茨城県警音楽隊に最高賞 警察庁表彰「兼務隊」初 育児・介護へ配慮も評価

県警音楽隊の「おまわりさんのコンサート」=水戸市千波町

演奏を通して犯罪や事故の被害防止を啓発する茨城県警音楽隊が、これまでの活動を評価され、音楽隊業務の最高賞に当たる「警察庁長官官房長賞」を受賞した。通常業務と隊の活動を両立する「兼務隊」としては初めての受賞。年間100回を超える演奏に加え、育児や介護など隊員の家庭事情に配慮した取り組みが受賞理由となった。

警察音楽隊は、皇宮警察と47都道府県警察に一つずつ置かれている。専従者のみで構成するのは警視庁や大阪府警など11隊で、その他は茨城県警を含め通常業務をこなしながら活動する兼務隊だ。

県警音楽隊は1962年4月に創設され、現在はカラーガード隊7人を含む計29人(うち女性15人)が所属。隊員たちは、県民安心センターや自動車警ら隊などで勤務しながら、週3回ほど音楽隊としての活動に従事している。先月、同賞受賞とともに全国優良警察音楽隊に初選出された。

演奏会では、幅広い世代が楽しめるよう多彩な曲目を奏でる。合間には寸劇も披露し、ニセ電話詐欺の被害防止や飲酒運転の危険性などを呼びかける。

県民の人気も高く、毎年夏ごろには年間予約が全て埋まるほどだ。主な派遣先は県警や市町村のイベント、学校、高齢者施設。同隊によると、2023年の派遣回数は113回、主催のコンサートを含めると演奏回数は134回で計3万人以上を動員した。

隊員の定着に向け、同年には妊娠した女性隊員向けの制服も導入。胸部や腹部にゆとりを持たせ、ズボンはストレッチ生地に変えた。これまでに2人が利用し、好評だったという。

育児や介護などと両立するため、公務にマイカーを使用できるよう制度も変更。水戸市内の隊舎で公用車に乗り換えることなく、直行直帰を可能にした。

司会や歌唱を担当する宮原仁美巡査部長(31)は、産休と育休を経て復帰。「スムーズに音楽隊に戻れた。移動の負担が減ってありがたい」と話す。

ほかにも吹奏楽の強豪校・常総学院高に出向いて演奏技術を磨いたり、動画作成や編集を学んでPR動画を製作したりしている。

楽長の会沢秀之警部補(54)は「県民と警察を結ぶ『音の架け橋』として、これまで以上に効果的な警察広報に取り組みたい」と話した。

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