【試乗】ホンダの新型車WR-Vは「コスパ最強」なだけじゃない。乗ってみたら分かった、いま売れている理由とは?

2024年3月22日に発売されたばかりのホンダWR-Vを、公道で初めて試乗しました。エンジンや駆動方式は1種類のみで、グレードも全部で3種類とかなり割り切った設定のWR-Vですが、そんなところも潔くて、逆に好感が持てたりするのはなぜでしょうか。乗ってみてもかなり好印象でした。

インドで販売される「エレベイト」の日本仕様が「WR-V」

WR-Vのボディサイズは全長4325mm×全幅1790mm×全高1650mm。全高がやや高いことを除けば、同じホンダのヴェゼルとほぼ同サイズとなる。実車にサイズ以上の迫力を感じるのは、ボクシーなスタイルや強めのフロントマスクによるものだろう。

WR-Vはホンダがタイで開発し、インドで生産するコンパクトSUVです。現地では「エレベイト」の車名で販売されていますが、2023年12月にはWR-Vとして日本導入を発表、事前受注も開始しています。そして2024年3月22日、ついに正式に発売が開始されました。

最近のホンダのSUVといえば、ヴェゼルやZR-Vといった全高を低く抑えたクロスオーバー系のスタイリッシュなデザインが続いていますが、WR-Vは日本国内のホンダのラインナップにはいない「ゴツくてタフ」な印象が新鮮です。過去を遡れば、2003年にエレメント、2007年にはクロスロードが同じようにボクシーなデザインでラギッド系でした。いまも海外のホンダ車に目を向ければ、パイロットなんていう大型SUVもあり、WR-Vのテイストと少し近い感じがします。

ボディサイズは全長4325mm、全幅1790mmでヴェゼルとほぼ同サイズ(全長4330mm×全幅1790mm)、全高は1650mmとヴェゼル(1580mm)より70mm高く、ホイールベースも2650mm(ヴェゼルは2610mm)と少し長めです。また最低地上高も195mmと高めに設定されています。コンパクトSUVと聞いて実車を見ると、思っていた以上の迫力を感じるかもしれません。

エンジンと駆動方式は1種類、グレードは3種類というシンプルさ

派手な加飾はなく、黒系で統一されたシンプルなインテリア。エアコン吹き出し口の下に空調系のスイッチを集約し、その下側には大きめな収納トレイやスマートフォンなどを充電するUSB端子も2カ所用意する。

そんなWR-V、すでに受注台数は約1万台を超えているというので、好調な出だしです。実際の購入者にもこのラギッド感が受けているのだと言います。また、購入を検討している人の中では、同じホンダでサイズも価格帯も近く、4WDやe:HEVも用意するヴェゼルと迷っている人も多いようです。

販売が好調な理由のひとつにシンプルでわかりやすいグレード構成があります。WR-Vは「X」、「Z」、「Z+」の3グレードの構成で、この3種類すべてエンジンや駆動方式は一緒。違いは見た目や装備によるものなので、自分に必要な装備や見た目の好みで選ぶことができます。

しかも、エントリーグレードXの車両本体価格は209万8800円と、N-BOXの上級グレードにも近い価格(CUSTOM ターボ=204万9300円)ですが、ホイールこそ16インチのスチールホイール+キャップとなるものの、基本装備は非常に充実しています。

アダプティブクルーズコントロール(ACC)、車線維持支援システム(LKAS)、衝突軽減ブレーキ(CMBS)などの運転支援や安全装備を含むホンダセンシングはもちろん、ヘッドライトはフルLED(オートハイビーム付き)、オートエアコン、パドルシフトまで標準装備となっています。

そのひとつ上の中間グレードZ(234万9600円)になると、本革巻きのハンドルやセレクターレバー、プライムスムースのソフトパッド、17インチアルミホイールといった装備が標準となります。さらにトップグレードのZ+(248万9300円)ではベルリナブラックのフロントグリル、シルバーのドアモールディング、シャープシルバー塗装ドアロアーガーニッシュなどの専用外装が用意されます。

車両本体価格234万9600円の中間グレード「Z」に試乗

試乗車のボディカラーはメテオロイドグレー・メタリック(オプション色)。この他に同じくオプションで赤、白、黒、ブラウン系の4色が用意されており、黒(クリスタルブラック・パール)が標準色となる。

今回の試乗車はZでした。内装は黒で統一されていて、とにかくシンプル。エアコン吹き出し口の下に操作系がまとまっているデザインで使い勝手も良好です。センターコンソールに大きめのトレイがあるのも、スマートフォンや小物を入れたりできて良い感じ。とくにZは本革巻きのハンドルなので手に触れる部分に安っぽさは感じません。

ただし、手引き式のパーキングブレーキは、電動式に慣れている人からすると、どうなのでしょうか? それが当たり前だった世代からすると、少し懐かしさを覚えますが・・・。個人的にはしっかり手で引いて確認ができるこのタイプ嫌いじゃないです。

そんなWR-Vの走りは想像以上でした。というのも、今回は試乗車を借りたホンダウエルカムプラザ青山から湾岸エリアまでの道のりで、首都高速と一般道路のみの短い時間での試乗でしたが、まず最初に感じたのは乗り心地が良いこと。

このルートでは荒れた路面はほとんどありませんが、それでも道路の継ぎ目や段差などでしっかりと衝撃を吸収してくれていることを体感できました。長めのホイールベースやワイドトレッドも効いているのかもしれませんが、WR-Vが作られたインドは日本に比べて道路状況が良くないようなので、そこで開発されたことを考えると、この理由も納得できます。

それでいて意外とコーナーでは、ロールも少なく、キビキビと走ってくれる印象。全高や重心が高い割には安心して走ることができます。また、ハンドルのセンター付近の精度も高く、ハンドルを切り始めて、クルマがすーっと曲がる感じはホンダの他のSUVと同じく、電動パワーステアリングの制御にはかなりこだわっているようで、気持ちの良い走りに繋がっていると思います。

エンジンはL15D型の1.5L直列4気筒i-VTEC。最高出力は118ps、最大トルクは14.5kgmというスペックですが、CVTとの相性が良く、スムーズに吹き上がります。決してパワーがあるわけじゃないので、たとえ全開にしても驚くような加速感はありませんが、高回転まで回すと、ホンダのエンジンらしく、音もフィーリングも気持ち良いです。ちなみにCVTにはSモードはもちろん、全車パドルシフトが付いているので、スポーティな走りもできてしまいます。

そしてそのスムーズな走りに大きく関わってくるCVTですが、これもヴェゼルやシビックと同様にステップアップシフトやステップダウンシフト制御が入ります。アクセルペダルを全開にすれば、巧みなシフト制御で一気に吹き上がるようなダイレクトな加速感が得られ、減速時にはしっかりとエンジンブレーキを効かせてくれます。これも走りの質に大きく貢献しているように思えます。

余談ですが、インドではMTモデルも用意されているとのこと。日本でMT専用モデル「RS」や2Lターボエンジンを搭載して車高を下げた「タイプR」を出してくれたらなんて……嬉しいですね。

「後席も快適」なWR-Vの後席に座ってみた。

分厚いシートクッションを用意したWR-Vの後席。リクライニングこそしませんが、ヘッドレストを伸ばせば、身長180cm、体重80kgオーバーの大柄体型の筆者でも快適に座ることができました。

今回は後席にも座って移動してみました。以前テストコースで試乗した際に開発者の方々に「後席も快適です」と聞いていたので、ぜひ試してみたかったのです。日本人に比べて大柄な体型の人が多いインドで後席を使う想定で開発されているので、身長180cm、体重80kgオーバーの日本人にしては大柄な筆者が後ろに座っても頭上も足元もかなり余裕がありました。

走り出しても厚めのシートクッションやサスペンションのセッティングのおかげで座り心地も良好。リアにも全車ベンチレーションが付いているので、これからの季節も快適なはずです。さらに走行中もロードノイズが少なくて、静粛性が高いことも付け加えておきましょう。これならきっと高速道路を使ってドライブをしても同乗者との会話が楽しめるはずです。

前席はもちろんですが、後席にも座ってみての試乗を終えましたが、あらためて気づいたのはやはりその運転のしやすさです。前席のシートポジションは高めで見晴らしも良く、ボクシーなデザインのおかげでしっかりと運転席からはボンネットの両端が見えて車幅感覚がとても掴みやすいです。そして最低地上高も195mm確保していますから、道中で下まわりを気にすることもありません。

運転のしやすさは日常の使い勝手に直結する部分です。運転がしやすければ、ちょっとした買い物でも連れ出したくなります。そしてドライブとなると運転の気持ち良さも大切。その両方を低価格で実現したWR-Vはまさに「良品廉価」と言っても良いかもしれません。販売も好調ということで、「こんなSUVを待っていた!」という人も多かったのではないでしょうか。

サイドウインドウを小さく見せるデザイン処理でサイズ以上のボリュームを感じるWR-V。フェンダーやボディサイド、バンパー下部など樹脂パーツの配分などもWR-Vのタフさをより高めている印象。

ホンダWR-V主要諸元

●Engine
型式:L15D
エンジン種類:直4DOHC
排気量:1496cc
エンジン最高出力:87kW(118ps)/6600rpm
エンジン最大トルク:142Nm(14.5kgm)/4300rpm
燃料・タンク容量:レギュラー・40L
WLTCモード燃費:16.2km/L
●Dimension&Weight
全長×全幅×全高:4325×1790×1650mm
ホイールベース:2650mm
車両重量:1230kg
●Chassis
駆動方式:FF
トランスミッション:CVT
サスペンション形式 前/後:ストラット/トーションバー
ブレーキ 前/後:Vディスク/ドラム
タイヤサイズ:215/55R17
●Price
車両価格:2,349,600円

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