巨額借金を抱える水原一平容疑者がなぜ保釈金380万円を用意できたのか。実際は特別な制度適用で“支払いゼロ円”の衝撃

現地4月12日、ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平の元通訳で、その前日に連邦検察から銀行詐欺罪で訴追されていた水原一平容疑者が裁判所に出廷した。黒いスーツに白いシャツ姿で出頭するとすぐさま身柄を押さえられ、手と足を拘束されたという。今回の法廷で罪状認否は行なわれず、次回5月9日に実施される予定だ。

保釈金は2万5000ドル(約380万円)と報じられ、いくつかの保釈条件が提示された。パスポート返納、今後いかなる賭博も行なわない制約、ギャンブル依存症の更生プログラムへの参加義務に加えて、許可なくカリフォルニア州の特定地区から外に出ることと、大谷との接触禁止も言い渡されている。

保釈決定後、水原容疑者自身が報道陣の前でコメントする予定だったが、それは見送られ、代わって代理人のマイケル・フリードマン氏が声明を発表した。「ミズハラ氏は今後も法的な手続きへの協力を惜しまず、一日も早く本件が解決することを望んでいる」とし、「彼はオオタニ氏、ドジャース、メジャーリーグ、そして彼の家族に謝罪したいと望んでおり、法廷で話したように、ギャンブル依存の治療を受けることも決めた。現時点ではこれ以上のコメントは控えたい。さらに法的な手続きが進めば、あらためて声明を発表する予定だ」という内容だ。

大谷の口座から1600万ドル(約24億4000万円)以上を搾取したとされるだけに、保釈金が低額すぎないかとの指摘もあったが、現在の水原容疑者にとっては2万5000ドルでも工面するのが大変なはず。では、いかにして彼は保釈金を用意できたのか。実は現時点で、1ドルも払っていない事実が明らかとなった。

米ネットワーク『ESPN』によると、今回の水原容疑者に関しては「署名保釈金制度」が適用されたという。同局は「この制度であれば、ミズハラは保釈されるために現金の支払いや担保を用意する必要がない。裁判所から提示された保釈の条件に違反した場合にのみ、2万5000ドルの支払い義務が生じる」と説明。裏を返せば、多岐に渡る条件がひとつでも満たされなければ即刻保釈が撤回され、支払いを命じられるということだ。
連邦検察が公開した訴状では、違法賭博による水原容疑者の純損失額は4068万ドル(約62億円)に達しており、ブックメーカーへの借金支払いだけでなく、価値の高い野球のトレーディングカードを総額32万5000ドル(約4950万円)で約1000枚も購入していた新事実も発覚。その資金も大谷の口座からオンライン送金されていた。

水原容疑者は違法賭博の胴元に送金した当該口座に関して、大谷の代理人や財務担当者らに「この口座に大谷は関与してほしくないと言っている」と嘘の情報を伝えて信じ込ませ、銀行口座にひもづく携帯電話番号とメールアドレスも自身がアクセスできるものへと変更していたとされる。

今回のような巨額被害をもたらした銀行詐欺罪の場合、水原氏には最大で禁固30年の実刑が言い渡され、同時に罰金100万ドル(約1億5200万円)も科される可能性がある。司法取引によってはかなり減刑されるケースもあるようだが、もはや実刑の厳罰は避けられない情勢だ。

構成●THE DIGEST編集部

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