BESPER、佐野諒太ら5組が集結 USEN主催の新人発掘ライブ『導 -SHIRUBE- Vol.0』レポート

新人アーティストを発掘する『MUSIC NEXUS Presents Live 導 -SHIRUBE- Vol.0』が3月12日にTOKIO TOKYOで開催された。本ライブには「数年後の音楽シーンで活躍が期待される若きアーティスト」が5組登場。多種多様なアーティストが登場したライブの様子をレポートする。

最初に登場したのはBESPER。ボーカル・ギター・ベース・ドラム・キーボード、そしてサックスによる6人編成のバンド。TOKIO TOKYOの舞台に立つのは初のワンマンライブ以来だという。

ステージにメンバーが揃うと、SHINJIRO(Vo)が軽快なリズムに合わせて身体を揺らしながら「まずはみんなでドライブしよう」と声をかけ、1曲目の「Secret Path」へ。夜の高速道路を連想させるこの曲は、BESPERが持つ都会的な雰囲気を体現しているといえるだろう。6人が目を合わせながら楽しんでいる様子からは、ステージを楽しむ余裕が感じられた。

続いての曲は、70’s~80’sを思わせるノスタルジックな雰囲気の「Flight Time」。6ピースバンドなだけあり、音の重厚感が段違いだ。また、ギターやサックス、キーボードのソロパートも曲中で良いスパイスになっている。特に、ゆったりとしたメロディを一瞬切り裂くようなキレのあるサックスのソロが印象的だった。

その後のMCではライブを主催したUSENにちなんで、飲食店の有線放送にまつわる自身のエピソードを披露するなど、SHINJIRO・ARARIKU(Gt)を中心にテンポの良いトークで観客を和ませた。

最後は1st EP『Night Fall』収録曲「Ours」。これまでのしっとりとしたムードから一転、アップテンポな曲となっている。「楽しもう」と声をかけ、観客も一体となって手拍子をする様子も。軽やかな中にもグルーヴ感があり、BESPERならではの魅力が存分に発揮されたステージとなった。

2組目に登場した佐野諒太は、YouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」の一発撮りオーディションプログラム『THE FIRST TAKE STAGE』でセミファイナリストに選ばれた経歴を持つシンガーソングライター。

この日は1年半ぶりのライブということで、初めは少し緊張している様子だったが、1曲目の「驚き舞うセカイ」を歌い始めると、すぐにその歌声で会場の雰囲気を自分のものに。耳にスッと入ってくる優しい歌声が非常に心地よい。

続いて披露したのは、まさにこのライブの開催日である3月12日に各種ストリーミングサービスでリリースした新曲「おもひで」。春にぴったりのほろ苦い曲だ。この日はあいにくの雨だったが、春の日差しのようなやわらかさの中に鋭さが光る高音で観客を魅了した。

最後の曲は『THE FIRST TAKE STAGE』でもパフォーマンスした「信号機」。人生の歩みを信号機に例えたこの曲は、立ち止まったときにそっと背中を推してくれるようなあたたかい曲である。観客はうっとりとした表情で、透明感のある歌声に聞き入っていた。

MCではあまり多くを語らなかったが、時折見せる笑顔が彼の飾らない人柄を象徴していた。

3組目に登場したのは、“心”にフォーカスした繊細な歌詞と透き通った歌声が魅力のシンガーソングライター、灯橙あか。自身の名前を覚えて帰ってもらうため、ステージではいつも赤色の服を着るようにしているという。この日も、赤い花が描かれたニットと真っ赤なパンツでステージに姿を現した。

観客席を端から端まで見渡し、深く一礼してから、1曲目「ここでしか泣かない」がスタート。サビの〈ここでしか泣かない〉というフレーズはとても力強く、目に力がこもっているのが見て取れる。かすれ声で〈解放のメロディ〉と歌う様子は、先ほどまでやわらかな雰囲気で話していた女の子とまるで別人のようだ。

2曲目は失恋をテーマにした「煙草とオレンジ」。歌い始める前には「失恋ソング、大の得意です!」と笑顔で話す様子が見られた。一つひとつの言葉に感情を込め、丁寧に歌い上げる。その表現力は圧巻だ。〈どんどん君の嫌いな女になってくよ〉と、物わかりの良い女でいられなくなってしまう葛藤が痛いほど感じられた。

MCでは「自分で作った曲がみんなに放たれる瞬間が一番好きです。生きがい」と話し、制作活動への意欲を見せた。また「ずっと立ってて疲れてないですか?」とたびたび観客を気遣うなど、あたたかい人間性が垣間見える部分もあった。

最後は3月13日リリースの最新曲「今日の私が一番綺麗」を披露。自分の人生を肯定してくれるようなメッセージ性のある歌詞に勇気をもらうことができる。観客は彼女のまっすぐな歌声に引き込まれた。

4組目にはどこか懐かしいメロディが特徴のシンガーソングライター・LUKAが登場。昨年5月にデジタル配信開始された1stシングル表題曲「愛まかせ」はSpotify公式プレイリスト「キラキラポップジャパン」に選出されるなど、注目を集めている。

パフォーマンスはドラムの4つ打ちを皮切りに、まさにその「愛まかせ」からスタート。見ているこちらが笑顔になってしまうほど、弾けんばかりの笑顔が印象的だ。「みなさん手拍子お願いします!」と観客を巻き込んでパフォーマンスを楽しんでいる様子も時折見せながら、つい口ずさんでしまうキャッチーなサビと、明るくハリのある歌声で観客の心を掴んだ。

曲が終わると「緊張していました、皆さんがあたたかくて楽しいです!」と感想を述べると、コンビニにいた知らないおばあさんに歌手として成功できるかを急に占われるといったまさかのエピソードトークを展開。「今日はポジティブなエネルギーを持ち帰ってもらえると嬉しいです!」の一言でMCを締めくくった。

2曲目には未発表の新曲「レトロブルー」を披露。ブルーの照明の下、会場全体にノスタルジックな雰囲気が漂う。ほろ苦く、消えない過去を思い出してしまうこの曲は多くの観客の心に刺さったことだろう。

最後は今年2月14日にリリースした「アイランド」を歌唱。暗闇の中、突如ドラムにスポットが当たり、曲がスタート。LUKA自身が80’s~90’sの音楽を聞いて育ってきたと話しているように、メロディからどことなく全盛期のJ-POPを感じる。疾走感のある爽やかな1曲でステージを締めた。

ライブの最後を飾ったのは、リアリティのある歌詞で同年代の女性から大きな支持を集める浜野はるき。昨年11月にリリースした「ギジコイ」は、先行公開したサビのみの動画がSNSで総再生回数1000万回を突破し、話題となった。

歓楽街を彷彿とさせるピンク色の照明に照らされながら、最初に披露したのは「中洲ロンリーナイト」。少し鼻にかかった甘い歌声が印象的だ。〈別にいいよ 男に好かれた方が楽だし〉という女性のリアルな感情を表現するように、切ない表情でしっとりと歌い上げた。

続く2曲目には「最低な君」を披露。この曲は、浮気された女性が傷つきながらも前に進もうとする様子を歌った一曲だ。歌詞に合わせて変化する声色や表情に、観客は恍惚とした。

続いて、SNSで話題沸騰中の「ギジコイ」をパフォーマンス。aespa・ジゼルがこの曲に合わせて踊る動画をTikTokに投稿したことでも話題となった。好きな人の“Officialになりたい”けれども“いわゆるそういう位置”になってしまう女性の苦しさを見事に表現した。ところどころ、歌詞に合わせてキュートなしぐさをする様子もみられた。

最後は学生に向けた一曲として、2年前に福岡から上京した自身の経験をもとにした「Tokyo」を歌い上げた。夢への希望と覚悟、そして母親への感謝が綴られたこの曲は、新たなステージに進む学生たちの心に響いたことだろう。

こうして、新進気鋭のアーティスト5組による計2時間半の公演が終了した。

本ライブでは弾き語りやバンドなど複数のスタイルのパフォーマンスを見ることができたため、アーティストが持つ個性がより際立っていたように感じる。「楽曲がSNSでバズり、一夜にして名が知れ渡る」という出来事が起きる時代ではあるが、こうして新進気鋭のアーティストをライブを通して発見する魅力を改めて感じることのできる一夜だった。この日の『MUSIC NEXUS Presents Live 導 -SHIRUBE- Vol.0』から、今後の音楽シーンを“導く”新たなアーティストが生まれることに期待したい。

(文=星野桃子)

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