緒方太郎アナ、中テレ退職→新天地・熊本へ 「福島との架け橋に」

フリーアナウンサーに転身し、熊本県民テレビの夕方情報番組に出演する緒方さん。災害の教訓を伝えながら「福島と熊本の架け橋になる」と決意を込める

 福島中央テレビの夕方情報番組「ゴジてれChu!」で2022年までキャスターを務めた緒方太郎さん(37)が今春、フリーアナウンサーに転身し、熊本県民テレビで夕方情報番組のメインキャスターに就いた。東日本大震災と熊本地震という国内災害史に刻まれる被災地として、福島県とのつながりがある熊本県での再スタート。「福島と熊本の架け橋になる」との言葉には熱い思いが宿る。

 16年に最大震度7を2度観測した熊本地震から16日で丸8年を迎えた熊本県。「伝えるべきことは現場にしかない」。緒方さんは同県南阿蘇村などを取材する中でそう強く感じたという。全国で自然災害が頻発・激甚化する中、被災地の現状を伝え続けることは、将来の災害への備えや教訓になり得ると考えるからだ。

 中テレを退職後、一時はネットメディアの世界に身を置いた。リアルタイムに情報が飛び交う中、ユーザーがどのような情報に興味があるのかなどを考える感覚を磨いた。本県を含め、全国各地の「今」を発信するため、フリーアナウンサーの立場を選んだ。

 熊本地震後に現地を取材したことなどが縁で熊本県への移住を決断したが、本県との縁は決して切れることはない。今春には「東日本大震災・原子力災害伝承館」(双葉町)の客員研究員に委嘱された。研究のテーマは、「大規模災害時の情報発信」。地震発生時に各社のアナウンサーらは最大限の警戒を呼びかけるが、「その呼びかけの検証ができていない」と指摘。「どういう呼びかけが、本当に住民が『自分ごと』として行動することにつながるのか」と研究員活動にも意欲を燃やす。

 「福島への恩返しはまだまだ終わっていない」。緒方さんが「ゴジてれChu!」最後の出演で発した言葉だ。原発の廃炉に伴う高レベルの放射性廃棄物や、中間貯蔵施設(大熊町、双葉町)からの県外最終処分など、本県復興への課題はいまだ山積する。これらを「福島だけの問題には決してしたくない」と緒方さん。千キロ以上離れても、心は福島に寄り添っている。

© 福島民友新聞株式会社