【中日】中田翔「田中将大さんは僕に本気の真っすぐを投げてくれないんです」

田中(左)と中田は何度も名勝負を繰り広げた

【赤ペン! 赤坂英一】中日が8年ぶりに単独首位に立った9日のことだ。4番でチームの全3打点を叩き出した中田翔内野手が、こうこぼしていた。

「まだ10試合か? 30試合ぐらいやってるような感じやな。キツいよ。最後の最後まで気の抜けない展開が多いんでね。毎日体の状態をチェックしながらやっていけたらいいかな、と思います」

かつては無類のパワーとタフネスぶりを誇った中田も34歳。腰と右太もも裏には積年の古傷もある。立浪監督は1週間に1日程度の休養を与えながら起用する方針だ。そんな指揮官の気遣いを感じてか、中田は言っている。

「今はチーム自体、いい雰囲気の中でやれてる。一試合一試合、集中して、競った試合を一つでも多く積み重ねていきたい」

そう言う中田のセリフを聞いて、ふと楽天・田中将大投手の顔が浮かんだ。35歳の田中は昨年10月に右ヒジをクリーニング手術。今季は戦列を離れ、ファームでも登板せず、リハビリに専念している。

わずか1歳年上ながら、田中は中田にとって一番初めにプロのすごさと格の違いを教えられた投手である。田中がヤンキースに移籍する前の2012年ごろ、中田は悔しそうにこんな話をしていた。

「田中さんは僕に、本気の真っすぐを投げてくれないんです。稲葉さん(現日本ハム二軍監督)の攻め方と比べたら分かる。稲葉さんには真っすぐとスプリットで勝負してるのに、僕にはツーシームやスライダーばっかり。本気で投げる必要はないと思われてるんですよ」

このコメントを田中にぶつけると、笑いながらこう答えたものである。
「中田は分かりやすいんですよ。真っすぐなら打つ自信があるもんだから、いつも打席でそれが顔に出る。口を開けて真っすぐを待っているところへ、わざわざ真っすぐを投げてやるプロの投手はいませんって」

前回楽天時代(07~13年)に田中は、中田を54打数10安打、打率1割8分5厘、本塁打はわずか1本と抑え込んだ。中田は「どんなに好調でも、田中さんと対戦すると好調さが全部吹っ飛ぶんや」と嘆いている。

しかし、田中が楽天に復帰し、初登板初先発となった21年4月17日の日本ハム戦に中田は初回の第1打席で左中間へ本塁打を叩き込んだ。打ったのは154キロの真っすぐ。それでも中田は「やっぱり田中さんには威圧感を感じました」と敬意を払っていた。

そんな平成の名勝負の一つだった“中田VSマー君”、再び見られる日は来るだろうか。

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