石川の関取、感謝の土俵 復興願い勧進大相撲

ファンとの写真撮影に応じる遠藤=東京・両国国技館

  ●大の里にファン殺到

 相撲の聖地・両国国技館が復興を願う気持ちで一つになった。16日、東京・両国国技館で開催された勧進大相撲。現役力士やOB、親方衆らが総出でファンサービスを繰り広げた。石川県出身の関取4人衆は被災地を思う来場者に感謝を込めて土俵に上がり、「勝つことが地元の元気になる」と5月の夏場所に向けて意気込みを新たにした。

 午後0時40分、開場を知らせる触れ太鼓が打ち鳴らされると、ファンが一斉に国技館に流れ込んだ。ボランティアで参加した関取衆らは会場の至る所で写真撮影やサインに応じた。

 「石川から来たよ」「次は優勝してね」。こう声を掛けられていたのは、春場所で優勝争いを演じ、人気が急上昇した大の里(津幡町出身)。老若男女のファンに囲まれ、身動きが取れなくなっても笑顔を絶やさなかった。

 大の里は「祖父もまだ避難所で生活しているし、本場所で勝つことが一番の元気を届けることだと思う。夏場所に向けて頑張りたい」と気合を入れ直した。

  ●遠藤「気持ち伝わる」

 地震で大きな被害を受けた穴水町出身の遠藤は、同町の実家から見える「ボラ待ち櫓(やぐら)」の化粧まわしを着用して土俵入りした。「能登から来たよという声もいただいた」と多数の来場に感謝した。

 支援の輪の広がりについては「復興には時間がかかるが、皆さん前向きに元の日常に戻ろうという気持ちが伝わってきている」と語った。

  ●輝、歌声で沸かす

 七尾市出身の輝は歌声でファンを楽しませた。のど自慢コーナーで土俵に立つと、福山雅治さんの「家族になろうよ」を熱唱。これまで恥ずかしさから人前で歌うことを極力避けてきたが、被災地のためにとマイクを握った。夏場所に向けては「真っ向勝負、正々堂々の相撲を取っていく」と宣言した。

  ●欧勝海豪快つり出し

 欧勝海(津幡町出身)は幕内取組で、豪快に妙義龍をつり出して力強さを見せつけた。避難生活をしていた祖母は能登町に戻って生活を始めたといい、「勝ってふるさとに恩返しする」と決意を込めた。

 取組では、大鳴戸親方(元大関出島)と竹縄親方(元関脇栃乃洋)の幼なじみ2人が審判を務めた。物言いをつける場面もあり、息の合ったやりとりで会場を沸かせた。櫓太鼓の打ち分け実演では金沢市出身の十両格呼び出し、啓輔(本名・中野大輔)が華麗なばちさばきを披露した。

ファンとの写真撮影に応じる大の里=東京・両国国技館
力強い相撲で会場を沸かせた欧勝海(右)

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