【社説】政治資金の改革 自民は手ぶらで臨むのか

自民党派閥の裏金事件を受け、衆参両院に政治改革特別委員会が設置された。6月の国会会期末までに政治資金規正法の改正を目指す。

焦点は罰則の強化と政治資金の透明化である。

野党はそれぞれ改正案をまとめた。議員本人に会計責任者と同じ責任を負わせる「連座制」、政治資金パーティーの見直しを盛り込む。

与党の公明党も連座制を導入し、政治資金パーティー券の購入者の公開基準を拡大する方針だ。

肝心の自民党は改正案を提起していない。事件を起こした当事者こそ、進んで再発防止策を示すのが筋だろう。特別委員会に手ぶらで臨む姿勢は理解できない。

公明党との協議で一致点を探り、与党案の形にするという。政治資金改革への主体性も、政治不信を招いた反省も疑わざるを得ない。できるだけ小幅な改正にとどめたい思惑が見え隠れする。

党総裁の岸田文雄首相は、規正法改正のポイントとして(1)議員本人も含めた厳罰化(2)政治資金に対する第三者の監査徹底(3)デジタル化による政治資金の透明性向上-の3点を挙げた。

これでは踏み込み不足だ。厳罰化が具体的でなく、政治資金の透明性はデジタル化だけでは高まらない。

政治資金の膨張を抑える規制の是非も、特別委員会の論点となる。野党は企業・団体献金の禁止、使途の公開義務がない政策活動費の廃止などを主張するが、自民党は手を付けたくない様子だ。

今回の事件は、派閥の政治資金パーティーの還流資金を多数の議員が政治資金収支報告書に記載せず、裏金化していたものだ。法律を作る国会議員に規範意識が欠けていることを露呈した。

現行の規正法は「ザル法」と呼ばれる。裏金を許した法の不備をなくし、罰則を強化することは論をまたない。

自民党には改正案の速やかな公表を求める。厳しい法律にすることに後ろ向きでは、国民の信頼は取り戻せないと自覚すべきだ。

規正法の改正論議と並行して、裏金の実態解明も進めなくてはならない。裏金づくりのいきさつや使途は依然として分かっていない。

安倍派の元会長で、一連の事情を知るとされる森喜朗元首相を国会で聴取すべきだ。

自民党内の処分も決着したとは言えない。現職議員が逮捕、起訴され、処分対象が39人に及んだ不祥事に対し、岸田首相の政治責任を問う声はやまない。何らかのけじめをつける必要があろう。

衆院東京15区、島根1区、長崎3区の補欠選挙がきょう告示される。

政治資金改革に対し、各党がどのように取り組むのか。3選挙区だけでなく、全国の有権者が注視している。絶えることのない「政治とカネ」の問題への姿勢を見極める好機である。

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