タレス・アレニア・スペースが「シグナス」補給船の新型モジュールを製造中 貨物搭載量が大幅増

タレス・アレニア・スペース(Thales Alenia Space)は2024年3月28日(日本時間、以下同)、同社が製造する「シグナス(Cygnus)」補給船の新しい与圧貨物モジュール(Pressurized Cargo Modules: PCM)の主要構造が完成したと発表しました。今回製造されたPCMはより多くの補給物資を国際宇宙ステーション(ISS)へ運搬するために従来のPCMを改良したもので、同社によると2024年秋に与圧試験が実施され、2025年には最終的な組み立てや統合作業が行われる予定です。【最終更新:2024年4月16日14時台】

【▲ タレス・アレニア・スペースの工場で完成したシグナス補給船の最新型PCMの主要構造(Credit: Thales Alenia Space)】

■ISSへ補給物資を運ぶシグナス補給船

シグナスはアメリカ航空宇宙局(NASA)の商業輸送サービス(Commercial Resupply Service: CRSおよびCRS-2)の契約の下で、ISSに滞在中の宇宙飛行士が使用する生活用品、食料、実験器具といった補給物資を定期的に輸送するために運用されているノースロップ・グラマン(Northrop Grumman)の無人補給船です。2013年9月18日に実証機が打ち上げられて以降、2014年1月10日の運用初号機から現在まで10年以上にわたって運用されています。

機体はノースロップ・グラマンが製造するサービスモジュール(Service Module: SM)と、タレス・アレニア・スペースが製造する与圧貨物モジュール(PCM)で構成されています。エンジンや太陽電池を備えたSMはシグナス補給船の飛行を支える要素で、ISSへの自律ランデブーを行うための誘導・航法装置が搭載されています。また、係留中はISSのリブースト(軌道上昇)を実施するためにSMのエンジンを使用することも可能です。

【▲ 国際宇宙ステーション(ISS)に接近するシグナス補給船運用20号機(Credit: NASA)】

一方、PCMは与圧された内部に補給物資を搭載するための円筒形の構造物です。運用初号機から3号機までは最大貨物搭載量が2750kg・容積が18立方mでしたが、運用4号機からはより多くの貨物が搭載できるように最大貨物搭載量を3750kg・容積を27立方mに増加させたPCMを採用したシグナス補給船(以下「改良型シグナス補給船」)が運用されています。

改良型シグナス補給船は、直近では2024年1月31日に「NG-20」ミッションとして打ち上げに成功しました。タレス・アレニア・スペースによると、次のシグナス補給船ミッション「NG-21」で使用されるPCMの最終的なシステム検証と試験が行われており、2024年5月にノースロップ・グラマンへ納入される予定です。

■搭載量をさらに向上させたシグナス補給船が今後登場予定

今回タレス・アレニア・スペースから完成が発表されたのは、改良型シグナス補給船のPCMよりもさらに改良が加えられた最新型のPCMの主要構造です。同社によると、最新型PCMを採用したシグナス補給船の最大貨物搭載量は5000kg・容積は36立方mと大幅に増加します。前述の通り、最新型PCMはモジュールの構造を検証するための圧力テストが2024年秋に予定されており、最終的な組み立て、統合、試験などは2025年に行われる予定だということです。

【▲ 新旧シグナス補給船の最大貨物搭載量の比較表(Credit: sorae編集部)】

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文/出口隼詩 編集/sorae編集部

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