【漫画】“オタクの祭典”コミケで経済がわかる? お金について学べるSNS漫画に大反響

普段興味を持ちづらい難解な話題でも、漫画/物語として展開されれば考えるきっかけになることがある。3月中旬にXに投稿され、現在までに1.3万いいねを数えるオリジナル漫画『コミケで分かるお金の話』では、コミックマーケットを導入として“お金”についてわかりやすく解説された作品だ。

本作を手掛けたのは、漫画制作は趣味として続けているものの、そこにかける思いは人一倍強いと語るMihanaさん(@mihana07)。お金の在り方について考えるキッカケを与えてくれる本作がどのようにして描かれたのかなど話を聞いた。(望月悠木)

■バッシングはもうへっちゃら

――Mihanaさんは『コミケで分かるお金の話』同様、『日本経済を解説するヤンキー』『資本主義と戦うギャル』など経済についての漫画を多く手掛けています。

Mihana:もともと「国の借金ってなに?」「そもそもお金ってなんだろう?」といった経済学や社会学に対する関心を持ち、それで勉強を進める中で「お金や経済に関する疑問を漫画で表現できないか?」と思ったことがキッカケです。加えて、政治経済に苦手意識を感じる人、政治経済をタブー視する人が少なくありませんが、「こういった意識や空気感を変えたい」ということも動機の1つになっています。

――とはいえ、政治経済をテーマにした漫画を投稿すると、厳しい目にも晒されそうです。

Mihana:バッシングする人は毎回バッシングしてくるので、ある意味“何を言われてもへっちゃら”の域に達しました(笑)。特に『資本主義と戦うギャル』の第1話を発表した時のバッシングはすさまじかったです。「資本主義を否定するなら代案を出せ」「抽象論」「共産主義者」などなど、いろいろなバッシングが寄せられたので、時間がある時にでも検索してみてください。

――最初はバッシングで凹むことも少なくなかったのでは?

Mihana:『資本主義と戦うギャル』では、国民ではなく株主を優先した政策ばかりを実施する“株主至上主義”を批判的に取り上げたのですが、バッシングの多さに「こんなに共感してくれる人が少ないの?」と落ち込みました。その一方で、ポジティブなコメントをくれる人も少なくなく、本当に励まされました。中でも、教育に関わる人からいただいた「正しい国家感、経済感で社会が回るように私も教育の現場からこのことを堂々と訴えていきたいとあらためて思いました」というコメントにはとても救われました。

■「日本円が紙くずになる!」とは

――改めて今回『コミケで分かるお金の話』を制作した経緯は?

Mihana:本作は2022年ごろに制作した漫画です。当時は円安が話題になりつつあるタイミングで「日本円が紙くずになる!」といった主張をよく見かけ、「日本円が本当に紙くずになる状況って、どういう状況なんだろう?」ということをテーマにして漫画を描こうと思いました。

私はズバリ、「日本円が紙くずになる!」とは、「日本円でモノやサービスが何も買えなくなる瞬間」と思っています。作中によしこが「今日のコミケでサークル参加者がいなかったらどう?」と問いかけ、「参加者はこの“円”という紙切れをただ握りしめて無人の空間に立ち尽くすしかない」と自答するシーンがあります。「日本円が紙くずになる!」ということがどういう状況なのかを答えつつ、何かを作ってくれる人への感謝や尊敬を伝えられれば、という思いで作成しました。

――“お金の在り方”がとてもわかりやすく描かれていました。

Mihana:専門用語を使わず、できるだけ簡単な言葉を使うようにこだわりました。また、居酒屋のツケ払いなど例示をたくさん入れて、“お金の在り方”についてイメージを掴んでもらえるように注力したことが良かったのかもしれません。ちなみに、『日本経済を解説するヤンキー』第2話で、お金についてより深く説明しているため、良かったら読んでみてください。

■消費者であり生産者だからこそ

――“お金の在り方”がわかるだけではなく、あらゆる生産者に感謝したくなる素敵な内容でしたね。

Mihana:私自身、長年二次創作を続けてきた普通のオタクですが、好きになる作品やカップリングがいつもマイナーで、供給してくださる制作者(生産者)に日々感謝しています。それと同時に、マイナー、ニッチなものが好きに創作者でもありますので、「Mihanaさんの作品がすごく好きです!」と応援してくれる人には、本当に励まされていました。

私は「同人活動って絶対に作り手だけでは回らない」と考えており、「応援する消費者も大事!」というメッセージを込めています。感謝の気持ちが生産者に伝わり、素敵なモノやサービスを社会に提供する。「そんな“感謝で回っていくあたたかい社会”を実現できたら良いな」と私自身常に思っており、漫画の後半部分もそのことをぜひ噛みしめて読んでもらえると嬉しいです。

――最後に漫画制作における目標など教えてください。

Mihana:今までは『日本経済を解説するヤンキー』『資本主義と戦うギャル』など、経済やお金の解説漫画をメインに活動していました。今後は1人の漫画家として表現力をもっと磨くためにも、経済だけではなく社会の本質的な問題や人間の欲望などに焦点をあてた漫画を描いていきたいと思っています。もちろん、「日本経済を解説するヤンキー」や「資本主義と戦うギャルの漫画」もまだまだ描きたいネタがあるので不定期に更新したいです。

――Mihanaさんの作品を待っている人も多いですが、今報告できることなどはありますか?

Mihana:ビル・ミッチェル経済学教授が原作を考えている漫画シリーズ『スミス一家とお金の冒険(The Smith Family and its Adventure with Money)』が5月24日からシーズン2が開始します。ミッチェル教授曰く、シーズン2でスミス一家に苦難が待ち受けるみたいなので、私自身も制作を始めるのがとても楽しみです。また、4月15日からは『News Picks』のトピックスを開設しましたので、こちらでも面白い発信をできたらと思っているのでフォローしてみてください!

(望月悠木)

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