福島県富岡町の飲食店「ぼっけもん」が閉店 原発事故挟んで四半世紀 住民に愛され続け

24年間の感謝を込める鈴木さん(右)ら家族

 東京電力福島第1原発事故を挟んで約四半世紀、愛された福島県富岡町の飲食店「ぼっけもん」は14日、閉店した。移転を経て、避難指示が帰還困難区域を除いて解除されると、住民の期待に応えて町内で営業を再開。復興を食で支えた。業績は順調だったが、働き手不足からのれんを下ろした。

 母登美子さん(76)が営んでいた居酒屋を改装して2000(平成12)年に九州ラーメンの店として開業した。看板メニュー「肉みそとんこつラーメン」などが人気だった。原発事故の翌年にいわき市で再開。避難指示解除から1年が経過した2018年4月、常連の声を受けて町内本岡で店を開けた。地域では数少ない飲食店として、復興に携わる人々や帰還した町民に喜ばれた。

 人が戻り、暮らしたいというまちにするには飲食店も含めたインフラが必要だと思ってきた。ただ、再開当初から従業員探しには苦しんだ。3年ほど前からは家族や親戚の手を借りてやりくりしてきたが、登美子さんの年齢も考え、区切りをつけることとした。 店舗跡には今後、新たな飲食店が開店予定という。

 最終営業日の14日は、なじみの味を惜しむ常連客でにぎわった。鈴木さんは従業員不足の悩みを周辺の店や会社からも聞いてきたという。社長の鈴木秀希さん(48)は「復興は道半ば。これからという時に申し訳ない。お客様には感謝しかない」と支えられた地域や常連への思いを語った。

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