物価が上がると「老後資金2000万円」では足りない? 昨年のように物価が年2%上がると必要額の2000万円がどのくらい膨らむ?

老後資金は10年後に2割以上膨らむ

物価が2%上がるということは、簡単にいうと、昨年まで100円だった物が102円になるということです。言い換えれば、同じ物を買うためのお金が100円では足りなくなるということです。

これを老後資金2000万円に当てはめていうと、老後資金が2000万円では足りなくなるということになります。

毎年2%ずつ物価が上がると仮定すると、今2000万円の価値の物は1年後に2040万円、2年後に2080万8000円、3年後には2122万4160円となり、これに伴い必要資金も増えていきます。

継続的に物価が2%上がっていったとき、必要な老後資金2000万円がどれくらい膨らむのかは、いつ老後を迎えるかによっても異なります。この金額は、「終価係数」という係数を使って算出することができます。

物価が継続的に2%ずつ上がると仮定した場合の終価係数は、図表1のとおりです。

図表1

※筆者作成

例えば、物価が継続的に2%上昇すると仮定したときの、10年後の老後資金(現在価値2000万円)は、以下のように求められます。

2000万円 × 1.2190 = 2438万円

つまり、10年後に必要な老後資金は2438万円に膨らむという計算になります。同様にして、20年後に必要な老後資金は2971万8000円に、30年後に必要な老後資金は3622万8000円に膨らむということになります。

インフレ対策として物価連動国債などがある

物価が継続的に上がることを「インフレーション(インフレ)」といい、物価が継続的に下がることを「デフレーション(デフレ)」といいます。

「物価が上がる」とは「お金の価値に対して物の価値が上がる」ことを意味し、「物価が下がる」とは「お金の価値に対して物の価値が下がる」ことを意味します。つまり、インフレになるとお金の価値は(相対的に)下がり、デフレになるとお金の価値は(相対的に)上がります。

インフレのときとデフレのときでは、資産運用の方針が異なります。インフレのときは物の価値が上がっていくので、価値が下がる「お金」ではなく、価値が上がる「物」を保有しておくことが常とう手段とされます。

反対に、デフレのときはお金の価値が上がっていくので、価値が下がる「物」ではなく、価値が上がる「お金」を保有しておくことが常とう手段とされます。

先ほど、「物価が毎年2%上がると仮定した場合、必要な老後資金2000万円が10年後には2438万円になる」と述べましたが、これはあくまで「お金」としての価値です。「10年後に2438万円が必要となる」と考えると悲観的になるかもしれませんが、大切なのは対策を立てることです。

ポイントは、「価値を保存する」ということです。老後資金2000万円を「お金」で用意しようとしたとき、インフレリスクがあります。つまり、お金の価値が下がるというリスクです。このリスクは、「お金」を「物」に置き換えることで軽減できます。置き換える「物」として、物価連動国債、株式や不動産などが考えられます。

まとめ

本記事では、継続的に物価が2%ずつ上がっていくと仮定すると、「老後資金2000万円」はどれくらい膨らむのかについて解説しました。計算の結果、老後を迎えるのが10年後なら2438万円に、20年後なら2971万8000円に、30年後なら3622万8000円に膨らむことが分かりました。

もちろん、今後、物価が2%ずつ上がっていくとはかぎりません。しかし、インフレ対策の必要性については感じ取っていただけたのではないでしょうか。インフレになるとお金の価値は相対的に下がります。資産を「お金」だけで保有し続けることには、多少なりともリスクが存在します。

インフレ対策として、物価連動国債、株式や不動産などを保有することが考えられます。今後は、物価の変動も気にしながら、資産運用をされてみてはいかがでしょうか。

執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

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