『銀河鉄道999』は鉄郎からイメージ!知られざる人気漫画「「どうやって名付けた?」タイトルの由来

松本零士著『君たちは夢をどうかなえるか』(PHP研究所)

漫画を手に取って、一番初めに目に付くものは“タイトル”である。タイトルは購読の決め手にもなる重要なポイントで、インパクトが強ければそれだけ印象に残るし、不思議な言葉であれば「どういう意味だろう?」と読者の興味をひきつける。

作品の中には、主人公の名前をつけていたり物語のカギとなるキーワードをつけていたりするものもあるが、作家たちはいったいどうやってタイトルを付けているのだろうか。そこで今回は、いくつかの人気漫画をピックアップし、知られざるタイトルの由来を探っていこうと思う。

■小学生ならではの理由?!意外な誕生秘話を持つ『キン肉マン』

『週刊少年ジャンプ』で1979年から連載が始まった『キン肉マン』は、嶋田隆司さんと中井義則さんによる漫画ユニット・ゆでたまごによるプロレス漫画で、二人が小学生の頃に生まれた歴史の古い作品だ。物語を描いたのは当時小学3年生だった嶋田さんで、この時点ですでにコマ割りもある「漫画」として成り立っていたというから驚きである。

そんな『キン肉マン』のタイトルの由来は、2014年に出版された『ゆでたまごのリアル超人伝説』で明かされていた。それによると、当時の二人は「筋肉」の“筋”の漢字が書けないという理由でカタカナを使い、それを正式タイトルに採用したのだとか。

「ゆでたまご」というペンネームも個性的だが、これに関しては嶋田さんは「たまたま食べていたのがゆでたまごだったから」、中井さんは「嶋田氏のおならがゆでたまご臭かったから」と、双方が違う由来を語っている。が、嶋田さんは2006年のインタビューで「相棒の説が正しいかな」と明かしている。

小学生時代に知り合った二人がふと思いついたアイデアが、50年先の未来の読者を夢中にさせ続けているのだ。

■世界観と色のイメージを混じりあわせた『BLEACH』

2001年に始まり、平成の『週刊少年ジャンプ』の看板漫画となった久保帯人さんの漫画『BLEACH』。BLEACHの意味は「漂白」だが、物語の中に「漂白」というワードは出てこない。

このタイトルの由来については、久保さんが2008年12月13日に出演したラジオ番組『ポルノグラフィティ岡野昭仁のオールナイトニッポン』でリスナーから寄せられた質問に答える形で明かしている。

久保さんいわく、死神のイメージカラーは黒だがそれでは安直なので、対極にある白をイメージする言葉の中から、「ブリーチ」という白を強くイメージする言葉を使って黒を引き立てたとのことだ。

また、作中でルキアが「虚を斬るということは罪を洗い流してやること」と言っていたが、罪を洗い流す=漂白というダブルミーニングもあるのかもしれない。

■初期タイトルから変更された名作『幽☆遊☆白書』

1990年にスタートし、『週刊少年ジャンプ』黄金期を支えた冨樫義博さんの名作『幽☆遊☆白書』。冨樫さんは『HUNTER×HUNTER』6巻の中で各漫画のタイトル誕生秘話を明かしているが、タイトルはすんなり決まったわけではなく、企画段階での仮タイトルは『ユーレイ入門』という直球なものだったそうだ。

その後、正式に連載が決まり、のちのち妖怪と戦うことも意識して 『西遊記』をもじった『幽☆遊☆記』の案を出すが、先に同誌で漫☆画太郎さんによる『珍遊記』の連載が決まっていたためボツに。

その時にたまたま浮かんだのが「白書」という言葉で、そこから『幽☆遊☆白書』になったという。本人は「別に〇〇伝でも〇〇物語でもよかった」と語っていて、完全に思いつきだったようだ。

■由来に冨樫さんのお茶目さが隠されている『レベルE』

冨樫さんの作品では、『幽☆遊☆白書』完結後の1995年にスタートした『レベルE』も、『幽白』同様にタイトルが後から決まった作品だ。

『HUNTER×HUNTER』6巻でのタイトル誕生秘話によると、企画時は1話完結型の宇宙人モノにするつもりだったことから、『エイリアン クライシス』と仮題をつけていたのだとか。

しかしストレートすぎると指摘を受け、たまたまそのときに手元にあったレンタルビデオが海外ドラマ『レベル4』だったため、それをもじって『レベルE』にしたそうだ。ただ、「レベルエイリアン」のつもりでつけた「E」に、「エイリアンはAだよ」とさらなるツッコミを受けてしまったという冨樫さん。苦し紛れに「E.Tの方です」と言い逃れをしたという、なんとも個性的でお茶目な由来になっている。

■松本零士さんらしい美しさが詰まった『銀河鉄道999』

最後は、1977年に巨匠・松本零士さんが生み出した『銀河鉄道999』を見ていこう。松本さんは、自身のペンネームはもちろん、タイトルやキャラクターの名前一つ一つに意味を込める。

『銀河鉄道999』もしかりで、2002年に発行された自伝『遠く時の輪の接する処』で、「999は1000に1足りない状態。大人になる一歩手前の鉄郎と重ね、未完成という意味を込めている」と述べていた。

さらに、松本さんはかつて東京新聞の取材に「身の回りのものを質屋に入れ、漫画家になるまで帰らないという気持ちを持って東京行きの片道切符を買った」と語っていた。少年が鉄道に乗って宇宙の冒険に出る『銀河鉄道999』には、一人夢を追って遠い地へ旅だった松本さん自身の決意や希望が投影されているのである。

思いつきのものから深い意味を込めたものまで様々なタイトルの由来があるが、やはり名作はタイトルのインパクトが強く読者の興味をそそる。由来がわかると、よりいっそう作品を楽しめるのではないだろうか。

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