【4月17日付編集日記】学び直し

 まっさらな教科書や専門書を傍らに、一言一句を聞き漏らすまいと耳を澄ませる。新年度に入ったばかりの教室は、こんな雰囲気だろうか。この時期になると、自身の学生時代を省みて、限りある時間をどうか、大切に使ってほしいと願いたくなる

 ▼いまならできるはずもない話だろうが、友人に頼んで講義の出席カードを代わりに提出してもらうことがあった。講義より大事な用事があったかといえば、そんなこともない。一夜漬けで詰め込んだ知識など身に付くわけもなかった

 ▼「万能の天才」とも称されるレオナルド・ダビンチが、後の世の甘ったれた学生を見通してか、こんな言葉を残している。「食欲なくして食べることが健康に害あるごとく、欲望を伴わぬ勉強は記憶をそこない、記憶したことを保存しない」

 ▼県内で初めての公立夜間中学がきのう、福島市に開校した。さまざまな年代の人が入学し、外国籍の生徒もいる。週5日間の授業で、公立中学と同じ教科を学ぶことができる

 ▼学び直したい、夢を見つけたい―。はっきりとした動機や意欲を持って通い始めた人たちに、ダビンチの警句は無用だろう。深い学びは血となり肉となり、充実した人生を歩む原動力になる。

© 福島民友新聞株式会社