自民県連と県議団で不明朗支出、前事務局長はなぜ不起訴 長年のずさんな会計処理が捜査裏付けの「壁」に

京都新聞社が入手した、自民党滋賀県連が政治資金収支報告書の訂正を県選管に届け出た書類。県連は支出の目的を「横領」とし、被害とされる額を記載している

 前事務局長が不起訴処分となった自民党滋賀県連と県議団の不明朗支出問題。口座から不正に出金された経緯や、金が何に使われたのかは分からないままで、問題を受けて発覚した出どころ不明の収入も解明に至っていない。告訴から約1年半に及んだ捜査で立件に踏み切れなかったのは、県連のずさんな会計管理が障壁になったとみられる。

 県連によると、内部調査などに前事務局長は横領を認めていた。関係者は「例えば口座から多めに出金して必要な支払いに一部を充て、残りをポケットに入れていたこともあったようだ」と証言。調査では県連口座から引き出した額で県議団の口座を穴埋めする不正操作も明らかになった。一方、本人は何月何日にいくら出金したか具体的に覚えていなかった、という。

 前事務局長による横領疑惑を受けた調査で、2019~21年の県連の政治資金に、出どころ不明の収入が約870万円あったことも判明。ただ横領疑惑との関連は「はっきりしない」(関係者)という。

 記憶が曖昧だとすれば、会計帳簿を基に立証することはできなかったのか。県連は不明収入が発覚後、京都新聞社の取材に対し、日常的な伝票起票や現金出納帳の作成を行っていなかったことを認めた上で、「会計上あるべき残高と実際の現預金残高の整合性を確認できる状態になっていなかった。資料や関係者の記憶にないものは集計されていない」と明かした。

 さらに、前事務局長が会計担当の職員に指示して出金する仕組みだったが、チェック体制が整っておらず「内部監査は名ばかりになっていた」(関係者)。

 帳簿のずさんさとチェックの甘さは、不正を長年見過ごす土壌を生み、いつ、いくら不正な出金が行われたのか捜査機関が公判維持に足る裏付けをするのに、「壁」になったとみられる。現在の事務担当者は「前事務局長時代の会計はぐちゃぐちゃだったので、不明金の解明はできない。全く分からない状況で、県民に申し訳ない」と話す。

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件で政治不信は高まっている。県連は再発防止策として、外部監査を導入し、収入や支出があるごとに帳簿に記載するよう改めたとするが、疑惑の根幹がうやむやのままでは県民の理解は到底得られまい。

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