東海道新幹線相模新駅は必要なのか 横浜市独立に向けた神奈川県の苦悩もこだましか停車せず小田原駅と新横浜駅で代替できてしまうので、貨物駅構想なのか

神奈川県及び沿線市町村では東海道新幹線相模新駅の設置を行う構想がある。今回は東海道新幹線相模新駅の必要性について見ていく。

1. 東海道新幹線相模新駅設置構想なるか!

神奈川県では東海道新幹線新駅設置構想がある。

神奈川県には新横浜駅と小田原駅の2つの東海道新幹線の駅があるが、両駅が51.2kmも離れているがゆえ中間に駅を設置したいということのようだ。

設置予定位置はJR相模線倉見駅付近となっている。橋本・海老名~倉見~寒川・茅ヶ崎を通るJR相模線に乗り換えることで駅勢圏を確保し利用者を確保したいようだ。

では東海道新幹線相模新駅を設置した場合、どのような効果があるだろうか。

2. 東海道新幹線相模新駅の設置で鉄道アクセスは改善するのか

では東海道新幹線相模新駅を設置した場合、従来の新横浜駅や小田原駅利用と比べてどのように利用者を増やせるだろうか。

まず、新横浜駅は東海道新幹線全停車駅のため、最速達の「のぞみ」ですら全停車となる。一方で東海道新幹線相模新駅は各駅停車の「こだま」のみ停車で、準速達列車の「ひかり」すら停車しない可能性が高い。このため、新横浜駅と相模新駅が同じアクセス時間の場合、ほぼ確実に相模新駅にはいかず新横浜駅から東海道新幹線を利用する。

また小田原駅のも名古屋までノンストップの「ひかり」が停車することから、相模新駅と小田原駅へのアクセス時間が同一の場合小田原駅へと向かうだろう。

では相模新駅への鉄道アクセスはどうだろうか。

まずは相模新駅より南側。寒川や茅ヶ崎であればJR相模線1本で行けるので小田原より早く到達できる。ただ茅ヶ崎以外の東海道線・横須賀線各駅からは茅ヶ崎で乗り換えが必要となるため乗り換え時間がかかり、20分間隔しかない相模線とあまり乗り継ぎがうまくない場合が多々ある。

結果的に茅ヶ崎以外の東海道線・横須賀線各駅からは小田原までの所要時間と倉見までの所要時間がほとんど変わらないのだ。

ほとんど変わらないのに運賃や料金が高くなる、しかも東海道新幹線相模新駅は全駅停車の「こだま」しか停車しないともなれば、それに価値はあるのでしょうか?

また相模新駅の北側は海老名があるが、2023年3月18日の相鉄新横浜線全線開業により相鉄を使えば新横浜まで1本で行けるようになってしまった。このためみんな「のぞみ」の停車する新横浜駅に向かうようになってしまい、東海道新幹線相模新駅ができて見も向きやしない。もっとも海老名には小田急電鉄もあるので、安く行きたければ小田急線で小田原に行けばよい。東海道新幹線相模新駅は必要ない。

さらに新路線構想についても触れているが、相鉄いずみ野線倉見延伸は絶望的だし、リニア中央新幹線ができようものなら東海道新幹線の列車密度に余裕が出るとはいえ新横浜駅から利用者を奪って橋本駅に集まるので余計人が来なくなる。

つまり、鉄道アクセス面からみて東海道新幹線相模新駅は必要ないと言わざるを得ない。

3. 東海道新幹線相模新駅へ自動車でのアクセスはどうなのか

とはいえ新幹線駅へのアクセスは鉄道だけではない。地方では自動車で新幹線駅まで向かって乗る人も多いし、駅前にたいてい無料の大規模駐車場を構えることもしばしばある。このため政令指定都市にない相模新駅は自動車で向かう人もいるだろう。

神奈川県は道路はそこそこには発達しているが、日本で人口が二番目に多いため渋滞が激しく、また東京・横浜から見て放射状の道路を優先して発展したためそれ以外の環状道路は貧弱で片側一車線がザラである。東海道新幹線相模新駅周辺もそうだ。

そうなると、一般道事情が良くないので東海道新幹線相模新駅に車が集まりにくい。車で利用する人も少ないのだ。

なお神奈川県の資料では圏央道などの高速道路が密集しており利便性が高いとしているが、一般人は新幹線乗車目的で高速道路に乗るのは極めてまれなので旅客駅とした場合それで何を言いたいのかが本当に分からない。県内で高速道路を使うのはトラックなどの物流なのよ。

そうなると、実は神奈川県の構想する東海道新幹線相模新駅は貨物駅として構想しているのではないかとさえ思えてしまう。貨物を取り扱うのであれば2024年問題によるトラック運転手不足を解消する大きな手掛かりになるし、今後2035年以降に貨物新幹線技術ができリニア中央新幹線開業により東海道新幹線の列車密度が空いて貨物新幹線が走行するようなことがあれば貨物駅として東海道新幹線相模新駅は絶大な力を発揮するだろう。

ただ東海道新幹線を管轄するJR東海は鉄道では旅客のみを取り扱っているので、鉄道でも車でも新幹線駅にたどり着く人が限られる東海道新幹線相模新駅の設置意思はない。だって一切もうからないんだもの。

4. では神奈川県は東海道新幹線相模新駅にどのような需要をきたすべきなのか

では神奈川県が東海道新幹線相模新駅を設置するにあたりどのような需要を構想すべきなのか。

これまでの利用想定の多くは神奈川県から西側、つまり中部地方や近畿地方などへの利用を見てきた。このため遅い「こだま」しか停車しない相模新駅はは太刀打ちできないし新横浜駅や小田原駅で問題なく代替できるとした。

ただ、東海道新幹線にはもう1つ方向がある。そうれは東京行きである。

東京への通勤需要を考慮した場合、途中の新横浜と品川は全停車なので「こだま」でも全く問題ない。相模新駅から東京への東海道新幹線「こだま」の所要時間は約30分なので、かなり所要時間を短縮する。

もっとも周辺には海老名から小田急特急ロマンスカー「モーニングウェイ」、茅ヶ崎からJR東日本東海道線特急「湘南」などがあるため競合も多い。ただ、茅ヶ崎~東京間の特急「湘南」は所要時間50分、海老名~新宿間の特急ロマンスカーも約40分かかり東京駅まで1時間かかるため、相模新駅はそれよりは優位に品川・東京へ行ける格好の輸送手段となりうる。

このためもし東海道新幹線相模新駅を設置するのであれば、名古屋・大阪方面ではなく東京への高速移動を見据えるべきだろう。

5. 神奈川県が東海道新幹線相模新駅を維持でも設置したい政治的理由

なんとか東京方面を見ることで活路を見出した神奈川県の東海道新幹線相模新駅構想だが、なぜ神奈川県はこの新駅を作りたがろうとしているのか。それには政治的な事情がある。

神奈川県の人口の半分は横浜市と川崎市で占めている。このため横浜市や川崎市に所在する企業の税金が県に多く入り、その集めた税金を県内各所に分配している。もっとも横浜市と川崎市は政令指定都市で権限が県から多く委譲しているためその分の拠出金相当額はは神奈川県からもらえるのだが、土砂災害対策や連続立体交差化事業などの大規模工事は政令指定都市が主体としてやらなければならないところ多くの税金を神奈川県に持っていかれてしまうため十分な対策ができていないのである。

それに業を煮やした横浜市と川崎市が特別自治市構想と称する神奈川県の独立を推進し始めた。もし神奈川県から独立してしまえば横浜市内と川崎市内の所在するすべての件に支払う税金が横浜市や川崎市の収入となるため、大幅な税収増加が見込めるのだ。もっとも県から独立するので神奈川県警察から横浜市警察・川崎市警察が独立することになるし、横浜市内・川崎市内の県立高校などの県立学校はすべて市立学校になる。

もっとも大幅な減収が見込まれる神奈川県は横浜市と川崎市の独立に反対しているのだが、もし独立する際の動きについて神奈川県と横浜市・川崎市が協議まで始めていることを考えると横浜市や川崎市が神奈川県から独立してもおかしくない状況にある。

神奈川県内の東海道新幹線の駅は小田原駅と新横浜駅の2駅があるが、もし神奈川県から横浜市が独立すると横浜市内の新横浜駅は神奈川県の外になるので神奈川県の東海道新幹線の駅は西に偏った小田原駅ただ1つのみとなってしまう。新幹線が通っているのに駅が1つしかないのは九州新幹線の通る佐賀県新鳥栖駅くらいで、県の端の方しか通っていないためだが、神奈川県は県内を東海道新幹線が横断するにもかかわらず1駅しか新幹線駅がなくなってしまうのだ。

このため神奈川県では横浜市・川崎市の独立による新幹線駅が1つになってしまうことを見据え、東海道新幹線の相模新駅を設置しようとしているのだ。

6. 結び

今回の神奈川県の東海道新幹線相模新駅設置構想は、新横浜駅へのアクセス改善により利用が見込めなくなること、リニア中央新幹線の開業により東海道新幹線とリニア中央新幹線の乗り換えは品川駅が担うことから建設費を回収できるほどの便益効果がないと言わざるを得ない。

東海道新幹線で今後どのようなダイヤ改正を実施するのか、見守ってゆきたい。

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