた故ルナ・バションに感謝の意を述べた。

スピーチの途中にはWWEユニバースからも声援が飛び、イヨ・スカイやASUKA、カイリ・セインら同団体で活躍中の日本人女子スーパースターたちもリングサイドで拍手を送る。「WWEユニバースの皆さんありがとう。ブル中野を受け入れてくれて、私の心を貫きました。私たちは永遠にプロレスを通してつながっています。もし、何か生まれ変わるようなことがあれば、またブル中野として生まれ変わりたいです。そして、WWEのリングに戻ってきます。皆さんとまた、お目にかかれるのを楽しみにしています。この賞は私の宝物です」と挨拶を締めくくると、会場は温かい拍手に包まれた。 カンペも用意せず、すべて英語で披露したスピーチに現地メディアは注目。心の込もった内容に称賛が寄せられている。

元WWE会長兼CEOのステファニー・マクマホンやASUKA、AEWに移籍したばかりのオカダ・カズチカなど日本人レスラーにも精通しているWWE名物記者のシャロン・リー氏は「ブル中野のWWEホール・オブ・フェームのスピーチは、とても感動的だった。私は間違いなく目に涙を浮かべていた」と振り返り、目頭を熱くするほどその内容は忘れられないと説いた。

他にも、米プロレス情報を日夜発信している専門サイト『Wrestlinginc』は記事の冒頭で、ブル中野を「Japanese wrestling legend(日本のプロレス界のレジェンド)」と評して殿堂入りを伝えると、「中野が1994年にWWEにやって来たとき、女子王座を巡ってメドゥーサと何度も争った。青いフェイスペイントと奇抜なヘアスタイルで活躍し、『中野は鋼鉄でできている』とメドゥーサは語っている」とユニークに紹介。「今日のプロレス界に、彼女は大きな影響を与えている」とも言及している。
別の専門サイト『PW Chronicle』は「ついにブル中野が、文字通り花を咲かせた。英語も満足に話せないはずなのに、あそこまで完璧に英語でスピーチをした彼女を賞賛し、尊敬に値する」と感服を寄せながら、「この瞬間、彼女は本当に殿堂入りにふさわしい」と最大級の賛辞を綴った。

日本人ではアントニオ猪木、藤波辰爾、グレート・ムタ。レガシー部門での力道山、新間寿に続き史上6人目での受賞となったブル中野。世界で活躍する日本人女子プロレスラーの先駆者として彼女が収めた功績は、米マットで高く評価されている。

構成●THE DIGEST編集部

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