【夫婦】夫に多額の借金が発覚!見捨てられず、肩代わりし続けた妻の末路

行政書士、ファイナンシャルプランナーとして夫婦の悩み相談にのっている筆者。身の丈にあわない借金やギャンブル、投資をする人を目にすることは珍しくありません。

この手のトラブルメーカーが家族にいると厄介です。他人ではなく家族なのでそう簡単に見捨てることはできず、借金を肩代わりしたりして更生の機会を与えてしまうからです。

そして立て替えた金額がかなりの数字になった段階で「とんでもないことになってしまった」と悟るのですが、身近にこのような人間がいる場合、どのように対処すれば良いのでしょうか。

夫が多額の借金を抱えていることを知った辻本奈央さん(36歳/仮名)のケースをご紹介します。

夫の手取りは月18万円…フリマアプリでやりくりする妻

夫(38歳)の手取りは毎月18万円程度。決して十分な金額ではなく、限られた収入のなかでやりくりしなければなりません。そのため、奈央さんは家計のために出費を切り詰めるしかありませんでした。

何を買うにしても前もってネットで値段を確認するのが基本。中古品をいとわないので最安値がメルカリやヤフオクなら躊躇せずに利用します。日用品についてはコンビニを利用しません。スーパーで買うのが基本で、スーパーでもなるべく安いところを探します。

このように奈央さんは健気に家計を支えていたのですが、一方の夫はどうでしょうか?

奈央さんは夫の印象をこう振り返ります。「付き合っているときは違いました。一人暮らしのときから家計簿をつけているし、遅い時間まで仕事を頑張っているし、こまめに連絡をくれるし、とても真面目で誠実な人でした」と。

しかし、結婚してから印象は一変。休日になると無断で家を出て、夜中まで帰ってこない日が続いたのです。朝から晩までパチンコ店にいたようなのです。もちろん、小遣いの範囲で遊ぶなら問題ありませんが、超えてはいけない一線を超えていました。

夫は今までの負けを取り返すため、カードローンに手を出したのです。しかし、負けを取り返すどころか、負債はますます膨らむばかり。結局ローンが20万円に達した時点で奈央さんに見つかり、「こんなはずじゃなかったんだ」と謝罪したのです。

奈央さんが独身時代の貯金でローンを完済し、事なきを得たのですが、夫の借金はこれで終わりませんでした。

次に夫が手を出したのは…

次に夫が手を出したのはFX。これは外国為替取引の一種で、ネット専業の証券会社にとって主力商品です。一介のサラリーマンである夫が上手に運用できるわけもなく、資産はあっという間に目減りしました。もちろん、手持ちの資金を投資するだけでは損失が大きく広がりません。

しかし、夫は信用取引(証券会社からお金を借りて投資すること)に手を広げたので墓穴を掘りました。信用取引の残高はみるみる増えていき、100万円になった段階で奈央さんに発見されたのです。なぜ、夫は資産を増やす必要があったのでしょうか。

夫は「仕事の付き合いだから」と言いますが、後輩と飲みに行ったとき、お金が入ると気が大きくなるようで、10~20人の飲み会の会費をすべておごってしまうことが続いたそうです。

そのうち、今度は夫の両親が訪ねてきて「うちのアホ息子を捨てないでください。私たちに免じて今回は許してください。」と頭を下げ、100万円を用立てることを約束したそう。そして夫自身も「俺は生まれ変わった。同じことは二度としない」としおらしい態度をとったので、奈央さんも怒りの気持ちをおさめたのです。

しかし、夫がおとなしかったのも半年だけ。ほとぼりが冷めると元の木阿弥。また散財するようになったのです。「仕事の付き合いでゴルフに行かなきゃいけなかった」と言いますが、夫は知らぬ間にゴルフバッグやドライバーなどの一式を購入していました。奈央さんがそのことに気付かなかったのは、夫がトランクルームを借り、そこに置いていたからです。

もちろん、夫にはゴルフ用品の購入費、ゴルフ場の利用料、交通費などを支払うお金はありません。消費者金融でお金を借り、仮想通貨で運用しようとしたのですが、連敗続きで元本割れの状態。借金の返済が遅れるたびに金利や遅延損害金が上乗せされ、どんどん膨れ上がったのです。

もともと夫は家に毎月15万円の生活費を入れていたのですが、毎月勝手に減らされ、奈央さんは実家に相談。不足分を両親に借りるしかなかったようです。実家からの援助は合わせて50万円。どうしたらいいか分からず、筆者のところへ相談しに来たのです。

肩代わりした借金が多いほど離婚しにくくなるジレンマ

今まで夫は何度も金銭トラブルを起こしていたにもかかわらず、なぜ奈央さんは途中で離婚を決断できなかったのでしょうか。

サンクコストという言葉があります。これは今すぐにやめても回収できないコスト(お金、時間、労力など)のことです。

奈央さんはこれまで20万円の自分の貯金と、50万円の実家からの援助を費やしてきました。離婚したとしても夫から計70万円を回収するのは難しいでしょう。夫が少しでも立ち直る可能性があるのなら結婚生活を続けた方がいい。70万円を無駄にしたくないという心理が働きます。これだけ仕送りをしたのに離婚したら両親に何を言われるか分かりません。

しかし、これ以上結婚生活を続けた場合、夫の借金は増え、そのたびに奈央さんが穴埋めしなければなりません。筆者は「サンクコストを忘れ、今後の人生をどうしたいですか?」と尋ねたところ、奈央さんは「それなら別れたいです」と答えました。

さすがの夫も「借金は今回で最後にするから」と言えず、すんなり離婚届に署名したようです。どこかで損切りをしなければならないのなら早い方が望ましいです。

夫にとって奈央さんは「打出の小槌」のような存在でしたが、奈央さんはようやくそこから抜け出すことができたのです。

(ハピママ*/ 露木 幸彦)

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