初日から「政治とカネ」舌戦 自民、政策の訴えに注力 立民、自公政権批判を展開 衆院補選 島根1区

候補者の第一声に耳を傾ける有権者=松江市内

 島根1区は、自民党新人で元中国財務局長の錦織功政候補(55)=公明推薦=、立憲民主党の亀井亜紀子候補(58)の2人が立候補。自民派閥の政治資金パーティー裏金事件による「政治とカネ」の問題が最大の争点になる中、逆風を受ける自民は国会議員らが謝罪して候補者は政策に力点を置くのに対し、立民は裏金事件で攻勢をかけ、政策面でも自公政権批判を展開。初日から舌戦が過熱した。

 「まず始めにおわび申し上げねばなりません」―。自民の党幹部や国会議員は異口同音に裏金事件の謝罪を繰り返した。錦織候補の第一声で青木一彦参院議員(鳥取・島根合区選挙区)は「ゼロから出直す覚悟を持って『政治とカネ』の問題にしっかりと取り組む」と強調。小渕優子選挙対策委員長は第一声や約400人が集まった出雲市平田町内で「大変な政治不信を招いた。一人一人が襟を正す」と頭を下げた。

 本来は島根1区の議席を守ってきた細田博之前衆院議長の「弔い合戦」になるはずだが、裏金事件で批判の的となった安倍派の会長を務めるなど「細田」の看板が重荷になり、錦織候補は細田氏の名前を11カ所の街頭演説で一度も出さず、政策の訴えに力を入れる。

 告示前の演説に比べて早い段階で政策を語り、社会インフラ整備や農林水産業の振興などに取り組むと強調。人口減少の抑制に向けて「若い子育て世代にとっては子を産み育て、教育する。このサービスが地域でも十分に確保されなくてはならない」と訴えた。

 対する亀井候補の陣営は裏金事件や自公政権に批判の矛先を向けた。

 第一声の応援で立民の辻元清美代表代行は裏金事件に触れ、「利権まみれ、一部の人だけを向いた政治を変えたい。島根の皆さんの一票で岸田政権への処分、けじめをしっかりつけよう」と気勢を上げた。

 福山哲郎元幹事長も「いまだに裏金事件の内容が明らかにならず、処分もよく分からない」と批判。さらに、森友・加計学園問題や世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係など自民政権で浮上した問題に言及し、細田氏に対しては「残念ながら晩年に旧統一教会や裏金の問題が出た。島根1区に新しい時代をつくる時期が来たのではないか」と語気を強めた。

 人口減少対策を巡り、亀井氏は地方の医療や介護、公共交通などで起きている人手不足に触れ、「この状況をつくったのは自公政権だ」と指摘。松江、安来両市内で街頭演説を重ね、安倍政権の経済政策「アベノミクス」による円安が物価高騰の要因になっていると批判した。

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