NFLが初開催のメディカルサミットで選手の安全性向上に向けた協力体制を構築

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NFLは新たにヒップドロップタックルを禁止したり、選手の安全性向上を目的とした備品を取り入れたりと、新しいルールを導入してきた。

2023年に多くのスター選手が重傷に見舞われたリーグにとって、選手の健康維持は最優先事項となっている。昨季、アーロン・ロジャース、ジョー・バロウ、カーク・カズンズ、ジャスティン・ハーバート――4人のフランチャイズクオーターバック(QB)――は合わせて36試合を欠場。シーズンを故障者リザーブ(IR)で終えた有名選手は他に数名いたが、全体としては、2023年にNFL選手が欠場した試合数は2022年よりも合計で700試合少なかった。

選手がフィールドでプレーし続けるための最善の方法を見つけ出すことは、リーグと各チームが共同で行う作業だ。そこで、NFLは先月、この種のスポーツでは初と見られる共同のメディカルサミットを実施している。

オーナー、ジェネラルマネジャー(GM)、コーチが毎年恒例の春季ミーティングに集まった一方で、400人以上のアスレチックトレーナー、備品マネジャー、ストレングス&コンディショニングコーチ、栄養学の専門家、スポーツ科学ディレクターが一堂に会し、互いに、そしてリーグの研究パートナーから学びを得た。

NFLのチーフメディカルオフィサー(CMO/医務部長)であるアレン・シルズ医師は『Associated Press(AP通信)』に対して「チームドクターやアスレチックトレーナーだけではなく、さまざまな分野の人たちが自分たちのことを、健康と安全に対する私たちの取り組みの一部を担っていると考えている」と述べている。

「各クラブは自分たちを非常に総合的にとらえており、最近のコーチは練習スケジュールを立て、トレーニングキャンプを計画し始める際に、さまざまな分野に真剣に関与し、何がケガの原因になっているのかという視点を持ちながらそれを行っている」

「もちろん、コーチたちはチームがプレーする準備を整えたいと考えているが、それと同時にできる限り健康な状態にしたいとも考えている。だからこそ、私たちはこのような介入に注目している。医療であれ、備品であれ、栄養であれ、ストレングス&コンディショニングの取り組みであれ、選手の可用性と確実性を高めるために、私たちはどのようなことをどのようにして共同で行えるだろうか」

プロフェッショナル・フットボール・アスレチック・トレーナー協会、プロフェッショナル・フットボール備品マネジャー協会、プロフェッショナル・フットボール・パフォーマンス・コーチ協会、プロフェッショナル・フットボール管理栄養士協会のメンバーが参加した4日間のサミットでは、ケガの予防が大きな焦点となった。

各グループはワークショップ、セミナー、合同教育セッションに参加。さまざまな業者と話し、殿堂入りコーチのトニー・ダンジーや元選手のアンドリュー・ウィットワースといったゲストスピーカーの話に耳を傾けた。

NFL幹部のジェフ・ミラーは「スポーツ、医療、イノベーションの領域で進められてきた取り組みには、ある種の成熟が見られ、すべてのクラブとこれまで以上に頻繁に、より深く情報を共有する必要がある」と話している。

選手の健康と安全を監督しているNFL上級副社長のミラーは、チーム同士でアイデアを共有する機会を与えつつ、さまざまなグループが同じ部屋にいることの重要性を強調した。

NFLはこのサミットを毎年実施することを予定している。

「リーグのすべては競争的なものだが、選手の健康と安全に関しては決してそうではない」と語ったミラーはこう続けた。

「それは私たちが分かち合い、各クラブが互いに共有できる部分だ。誰もがその特定の目標を最優先事項としているからだ」

ミネソタ・バイキングスで選手の健康・パフォーマンス担当エグゼクティブディレクターを務めるタイラー・ウィリアムスは、NFLのスカウティングコンバインでは長い間、さまざまなメディカル部門が個別のグループとして集まっていたが、それらを一堂に集めるというアイデアは数年前に始まったと話している。

「コンバインの規模が大きくなり、分野がより細分化されるにつれて、どうすれば学際的なコラボレーションのレベルを高めることができるのだろうか。アスリートがこのクリーツを履きたいと言ってやってきたときに、足と足首の負傷歴を調べ、スポーツ医学とどのようにトレーニングするのかを考え、栄養士からどのように栄養を補給するのかを聞けるようにしたいし、それらすべての構成要素が発言権を持つべきだ」とウィリアムスはコメントした。

サミットの2日目、各グループは6時間の教育セッションと分科会に参加。腱(けん)の健康が午前中のセッションのテーマだった。午後のセッションでは、各分野の専門家による5つのワークショップが行われ、出席者は自分の専門分野から一歩外に出て、別の専門家による見解を理解し、スタッフ間で会話を交わすよう促された。

ロサンゼルス・ラムズの備品マネジャーを務めるブレンダン・バーガーは「私たちはケガとプレーへの復帰、選手をフィールドに復帰させるための備品の役割について話している。他チームのアプローチと私たちのアプローチはまったく違うかもしれない。だからこそ、私たちは自分たちのクラブに持ち帰れるようなものをお互いから得ることができたし、それが重要だった」とコメント。

「選手の健康と安全に関しては、極秘事項ではない。私たちはアスリートのためにここにおり、彼らを助けることができればできるほどいい」

2002年から、NFLは潜在的に危険な戦術を排除し、負傷のリスクを減らすことを目的とした、50以上のルール変更を行なってきた。

チームのオーナーたちは最近のリーグミーティングで、選手が相手選手に旋回するテクニックを使ってタックルすることを禁止するルールを全会一致で承認。ミラーによると、ヒップドロップタックルは昨季に230回使用され、15人の選手が負傷による欠場を余儀なくされたという。

ホースカラータックルやチョップブロックなどは数年前に禁止された。ヘルメットからヘルメットへのヒットは1996年に違法となっている。ローヒットの禁止を含め、クオーターバックの保護は多くのルール改正の焦点となってきた。

先週、NFLとNFLPA(NFL選手会)は脳しんとうの原因となる衝撃を軽減するために設計された、クオーターバックとラインマンのための8つの新しいポジション別ヘルメットを承認している。


記事提供:『The Associated Press(AP通信)』


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