スタートした春アニメ、最初の“神回”は『ガルクラ』 あまりにも感動的なネガティブパワー

毎週、「ほとんどの作品を観ている」アニメライター・はるのおとによる週刊連載「【アニメ】神回・オブ・ザ・ウィーク」。4月1日から4月14日に放送された分から注目の“神回”をピックアップ!(編集部)

春クールに突入して2週間以上、数多い新作のなかでもアンカー気味に『怪獣8号』が始まりました。同作は最速放送に合わせてX(旧Twitter)でリアルタイム配信しており、10万人以上の視聴者を集めるという大盛況に。筆者が知る限り、2023年秋の『聖剣学院の魔剣使い』第1話でも似た試みがされていました(こちらは最速放送から30分遅れでしたが)。もちろんいろんな事情があるのはわかりつつも、あらゆるTVアニメでこういう配信をやってくれたら視聴環境の格差がなくなってイチ視聴者としては最高なのですが……。

というわけで、今回から春アニメの神回を紹介していきます。

●ガールズバンド暗……くない!『ガールズバンドクライ』

「冬クールは音楽もののアニメがない」なんて言っていた矢先に、音楽アニメが多数放送されている春クール。そのなかでも田舎の高校を中退し、東京に出てきた少女の物語『ガールズバンドクライ』に序盤から心震わされている人も多いのではないでしょうか。

少し引っ込み思案な仁菜が東京(本当は川崎)で一人暮らしを始め、大都会の荒波に揉まれるなかでストリートミュージシャンの桃香と出会ったことから思い切り感情を爆発させるに至ったのが第1話。続く第2話では仁菜の上京の理由となる過去ーー学校ではいじめられ、ルールに縛られて家庭も厳しいーーとともに、卑屈になり過ぎて人付き合いも上手くいかない様子が描かれます。

そんな仁菜が、桃香らとの食事を離脱した帰り道が今回のハイライト。何もかも上手くいかない自分が情けなくなり「馬鹿じゃねーの!」と泣き叫ぶ、だけでなく「うるせーぞ!」と酔っぱらいのサラリーマンに怒鳴られても反撃し、手に持つシーリングライトを振り回します。鼻水まで流すその姿は情けないものなのですが、ままならなさに苛立ち、自分への怒りに打ち震えた経験のある人なら涙なしに見られないでしょう。それこそサブタイトルに引用されているゆらゆら帝国「夜行性の生き物3匹」のかの有名なPVのような、ユーモラスながら鬼気迫るものがあるというか。

その後、暗い部屋に帰宅した仁菜だけではシーリングライトを取り付けられないものの、あとからやってきた桃香の手によって設置され部屋が明るくなる流れは、ひとりではなく複数人で世界が開けていく、バンド活動を想起させて美しいくだりでした。『宇宙よりも遠い場所』もそうでしたが、脚本家の花田十輝さんの、こういうネガティブなパワーのある女の子の話はあまりに感動的です。

●過去作観て追いつく価値が充分以上の2作品

続いて2本まとめてご紹介。『ガルクラ』と同じく花田十輝さんがシリーズ構成を手がける『響け!ユーフォニアム3』は、京都にある高校の吹奏楽部を舞台にした青春ストーリーですが、今回始まった『3』では主人公の黄前久美子が3年生となり、部長として奮闘します。

高い評価を受け続けるシリーズだけに「何を今さら……」という向きもあるでしょうが、原作小説ファンにとっては第1話のアバンが悶絶もののアレンジでした。アニメ派の人は何気なく流しても全然大丈夫なのですが、そう見せるか……また、舞台が2017年ということで当時流行中だった星野源さんの「恋」が作中で演奏されました(そして『響け!ユーフォニアム』を大好きな星野さん自身のラジオで喜んだ)が、この辺のセンスや、第2話の不穏さも含めて「『ユーフォ』がテレビに帰ってきた!」と感じられる序盤でした。高値安定。

中国発の『時光代理人 -LINK CLICK-II』は、「撮影者の意識にリンクし、写真の世界に入ることができる能力」を持つトキと、「その写真の撮影後12時間の出来事を把握できる能力」を持つヒカルという2人を軸としたタイムサスペンス。第1期は世界的に高く評価され(おそらく中国発のTVアニメでは過去最高)、日本でも観た人は絶賛ばかりだったようですが、待望の第2期も初回から驚きの展開続きでとんでもなかった。詳細は大きなネタバレになるため避けますが、この春に始まったアニメでも断トツでスリリングで、「手に汗握る」とはこのことかと思い知らされました。リアルに声出たわ……。

『ユーフォ』はTVシリーズ2クール分と映画3本(もしくは映画5本)、『時光代理人』はTVシリーズ1クール分を観ておかないと最新シリーズから入ってもMAXで楽しめないかもしれませんが、急いでそれらを履修して追いつく価値は充分です。

●華麗過ぎる新シーズン開幕『遊☆戯☆王ゴーラッシュ!!』

最後は軽めに。3年目に突入した『遊☆戯☆王ゴーラッシュ!!』は初回からカレーパンとラッシュデュエル! 相変わらずのぶっ飛び具合で、『時光代理人』とはまた違ったベクトルで度肝を抜かれました。

(文=はるのおと)

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