キオクシア、上場案を銀行に提示 2年連続赤字で財務条項抵触=関係者

Miho Uranaka

[東京 16日 ロイター] - 半導体メモリー大手のキオクシアホールディングスが融資条件に抵触し、財務基盤を強化するため新規株式公開による公募増資案を銀行団に伝えたことが分かった。6月に返済期限を迎える約9000億円の融資借り換えを目指す。

事情を知る関係者が明らかにするとともに、ロイターが業績見通しなどの計画を確認した。

同関係者によると、キオクシアは2024年3月期業績が2年連続で最終赤字になる見通し。純資産が融資の財務制限条項(コベナンツ)で定めた約5000億円を下回る見込みで、銀行団はキオクシアと株主の米投資会社ベインキャピタルに資本増強計画の策定を求めていた。両社は15日に銀行団と協議し、株式上場で公募増資する方針を示した。

パソコンやスマートフォン需要の低迷で落ち込んでいたメモリー市況と自社の業績が回復傾向にあることから、株式公開が可能と考えたとみられる。ロイターが確認したキオクシアの業績見通しによると、25年3月期の最終損益は1300億円程度の黒字転換を見込む。

同関係者は「リファイナンス(借り換え)までに上場できるわけではないので、上場に足る事業計画を作れるかどうかがポイントだ」と語った。キオクシアは2020年にも上場計画を進めたが、市況の悪化などにより直前で延期した。

キオクシア、みずほ銀行、三菱UFJ銀行はロイターの取材にコメントを控えた。三井住友銀行、ベインのコメントは現時点で得られていない。

キオクシアを巡っては、同業の米ウエスタンデジタル(WD)との間で進めていた統合協議が昨年秋に頓挫した経緯がある。銀行団はWDとの統合を条件に、約1兆9000億円を融資することを確約していた。

同関係者とロイターが確認した計画によると、銀行団は6月の借り換えに当たっても将来的なWDとの統合に道筋をつけることを求めている。

(浦中美穂 取材協力:山崎牧子、白木真紀 編集:久保信博)

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