広瀬アリス『366』“絶対にコケられない月9”は超ハード現場になっていた 『silent』&TBSクオリティ確保の代償

広瀬アリス (C)ピンズバNEWS

4月15日、広瀬アリス(29)主演、眞栄田郷敦(24)が相手役の連続ドラマ『366日』(フジテレビ系/夜9時~)の第2話が放送された。視聴率は世帯6.4%、個人3.9%だった(関東地区/ビデオリサーチ調べ)。

ドラマ『366日』は、人気バンド・HYの名曲『366日』の世界観に着想を得たオリジナルストーリー。第1話は、12年ぶりに再会した高校時代の同級生・雪平明日香(広瀬)と水野遥斗(眞栄田)の恋が始まるも、予期せぬ悲劇に直面してしまう――という内容だった。

【以下、第2話までのネタバレを含みます】

第1話のラストで橋から転落した遥斗は緊急搬送された。しかし、数日後に医者から遥斗の意識は一生戻らないかも、と告げられてしまう。遥斗の家族――特に妹の花音(中田青渚/24)は気持ちの整理がつかず、明日香にもう来ないでと告げ、一度は明日香も引き下がる。

しかし、あらためて明日香は、遥斗と交際を始めたばかりであること、10年越しの恋だったことを率直に伝え、病室で「そばにいたい」と花音ら遥斗の家族に頭を下げる――というのが第2話の展開だった。遥斗は寝たきりだが、高校時代や再会してからの思い出のシーンが多く描かれた。

民放キー局関係者は話す。

「主演の広瀬さん、お相手役の眞栄田さんに、友人役の坂東龍汰さん(26)、JO1・佐藤景瑚さん(25)と、若い視聴者に人気の俳優・タレントがズラリと並んでいて、和久井映見さん(53)など実力派のベテランもキャスティングされている。

そして、不朽の名曲『366日』が題材のドラマ。撮り方も美しくて、フジテレビの気合いを非常に感じる作品ですよね。フジにとって本作は“絶対にコケるわけにいかないドラマ”だともっぱらです」

『366日』が放送されているフジテレビの「月9」枠は、森七菜(22)と間宮祥太朗(30)のダブル主演作『真夏のシンデレラ』(23年7月期)、嵐・二宮和也(40)、大沢たかお(56)、中谷美紀(48)のトリプル主演作『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~』(同年10月期)、そして永野芽郁(24)主演の『君が心をくれたから』(24年1月期)で“3連敗”中。

『真夏のシンデレラ』は全話平均視聴率が5.7%で月9ワーストを記録し、『ONE DAY』はさらに数字を落とし、全話平均世帯5.3%でさらにワーストを更新。『君ここ』も全話平均世帯5.8%と極めて低調だった。

「現在、テレビ各局が最重要視している13~49歳のコア視聴率も、『真夏のシンデレラ』はまだ良かったのですが、『ONE DAY』『君ここ』は2%前半と非常に厳しいものでした。だからこそ、『366日』は絶対にコケられないでしょうね。『366日』の第1話は世帯7.2%、個人4.1%、コアが2.7%というまずまずと言えそうな滑り出しになりました。

ですが、“絶対に負けられない作品”というプレッシャーは現場も強く感じているのでしょう。クオリティ面の追求のために、相当ハードな撮影現場になっているといいますね」(前同)

■フジテレビの作品なのに売り文句には《『最愛』脚本家×『ぎぼむす』監督で贈る》

より良い作品を視聴者に届けたい――高い志で制作されているという『366日』だが、クオリティを求めるところで撮影スケジュールが大変なことになっているという。

前出の民放キー局関係者は話す。

「まず、今回の『366日』の制作を担当するのが、22年10月期の社会現象級の大ヒットドラマとなった『silent』(フジテレビ系)を制作した会社なんです。この4月期には『366日』だけでなく、石原さとみさん(37)主演の『Destiny』(テレビ朝日系/火曜夜9時~)も担当しています。

この会社の歴史は古く、数多くの映像作品を制作していますが、広告映像制作会社としてスタートした経緯があります。美しくて温かみのある映像を撮らせたら一級品の制作会社ですが、連続ドラマの制作となると、もっと慣れている会社はありますよね。末端のスタッフは、てんやわんやになっていると言いますよ」

さらに、『366日』の撮影現場がハードになっている理由は、監督の丁寧な演出方法にあるという。

「本作でメインの演出家、つまり監督は平川雄一朗さん。大沢たかおさん主演の『JIN―仁―』(09年10月期・11年4月期)や、綾瀬はるかさん(39)主演の『義母と娘のブルース』(18年7月期)など、主にTBS系のドラマを大成功させてきたヒットメーカーですよね。

現在、地上波のテレビ界でTBSドラマは、ナンバーワンの評価を受けています。今回、フジテレビは『366日』でTBSドラマのクオリティを目指している感が強くありますよね」(前同)

また、『366日』は脚本家も清水友佳子氏が担当。清水氏は吉高由里子(35)主演のTBS系ドラマ『最愛』(21年10月期)を手がけ、ヒットさせた人物だ。

フジテレビが“TBSドラマの監督と脚本家”の実力に期待しているのは間違いなく、『366日』の公式サイトには宣伝文句に《『最愛』脚本家×『ぎぼむす』監督で贈る》とあるのだ。

■ハイクオリティな作品を作るためには――

しかしこの“TBSドラマ”のクオリティを確保することは、容易なことではないようだ。

「平川監督は演者にリハーサルの段階からしっかりと演技指導をして、丁寧に丁寧に撮影を進めていく監督だといいます。“監督”のイメージを考えると当然のように聞こえるかもしれませんが、近年のドラマ業界では、こうした監督は減りつつあるんですよね」(前出の民放キー局関係者)

近年のテレビ不況による制作費の厳しさから、現在のテレビドラマはとにかく“スケジュール通り”が求められていると言われている。その影響も大きく、ドラマの撮り方も変わりつつあると言われているのだ。

「ひと昔前は映画だけでなくテレビドラマでも、“監督のこだわりで撮りなおした”とか予定よりロケに日数がかかったという話もありましたが、いまはスケジュール通りに進めるのが一番。撮り切れなくて別日に、なんてことになれば人件費など、物凄い追加予算がかかってしまいますからね。

ですので、近年は演者に細かく演出をつけることもなく、俳優にある程度任せてどんどん撮影を進める監督も多くなりつつあるといいますね。もちろん、監督の中には“OKライン”があり、そこを下回ることはない、ということなんでしょうが」(前同)

平川氏は、“こういう作品を撮りたい”“こういう芝居をして欲しい”というのを明確に持っているからこそ細かく指導をし、『ぎぼむす』他、名作を次々と生み出し、高く評価されているのだろう。

「とても丁寧に撮影していくので、それは時間がかかりますよね。

第1話には“早朝の桜”が出てくるシーンがあり、前日からずっと撮影が進められて終了時刻が29時半(朝5時半)だったとか。また、スタッフが終電では帰れなくて、タクシーで帰ることも珍しくない、と聞こえてきていますね。

惨敗続きの月9だけに『366日』は成功を収めないといけない。だから、クオリティの高い作品を――そうした背景があり、より良い作品を作るために現場は超ハードになっていると。多くの称賛の声が上がった『silent』や大ヒットしたTBSのドラマのようなクオリティを確保するのは、やはり容易ではない、ということでしょうね」(前同)

第1話冒頭の桜を見つめる広瀬など、映像の美しさとこだわりを感じさせる演出など見どころは多い『366日』。ハードな現場から生み出される壮大な愛のドラマは、月9ブランドを復活させられるだろうか――。

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