健康診断を受けていても人間ドックを受けるべきたった1つの理由

人間ドックは検査項目が多い(C)日刊ゲンダイ

健康診断は、会社員であれば年1回受けることが法律で義務付けられているので、基本的に全額会社負担。会社員でなくても、年1回の特定健診はだいたい数百円で受けられる。そう考えると人間ドックは出費が大きいわけだが、受ける必要ある?

健康診断、特定健診、人間ドックはいずれも、健康な人が本当に健康なのかを調べるのが目的だ。生活習慣病やがんは早期では自覚症状がないと言っても過言ではない。それらの「芽」を早くに見つける。医療の進歩によって、がんであっても早期に発見し治療をすれば、完治できる可能性が高くなってきた。

「健康診断と人間ドックの一番の違いは、検査項目数です。人間ドックは健診と比較し、検査項目数が多い」

こう言うのは、中部国際医療センター・健康管理センターの秋松伸岳さん。検査項目数が多い、つまり細かく調べられ、将来的に病気にかかるリスクをチェックできるということ。

例えば日本における中途失明原因の第1位、緑内障。日本緑内障学会が行った大規模な疫学調査「多治見スタディー」では、40歳以上の20人に1人が緑内障との結果が出たが、全体の89.5%が未発見だった。

「健診では視力検査はあっても、緑内障を調べる眼底、眼圧検査は行われません。一方、一般的な人間ドックでは検査項目に含まれています」(秋松さん=以下同)

緑内障は視野が欠けていく病気で、視力は落ちるわけではないので、視力検査では見つけられない。なお、中年以降で増える目の病気、白内障は手術で視力を取り戻せるが、緑内障は失った視力を取り戻せない。

「生活習慣病やがんは30代くらいから増えてきます。そのあたりから人間ドックを検討するといいでしょう。特に喫煙者、肥満、家系に糖尿病、高血圧、脂質異常症といった生活習慣病患者あるいはがん患者がいる方は、より積極的に検討した方がいい」

■オプションで追加したい項目

年代や条件でリスクが高い病気が異なる。それを調べる検査項目が含まれているかを確認し、なければオプションで追加する手もある。一例を挙げると、50代以上の男性でPSA。早期の前立腺がんも発見できる腫瘍マーカーだ。

女性では30~40代でも乳がんリスクと無縁ではない。自治体の乳がん検診は「40歳以上の女性、マンモグラフィーを2年に1度」となっているが、若いうちはマンモグラフィーだけでは見落とされる可能性がある。マンモグラフィーと超音波の両方を受けるとベター。

「喫煙者の方は胸部CTも受けた方がいい。胸部レントゲンだけでは早期肺がんが見つけづらい」

安くないお金を払って人間ドックを受けるのだから、よりベネフィットがある方法にしたい。秋松さんがまずお勧めするのは、毎年同じ時期に受けること。

「たまたま人間ドックを受けなかった年があり、その翌年に胃がんが見つかったという方がいました。『あの時受けていれば』となることが最ももったいない。当センターの人間ドックの受診者では、終了時に『来年も同じ時期で』と予約を入れていく方も少なくありません」

会社員で健診も受けている場合、健診を4月、人間ドックを10月というように半年のスパンで受けるのが上手なやり方。

次に、結果は「点」ではなく「線」で見る。基準値内であっても、数値の経年変化がどうなっているか。血糖値や血圧が毎年徐々に上がっているようなら、生活習慣の改善を図るべきだ。

さらに、それぞれの検査項目が示す意味を正しく理解する。

「直近だけ飲食を控えて人間ドックに臨んだ人では、中性脂肪や血糖値は一時的に低く出るかもしれません。しかし、中性脂肪と同様、体内の脂質量を示すコレステロール値や、過去数カ月の血糖コントロールを示すHbA1cが高ければ、食事内容を見直す必要があります」

最後に、健診もそうだが、「要精密検査」と出ているのに精密検査を受けに行かない人がいる。結果の封さえ開けない人もいる。それは、異変を早くに見つけられるチャンスをみすみす逃すことになりかねない。「受けたら終わり」ではないことをしっかり認識したい。

© 株式会社日刊現代