子どもが発する「うんこ ちんちん」、やめさせる? そのままでいい?【ママ泌尿器科医】

引用元:James Woodson/gettyimages

なぜか子どもが好きな言葉「うんこ ちんちん」。耳にしたことがあるよという方は多いのではないでしょうか。今回は、子どもが思わず大声で発したら、「やめなさい」「静かにしなさい」と遮りがちな状況について、ママであり泌尿器科医でもある岡田百合香先生が別の視点でこのことについて考えてみます。「お母さん・お父さんのためのおちんちん講座」ママ泌尿器科医#45です。

あなたは大丈夫? 親が尊重すべき子どもの性的プライバシー【ママ泌尿器科医】

「話したい(言いたい)人」と「聞きたくない人」の権利のバランス

先月、乳児の頃から通っていた保育園を無事卒園した息子。
入園時に担当してくれていた先生から「〇〇くん、入園した時に空を指さして『あお』って言ったんですよ」と教えてもらって、思わず泣きそうになりました。今なら「空が青いね!」と言うでしょう。もちろんそれは嬉しい成長なのですが、空を見上げて「あお」とだけ言う息子にはもう会えないのだという事実が切なくもあったのです。

そんな親の感慨はどこ吹く風で、息子は友達とミニ花束を振り回しながら「うんこちんちん!」を連呼し大はしゃぎ。
「『うんこ』『ちんちん』と子どもが外で言う時に、どう対応したらよいでしょう」
というのは、このくらいの歳の子に対する鉄板お悩み相談テーマです。

一般的には、「うんこ・ちんちんは悪い言葉ではないけれど、性(プライベートゾーン)に関する話は嫌だと感じる人もいるから、外では言わないようにしようね」と伝えるのがよいとされています。

一見問題ない言葉がけに思えますが、私はなんだか腑に落ちず、使ったことはありません。
性の話に限らず、「その話題に対して嫌な気持になる人が(1人でも)いるなら、その話をしない」というのは正しい対応なのでしょうか。
子どもに関する日常的な話題も、その場に婚活がうまくいっていない人や不妊治療中の人がいたら、「嫌な気持ち」にさせる可能性があります。
合格発表で「やったー!!」と喜びを表現する言葉だって、不合格の人にとっては「聞きたくない」かもしれません。

「話したい(言いたい)人」と「聞きたくない人」の権利のバランスは実はものすごく奥が深くて、大人も試行錯誤しているような状況です。
「聞きたくない人がいたら、その話はすべきじゃない」と単純化して子どもに伝えることに私は抵抗を感じます。

例えば、病院は体調が悪い人が多く利用する場所であるため、「大きな声でおしゃべりしたい人」と「静かな空間で安静にしたい人」の権利のバランスでいえば後者が優先されるのは妥当でしょう。
「うんこちんちん!」であろうが「ママだいすき!」であろうが、声のボリュームが問題となるような場合はその点を指摘すればよいのです。

「うんこちんちん」は無理にやめさせなくてもよい?!

では、明確に「うんこちんちん」の話をすべきでないのはどのようなシーンでしょうか。
ひとつは食事中でしょう。排泄物を連想させる言葉を食事中に発するのはマナー違反です。
「何かを食べているときは、それをイメージして食事がまずくなってしまうから、食事中はうんこやおしっこの話はやめようね」と伝えればよいですね。
また、だれかをからかうためや、意図的に不快な思いをさせようと「うんこちんちん」を使う場合は介入が必要です。性や排泄の言葉に限らず、人を傷つけ、リスペクトを欠く言葉の使い方として子どもと考えるきっかけにできると思います。

スウェーデンで保育士をしている知人にこの話題について尋ねたところ、「日本の子と同じように、男女問わずよく言うよ」「他人を不快にさせようと意図してやっている時は声をかけるけれど、そうではない時は特に注意しない」とのことでした。

日本では問題の本質を考える以前に「保護者としてやめさせなければいけない」「しつけができていないと思われそう」というプレシャーが先行している印象があります。
・自分たちは楽しくても、嫌だと感じる人もいるかもしれないという想像力を持つこと。
・「話したい人」と「聞きたくない人」のバランスを取るのは大人でも難しいこと。
・「やめて」と言われた場合にはすぐにやめること。

このあたりのポイントを子どもに伝えつつ、明らかに不快そうな人ややめてほしそうな人がいなければ見守ってもよいのではないでしょうか。
もちろん、公園や子育て関連施設といった子どもウエルカムな空間なのか、子どもに不寛容な人も少なからず含まれる空間なのかによって多少対応は変わってくるかもしれません。
それでも、「うんこちんちん」は無理にやめさせなくてもよいという認識を保護者間で共有できるだけでストレスはずいぶん軽減される気がします。

文・監修/岡田百合香先生、構成/たまひよONLINE編集部

●記事の内容は2024年4月の情報で、現在と異なる場合があります。

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