あなたはPTAに入りますか? 「勝手に入会」「強制的」の苦情で状況に変化、広がる意思確認 広島市

文具などを安価で提供する中学校の売店。PTA加入率が大幅に下がると、運営が難しくなるという(広島市西区)文具などを安価で提供する中学校の売店。PTA加入率が大幅に下がると、運営が難しくなるという(広島市西区)

 子どもが学校に通うようになると、いつの間にか加入しているPTA。広島市内の小中学校で最近、加入の意思を保護者に確かめる動きが広がっている。「勝手に入会させられた」などの苦情が目立つようになったためだ。PTA側は「加入者が減って活動が困難にならないか」と悩み、保護者側は「加入しないと子どもに不利益が出ないか」と心配する。意思確認の広まりで見えてきた変化を探った。

 西区のある中学校のPTAは今月、初めて保護者に入会の意思を確認する。会長の男性(50)は「加入率は今ほぼ100%。これが半分になったら…」と気をもむ。これまで年約3千円の会費を各家庭から集めてきた。加入率が大幅に下がれば、活動費がぐんと減る。

 最も心配するのは校内で文具などを安価に売る売店の維持だ。もし資金が不足すれば、店員の雇用も含めて運営が行き詰まるかもしれない。

 西区の庚午小PTAも今月に初めて意思確認をする。これまでベルマークを集め、学校が黒板消しクリーナーや大縄、ドッジボールをそろえるのを支えてきた。野村陽一会長(41)は「現場は予算が圧倒的に足りない。ベルマーク集めができなくなると、十分な備品が賄えなくなる」と懸念する。

 既に意思確認を済ませた学校もある。安芸区のみどり坂小PTAは1月末に手続きを終え、少数の非加入者が出た。これまでPTAが児童の集団登校の班を編成し、旗を持って沿道に立つ保護者の当番表も作ってきた。福田忠且校長は「非加入者が増えたら、登校時の組織的な安全確認はできなくなるかも」と戸惑う。

 PTAは本来、任意加入の団体だ。市教委育成課には2023年度、「強制的に入らされている」「会費が自動引き落とし」などの苦情が延べ約30件寄せられた。同課は苦情について昨年11月の小学校校長会で報告。校長の間で意思確認への機運が高まった。市PTA協議会も今年1月、意思確認を「これからすべき作業」と明記した文書を各校PTAに示した。

 市内の小中30校に確認すると、21校がこの1年以内に「初めて意思確認をする」と答えた。残る9校は「これまでも確認していた」(3校)「来年度に向け準備中」(2校)「検討中」(4校)だった。

 意思確認すると、加入率は下がるのだろうか。さいたま市教委は18年に各小中に通知を出し、多くの学校で確認をするようになった。23年度の加入率は97・6%で、高水準を維持する。同市教委の担当者は「改革を進めて保護者に負担の少ない活動をするPTAもあり、賛同を集めているからでは」と説明する。

 広島市PTA協の常任理事でもある庚午小PTAの野村会長は、本来の組織の役割は児童の教育環境を守ることだと受け止める。具体的には「閉鎖的になりがちな学校に保護者の目を入れる」「図書の整理といった、忙しい教諭にできないことを手伝う」などだ。

 ただ、保護者間の不公平感をなくすため役を増やして負担をお願いしてきた面もあったとする。「本来の役割に集中し、多忙な保護者も参加しやすくしなければ」と思いを込める。

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