「有名企業で部長をしてきた」と得意げに答える人もボロを出す…入社後に落胆させられないために、採用面談で“本当に優秀な人”を見極められる〈意外な質問〉

(※写真はイメージです/PIXTA)

採用面談のときには優秀だと思っていたのに、入社後に期待していた感じと違う……こんな落胆を防ぐためには、どうすればよいのでしょうか? 本記事では株式会社Piece to Peace代表取締役CEOの大澤亮氏が、プロ人材(業務委託で働く優秀な人材)で企業課題を解決するサービスを運営するなかで毎日人材と折衝し、どんな人材が活躍できるのかを考察してきた経験から、本当に優秀な人を見極めるポイントを詳しく解説します。

採用面談の大前提

採用面談の重要性はいうまでもないでしょう。

見極めを失敗し、誤った人を採用してしまえば、組織が混乱するだけでありません。日本の雇用制度では法人は原則としては解雇できず、最悪の場合、「採用すべきでなかった人が居座り続けてしまい、さらに、その雇用について半永久的に給与を支払い続けなければならない」ことになってしまいます。

では採用面談の際、単純に立て続けて厳しい質問をすればいいかというと、もちろんそんなことはありません。売り手市場の現在、働く側も働く会社を選ぶ立場にあるので、やみくもに厳しい質問をするような会社には魅力を感じず、面談の途中で辞退されてしまいます。せっかく優秀な候補者が現れたのに、見極めるための面談で辞退されてしまっては、本末転倒です。

採用面談は「双方で」見極めるためのもの、ということは意識したほうがよいでしょう。

採用面談で見る2つのポイント

さて、本題に入ります。正社員採用の面談で必ず見るポイントは、大きくわけて2つあります。

1つ目が、中途採用で、かつ、スキル面(いわゆるハードスキル)が重要であるケース。2つ目が、新卒でも中途でも、その人の性格や潜在的な資質含め「自社に合うかどうか」が重要なケース(こちらは必ず確認します)。

前者のハードスキルを候補者が保有していることが重要である場合とは、たとえば、デジタルマーケティングにおいてのB to Bマーケティングの各種ツール(マーケティングオートメーション、以下MA 等)の活用ができる、などピンポイントで一定レベルのスキルが求められる場合です。

具体的にあげると、「MAツールの活用はできますか?」「何年くらいの経験ですか?」といった質問では、候補者は内定を貰うための回答かつありきたりの回答となってしまいます。

筆者が候補者にスキルを確認する際には、「どのような企業の、どのような課題を、どのようなスキル・経験で解決できますか? 得意な順番に3つ挙げてください」という問いを投げかけています。

「どのような企業の、どのような課題を、どのようなスキル・経験で解決できますか?得意な順番に3つ挙げてください」の問いでチェックすべきところ

ここでチェックすべきは3点です。

1点目は、スキルだけを確認するのではなく、「どんな企業の」「どんな課題を」という、より具体的な状況もあわせて確認することです。個人からより具体的な回答が引き出せることとなりますし、その状況と自社の状況が合致しているかどうかも判断しやすくなります。

2点目は、個人の反応です。最近、転職活動において「市場価値」という言葉がよく見受けられます。その影響か、自分の会社やポジション「株式会社〇〇商事で、部長をしてきた」といった経歴を自慢げに語る方もいますが、ポジションそのものに意味はありません。そうした方は、前述の問いをいきなり突きつけられると、回答に時間がかかったりします。

また「実績」を強調する方も多く、耳を傾けるべき事柄ではありますが、再現性があるかどうかは別の話です。再現性があるスキルかどうかを把握するためには、本人が「自分はなにができるので、どういった会社に対して、どう貢献できるか」という点を具体的、抽象的、両方で言語化ができているかどうかが重要です。

3点目は、「最も得意なスキル」のあとに続く2つのスキルについてです。実は1つのスキルが得意でかつ自社の状況と合致していたからといって、その個人が貢献できるとも限りません。そのスキルの「周辺のスキル」が重要になってくることがよくあるので、そこをどの程度理解しているか、周辺部分までできるかの確認をします。

MAツールの活用であれば、どのMAかという論点もありますが、より重要なことは、

・そもそもなぜMAを導入すべきなのか?

・どういう状態のときに、どういうMAを導入すべきなのか?

・マーケティング戦略のなかのMAの位置づけはどうあるべきか?

などの上流の概念やスキルが必要となってくることが多くあります。

そのため、表面的な1つ目の回答だけでなく、2つ目、3つ目でこうした関連のスキルがその候補者からの回答で引き出せるか、どこまで理解できているか、どこまでできるかを把握することが重要なポイントとなります。

こうした問いは、転職経験者でもこれまでの面談では聞かれたことのなかったものかもしれません。ドキッとする方もいると思いますが、こうした問いを機に、自分のスキルを確認する方も多いでしょう。

その人の性格や潜在的な資質が、自社に合うかどうかが重要なケース

さて、冒頭に記載した2つ目のポイントである「新卒でも中途でも、その人の性格や潜在的な資質含め、自社に合うかどうかが重要なケース」について。実は、正社員採用においては、筆者はこちらをより重視しています。

理由は、

1.ハードスキルだけであれば弊社でいうプロ人材や外注で代替できること

2.ハードスキルは個人の資質さえあれば未経験でも習得できること

3.資質や性格は、ハードスキルと比較して組織に与える影響が大きいこと

の3つです。採用関連の書籍には、「結局は、自分が一緒に働きたいと思える人を選ぶべき」との記載も見受けられますが、ともすると「直観」であり「主観」ベースでの判断となってしまいます。

では、なにを確認すべきでしょうか? 筆者は「事実ベースでの行動」と、「幼少から少年期にかけての性格やキャラクター」を確認します。

「事実ベースでの行動を確認する」というのは、「あなたは〇〇についてどう思いますか?」だと、いくらでも答えを準備できてしまうので、事実ベースの行動を掘り下げていき、その人のそれまでの価値観を把握するように努めています。

例として、筆者の経営する会社に入社を希望する人との面談を挙げます。

弊社のヴィジョンにもバリューにも表現されているものとして「挑戦」があります。この挑戦という言葉は、どの言葉でもそうですが、人によって解釈が異なります。

そのため、候補者にとっての挑戦を聞くのです。それも、「どのような挑戦をしてきたか」という前向きな質問だけでなく、「挑戦できなかったことはなにか」も質問します。

前者であれば、たとえば、どんな目標に対して、どのくらいの努力(質と量)をしてきたか、結果どうだったか、その結果に対してどのような解釈をして、次にどのような行動をとったのか。その一連の行動を経て、次に起こした挑戦はどんなことか……などがわかります。

後者であれば、挑戦できなかった事実にも目を向けることによって、よりその人の本質的な価値観を見出すことができるのです。

事実ベースでは候補者も具体的な話ができるので、その「行動」という事実から価値観を推測できますし、その価値観を面談中に確認することもあります。また、自社が考える「挑戦」と個人が考える挑戦の目線、ニュアンスのすり合わせができます。

高い目標を掲げて挑戦する企業に対して、個人がたとえ「挑戦することが大切です」ということをその個人の価値観として重要なモットーとしていても、その個人のいう挑戦があまりに視座の低いものだったりすると、それは採用してもお互い不幸になるだけでしょう。

「幼少期から少年期にかけての性格やキャラ」を確認するワケ

もう1つの確認事項、「幼少期から少年期にかけての性格やキャラ」を確認する意図は、幼少期からのその個人の性格やキャラクターは、割とその後もベースは変わらない傾向が強いためです。

さらに、こうした質問は候補者としても事実で伝えやすいものです。事実ベースでは具体的な話ができるため、面談をする側としても価値観を推測しやすいというメリットがあります。

幼少期や少年期に、ガキ大将タイプだったのか、ついていくタイプだったのか、ガキ大将にアドバイス(入れ知恵?)をして巻き込んでいくタイプだったのか、周囲とどんな関わり方をしていたのか、先生とのかかわり方はどうだったのか……こうしたことを確認しましょう。

たとえば、ガキ大将タイプだったのであれば、その後、組織のなかでもリーダーシップをとって巻き込んでいくことが得意であることは多いと考えられます。どのタイプが良い、悪い、ではなくそうした候補者のタイプを想像して、いまの組織にあてはめてみて、フィットするかどうかをイメージすることは意外に重要です。

繰り返しになりますが、採用面談は法人が見極めるためだけの面談ではなく、候補者から見極められる機会でもあります。

上述のような少し変わった質問や、なるほどと候補者から思ってもらえる質問、面談でも勉強になったと思ってもらえる質問をすることで、企業側も見極めしやすくなると同時に、候補者にも好印象を残したり、より一緒に働きたい、と思ってもらえたりします。

大澤 亮

株式会社Piece to Peace

代表取締役CEO

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