地域発/吉川工業(北九州市八幡東区)、安全帯フック確認システムの新機種開発

吉川工業(北九州市八幡東区、吉川和良社長)は、建設現場で高所作業を行う作業員が安全帯フックをかけ忘れていた際に警報音などで知らせる安全帯フック着脱確認システム「ハーネスアラート」の新機種を開発した。現場の出入り口に機器を設置し検知エリアを設定する「ワイド」、電線を張って検知エリアを設定する「ロープ」の2タイプ。従来機に比べ、より自由で広範囲に検知エリアを設定でき、安全性の向上につながる。従来機も含め5月に国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)に登録申請する予定だ。
ハーネスアラートは電波を用いて複数のICタグの情報を非接触かつ一括で識別する自動認識技術「RFID」を応用した。市販の安全帯に取り付けられるICタグ付きフックホルダーでフックに取り付けたマグネットを検知。検知エリア内でフックホルダーからフックを外していなければフックが未使用と判定し、警報音や回転灯で警告する。
2022年3月販売開始の従来機「スポット」はボックス型のエリア設定機で半径2~7メートルの磁界エリアを形成し、この範囲内で検知する。約30セットの納入実績があり、使用した顧客の声を反映して新たに2タイプの機種を開発した。
「ワイド」は現場の出入り口にONエリア設定機とOFFエリア設定機を設置して検知する。ONエリア設定機の先が検知エリアとなり、作業を終えOFFエリア設定機の横を通過すれば検知対象から解除する。検知エリアはスポットの4倍まで広範囲に設定できるようになった。住宅工事や橋梁工事の足場での作業に適しているという。
「ロープ」はエリア設定機から伸ばした微弱な電流を通す細長い電線を張って、最大40メートルの横長な範囲に磁界をつくり検知する。23年夏ごろからこれまでに5セットを販売したが、電線を覆う被覆材の劣化が課題だったため、これを耐候性に優れた素材に変更した。曲げて使えるため現場の形状に合わせて検知エリアを設定でき、張り出し部や開口部での使用を想定する。
2機種とも11日に販売開始し、作業員5人分を対象とした1セットの希望販売価格はワイドが72万円、ロープが80万円(いずれも税抜き)。24年度は100セット、26年度には500セットの販売が目標だ。
同社は鉄鋼を中心にエンジニアリングやエレクトロニクス、ICTと幅広い分野で事業を展開する。RFIDの技術開発では初弾として重機への接近を警告するシステムでNETISに登録されている。
労働災害の最多要因である墜落・転落を防止する機器のマーケットはかなり小さく、同社では「蓄積したノウハウを生かしマーケットを作っていきたい」(広報グループ)考え。ハーネスアラートに関しては、パソコン上でリアルタイムに作業員の位置を確認できる管理者向けシステムの開発も進めている。建設現場のICT化、DXを通じ「安全の吉川」のブランドイメージの確立を目指す。

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