防災リュックにロングスカート? 「お洒落してどうすんの」と思ったら…避難所での意外な使い道

来る大地震に向けどんな備えをすればいいのか(写真はイメージ)【写真:写真AC】

今年に入ってから震度5弱を超える地震は21回発生

今年1月の能登半島地震以降、各地で地震が頻発している。気象庁によると、今年に入ってから震度5弱を超える地震は石川・能登地方を中心に21回発生。先月15日には福島県沖、21日には茨城県南部、今月2日には岩手県沿岸北部、8日には宮崎・大隅半島東方沖をそれぞれ震源とする最大震度5弱の地震が発生している。今月3日には台湾東部を震源とするマグニチュード7.2の大地震も発生。近い将来の発生が予測される南海トラフ地震も踏まえ、どんな備えをしておけばいいのか。SNS上で防災情報を発信、防災ハンドブック「安心と安全のハンドブック 危機への備え」の著者でもあるいくみさんに、防災情報の最前線を聞いた。(取材・文=佐藤佑輔)

「マジな話。母の防災リュックをみたらプリーツ付きの超ロングスカートが入ってた。『地震のあとは動きやすくないとダメ。お洒落してどうすんの』って言ってるのに超ガン無視で入れ替えようとしない。『なんでそんなにこだわるの?』って聞いてみたら目からウロコ。避難したとき守ってくれるアイデアで…」

SNS上で発信している防災情報は、家族との何気ない会話形式で、読む人の興味関心をひく構成となっている。ロングスカートの使い道はなんと、避難所での着替えの際の目隠し。「首からすっぽり被るとポンチョのようになりその中で着替えができます。トイレが使用できず、携帯トイレを使う場合もスカートの中に隠れてできます。実際に避難所生活をされた人から『あって良かったもの』としても語られています」。

他にも、「屋内施設で緊急時に非常口に駆け込むことは、群衆雪崩を引き起こす可能性があり危険」「在宅での地震発生時、一番安全なのはトイレより玄関」「巨大地震発生時に一番安全なのは実はガソリンスタンド」など、ひと昔前からアップデートされた防災の新常識が多数紹介されている。

「発信している情報ソースは、警視庁や東京都などの行政の他、NHKをはじめとした信頼できるメディアです。それぞれのホームページに行けば有益な情報はたくさん見つかりますが、皆さんなかなか日頃防災について調べることって少ないですよね。SNSという親しみやすい媒体で、身近な例えなら入ってきやすいだろうと思い、発信を始めました」

来るべき巨大地震を踏まえ、どんな備えをしておくべきなのか。長期の保存が利く飲料水、非常食、防寒着など、例を挙げ始めればキリがないが、中でも見落としがちで、かつ大量の備えが必要になるものとして、真っ先にいくみさんが挙げるのが携帯トイレだ。

「トイレがなくても死ぬわけじゃない、トイレくらいどうにでもなると考える人もいますが、大間違い。大きな地震の発生後、水が流れるからと水洗トイレを使った結果、排水管が壊れていたために汚水があふれるということも起こり得ます。実は、家が倒壊するような大地震でなくとも、ライフラインの復旧が確認できるまではむやみに水洗トイレを使うべきではないんです。また、災害ボランティアが来ても、トイレ掃除は衛生面の問題からボランティアが許可なく行うことはできません」

非常用持ち出し袋の他、トイレットペーパーなどと同じように普段から家の中にストックしておくべきだという携帯トイレ。では、いったいどれくらいの枚数を備えておけばいいのか。

「よく言われているのは約1週間分。人によって個人差はありますが、トイレの回数は平均で1日5~7回と言われています。4人家族だとすると、7×7×4で約200回分。実は箱買いでの備えが必要な量なんです。100円ショップなどでも購入可能ですが、能登の地震以降、携帯トイレは買いだめが起こっていて、今は生産が追い付かず品切れも起きている状況です。必要以上に買い占めることはないですが、ずっと使えるものなので気づいたときに備えておくのがいいと思います」

防災は日頃の備えの積み重ねが肝心のようだ。佐藤佑輔

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