寝る前に部下から「明日休みます」と一言だけLINEが届きました。事情があるのかもしれませんが、直前すぎて正直モヤモヤします…注意しても大丈夫でしょうか?

有給休暇の申請の仕方に規定はない

急に休まれると、業務に支障が出る可能性もあるほか、必ずしも送られたLINEに気付くかどうか分からず、非常識なのでは? と不満を感じることもあるでしょう。

しかし、労働基準法では、有給休暇の日数などの規定は定めていますが、申請の方法については明確に規定していません。そのためLINEなどで休みを申告されても、上司としては「電話の方が良い」と助言するにとどまるしかなく、若手社員はLINEのほうが手軽で便利と捉えている面もあるでしょう。

LINEで「休みます」はアリかナシか?

ソニー生命が実施した2023年度の「社会人1年目と2年目の意識調査」によると、社会人1年目と2年目の71.0%が「遅刻・欠勤連絡をメールやLINEでする」のは「アリ」と回答しています。つまり、若手社員にとってLINEやメールを使った連絡は決して珍しいことではなく、デジタル化の進展とともに、こうした変化はさらに加速していくのかもしれません。

ともあれ、LINEやメールでの有休申請がアリかナシかは賛否両論ありますので、それぞれの意見を見ていきましょう。

__・連絡さえすれば(もらえれば)手段は何でもよい

・速報性があり、既読通知もあるから便利

・電話は忙しくて取れないことが多いからLINEやメールの方がありがたい__

__・相手に対して失礼、非常識

・電話で直接話した方が事情は分かりやすい

・気づかない場合もあるから電話すべき__

LINEやメールで連絡するのは利便性がある一方で、マナー違反という指摘もあるようです。単に世代間の価値観の違いだけではなく、個人それぞれの考え方の違いも影響しているのかもしれません。どちらの意見が正解というものではないため、対応が難しい部分もあるでしょう。

就業規則で細かく規定しておこう

有給休暇の申請方法をめぐるトラブルを未然に防ぐため、会社側は就業規則で具体的な取り扱いを明記しておくことが重要です。

例えば、次のようなルール設定が考えられます。

__・LINEやメールでの有給申請は原則として認めない

・緊急の事情などでやむを得ずLINE等で申請する場合は理由を必ず記載する__

さらに、会社側には労働基準法に基づく「時季変更権」があります。これは「有給休暇の取得によって事業の運営を妨げる場合」に、会社が有給を別の時期にずらすことができる権利のことです。

この時季変更権を行使する要件や手続き方法なども、就業規則で定めておくことが望ましいでしょう。突然明日休みますと連絡された場合、どうしても会社の運営が難しくなるなどの理由があれば、LINEなどでの有給休暇の申請は認められない可能性もあるのです。

会社は、時代の変化に合わせて柔軟に対応することが求められます。時代にマッチした就業規則を定め、従業員が働きやすく休みやすい環境を整えることが大切です。

まとめ

LINEやメールなどで有給休暇を申請することは、デジタル化の進展により許容されつつある一方で、社会人として非常識だととらえる意見もあります。トラブルを避けるためにも、会社側は就業規則で有休の申請方法を明確にし、職員が働きやすい環境を整えることが大切です。

出典

e-Gov法令検索 労働基準法
ソニー生命保険株式会社 ニュースリリース(2023年度)社会人1年目と2年目の意識調査2023

執筆者:渡邉志帆
FP2級

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