等身大で存在したらトラウマ必至…! 70年代の特撮作品に登場した“とんでもない敵キャラ”

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昭和を過ごした幼少期、特撮作品が大好きだった。再放送を含めてどハマりし、当時は友達たちとヒーローごっこで遊んだ記憶がある。大人になってからもレンタルを含めてビデオテープやLD、DVDなど、昔見た作品を探し回ったものだった。

さて、特撮作品には登場時に衝撃的だったとんでもない敵キャラが存在する。今回は、トラウマ級の敵キャラを紹介していこう。

■近くで見るなんて絶対無理…しかも毒ガスをばら撒く極悪ぶりだった『シルバー仮面』の「キルギス星人」

まずは、1971年から放送された『シルバー仮面』から。本作は5人の春日兄妹を主人公に、亡き父の遺志を継ぎ、「光子ロケット」を完成させるべく、妨害してくる宇宙人たちと戦っていくといったストーリーだ。

多くの宇宙人が登場する本作だが、衝撃的だったのが第2話に登場する「キルギス星人」だ。Y字型の顔に電球のような丸い突起物が顔の両脇についており、その突起物には血管のようなものも見え、容姿からして気持ち悪い。

人間の姿で登場したキルギス星人は、主役の春日兄妹たちの前で“地球人は泥棒だ”と、静かに語り出した。「月の石を黙って持って帰ったり、金星にロケットを打ち込んだりしたのは、いったい誰に断ったのだ?」なんて言っている。知能はなかなかありそうだが、いや、それってアメリカに言うべきではないだろうか……?

キルギス星人が人間の姿をしているときは、特殊メガネを装着しないと正体が見えない。ただ、妹にメガネをかけさせ、至近距離で確認させる兄貴にも驚いたものだ。あんなの恐怖でしかないだろう。

作中、キルギス星人は奇声をあげ、大笑いしながら毒ガスをまき散らすという暴挙にも出ていた。相手が子どもたちであっても容赦なし。まさに極悪な敵キャラだったのだが、しっかり徒歩で移動しているので宇宙人としての能力は疑問だ。

とくに、斜面を滑りながら毒ガスをまき散らすシーンは恐怖でしかなかった。だが、コイツは自身のガスのせいで視界が悪くなり、バイクで近づく春日光二に気付かない。

そして光二がシルバー仮面に変身し、肉弾戦となってからは一方的にやられてしまう。スキップで距離を図りながら後退した途端、兄妹たちの銃撃で最後は爆死……と、最期はあまりにもあっけなかった。地球人をナメてもらっちゃ困るものだ。

■害虫を巨大化って…想像するだけでカオス過ぎる『ミラーマン』の「ゴキブラー」「ハエブーン」

次は、こちらも1971年から放送された『ミラーマン』に登場する害虫たちを紹介したい。『ミラーマン』は『帰ってきたウルトラマン』を製作した円谷プロダクションによる作品で、さらなる怪獣ブームを巻き起こした人気作だ。

本作にはそれなりに怖い怪獣も登場するのだが、とくにトラウマものだったのが、第25話に登場する害虫軍団である。

このエピソードでは、怪獣の襲来を予知する能力を持つ少女・すみれが登場する。彼女が予知した害虫の第一陣が「ゴキブラー」だった。何の害虫かはその名前から言わずもがなで、こんなのが巨大化したらたまったもんじゃない。巨大化といっても人間と同等くらいのサイズなのだが、いや、それでもカオスだ……。

通報を受けて向かった一般の警察官たちは、一方的に射撃を開始。何か飛び散ったらどうするの?と心配したが、コイツはあっけなく倒れてしまった。触角や腹の凸凹としたフォルムもリアルで、こんなのがもしもたくさん出現したらと思うと……いや止めておこう。想像するだけで全身に鳥肌が立ってしまう

さて、次に登場するのは蠅が巨大化した「ハエブーン」。こちらも想像しやすいネーミングである。市民によって倒されたハエブーンだが、シャワーのように口に穴が開いており、やはり気持ち悪い。
もう一つ出現するのが、蚊の「モスゴジラ」だ。なぜゴジラなんだろう? まるで二大怪獣を足したようなネーミングなのだが、蚊だけにこっちも市民に倒されていた。殺虫剤が効いたのだろうか……。

■縦に並ぶ5つの顔…恐怖を植え付けられた『イナズマン』の「イツツバンバラ」

最後は1973年に放送された『イナズマン』から。主人公は超能力者の渡五郎という大学生であり、同じく超能力を持つ少年少女たちと力をあわせて悪の超能力者を倒していくストーリーだ。1970年当時はオカルトブーム真っ最中だったため、その影響もあってか、随所にそういった要素が盛り込まれていたのが特徴的だった。

多くのミュータンロボットが登場する本作だが、いきなり強烈なインパクトを残したのが、第1話に登場する「イツツバンバラ」だ。

冒頭、暗闇から水色の無表情な5つの顔が現れる。これだけでも十分怖いのだが、そのうえ、赤のボディスーツを着ているので不気味さ満点だ。当時、初めて見たときは本当に恐怖だった。夜、目が覚めたら暗闇に立っていそうで、なかなか寝付けなかったことを覚えている。

イツツバンバラは地割れを起こすほか、口から炎を吐き出す技を持っており、なかなか優秀な敵キャラだった。だが、主人公の五郎を殺し損ねてしまい、秘密結社の“少年同盟”によって正義のヒーロー・イナズマンを誕生させることとなってしまう。

そんなことは知らず、部下とともに市民を痛めつけるイツツバンバラ。そこに五郎が変身したサナギマンが登場し、手下どもをやっつけていくのだ。でも、サナギマンはエネルギーを溜めるために必要なフォルムで、イナズマンへの第一形態。確か、弱かったような?

そう思って第一話を見直してみた筆者だが、やはりここではしっかりと敵をやっつけていた。いつの間にか“サナギマンは弱い”という印象を持ってしまっていたのだが、そうではなかった。最初のうちは例外ともいえるかもしれない。

イツツバンバラは5つの顔があるだけに背が高い……というよりも長くて重そうだ。最終的にイナズマンにその先っぽを持たれて、軽々と投げられていた。イナズマンの強さを視聴者に期待させるための“かませ犬”的な敵役として、十分な役割を果たしていたように思う。

今回紹介した以外にも、特撮作品には気持ち悪い敵キャラが多く登場する。ヒーローたちの強さやカッコ良さを視聴者に分からせるためには欠かせない存在なのだが、見ている子どもたちにとっては恐怖のトラウマとなって残ってしまうこともあっただろうな。

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