電子通貨、運用開始 日立市 茨城県内初 地域活動でコイン獲得

カフェの店先に掲示されたQRコードでチェックインし、コインを獲得する利用者=日立市旭町

地域活動の活性化に向けて茨城県日立市は16日、スマートフォンのアプリを使った「電子地域通貨」の運用を始めた。通貨の単位は「タッチ」とし、通貨をやりとりできる場所として公共施設や飲食店など100カ所以上が登録。地域での手伝いなどに参加することで「コイン」を獲得できる仕組みで、県内自治体では初の試みとなる。

導入したのは地域通貨アプリ「まちのコイン」。通貨名「タッチ」は、自治体名と、多くの人が触れ合うことができるまちをイメージした。

市内にはおおむね小学校区単位に23の自治組織「コミュニティ」があるが、近年は高齢化や担い手不足といった課題に直面している。このため、市は若者や子育て世代が地域活動に参加するきっかけづくりとして地域通貨の導入を決めた。

コインは、「スポット」となっている公共施設や店舗に行ったり、地域の清掃活動やイベントの準備などを手伝ったりすると、主催者側が用意したQRコードを介して獲得できる。有効期限は90日で、円に換金はできない。

交流センターを拠点にするコミュニティは、コインが獲得できる活動として、花壇の手入れや除草作業への参加のほか、「SNS(交流サイト)をフォロー」「子ども服を寄付してくれたら」などと設定している。

ためたコインは、店舗や施設が提供する、お金では買えない特別な体験と交換できる。内容はスポット側が複数作成でき、コミュニティでは「花火大会での優待席」や「まつりでアナウンス体験」「5分、悩みや愚痴を聞く」などの体験を用意した。

店舗でも、人気店で特等席に優先的に座れたり、好みのカクテルを頼めたりする権利のほか、「じゃんけんに勝ったら唐揚げ一つ追加」など、人とのつながりが生まれる体験が設定されている。

市は同日、運用開始に合わせてJR日立駅で街頭キャンペーンを開催。協力するとコインを獲得できる体験とし、茨城大の学生や会社員の計5人が参加した。PRに一役買った学生らはそれぞれ250タッチを獲得し、茨城大大学院生の田沢諒平さん(23)は「スマホで簡単にできるので取り入れやすい」と笑顔。同、沢田篤彦さん(24)も「面白そうな特別な体験がそろっていて楽しそう」と語った。

同日時点で「タッチ」の利用者は約1100人、スポットは102カ所。アプリで登録すれば無料で使える。市コミュニティ推進課は「スポットをさらに増やして集めたくなるコインにすることで、コミュニティ活動の参加促進につなげていきたい」としている。

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