人は“3種類”に分けられる…タイプ別「飲めるお酒の量」それぞれの上限は?【医師が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

「お酒を飲むと顔が赤くなる」という人は多いと思いますが、なかには「飲んでもまったく顔色が変わらない」という人もいます。実は、この「赤くなる」「赤くならない」の違いで、飲めるお酒の上限が変わってくると、『肝臓から脂肪を落とす お酒と甘いものを一生楽しめる飲み方、食べ方』(KADOKAWA)著者で医師の尾形哲氏はいいます。その根拠と具体的な飲酒量について、詳しくみていきましょう。

お酒を飲めるか飲めないかは、“生まれつき”決まっている

出典:『肝臓から脂肪を落とす お酒と甘いものを一生楽しめる飲み方、食べ方』(KADOKAWA)より抜粋
漫画:松本麻希 出典:『肝臓から脂肪を落とす お酒と甘いものを一生楽しめる飲み方、食べ方』(KADOKAWA)より抜粋
漫画:松本麻希

「NN型」、「ND型」、「DD型」…遺伝子によって3タイプに分類

アルコールの処理能力には個人差があります。飲んでも赤くならない人、赤くなるけれど飲める人、すぐに赤くなってまったく飲めない人の差は、遺伝子によって決まっています。

両親から遺伝子を1つずつ受け継ぐことによって、飲んでも赤くならない「NN型」、赤くなるけれど飲める「ND型」、まったく飲めない「DD型」の3タイプに分類できます。「N=飲める」「D=ダメ」と理解すると、わかりやすいかもしれません。

3タイプの違いは、肝臓内で分解されたアセトアルデヒドを代謝する2型アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)の活性によって決まります。

[図表1]飲酒反応でわかる遺伝子型 出典:『肝臓から脂肪を落とす お酒と甘いものを一生楽しめる飲み方、食べ方』(KADOKAWA)より抜粋

ALDH2の活性が高い人が「NN型」で、アセトアルデヒドをスピーディに分解できます。そのため、飲酒をしても赤くなったり、吐き気や頭痛が起こるなどの反応(=フラッシング反応)がありません。

ALDH2が低活性(高活性の16分の1程度)の人が「ND型」で、フラッシング反応は起こるものの、分解はできるので飲むことはできます。

ALDH2の活性がない人が「DD型」で、まったくお酒を飲めません。自分の遺伝子タイプを知らずに無理に飲んだりすれば、急性アルコール中毒になりかねないので要注意です。

[図表2]遺伝子型を決める酵素の活性度 出典:樋口進 編『アルコール臨床研究のフロントライン』(厚健出版)より作成

アルコール依存症の9割が“飲める”人

[図表3]アルコール依存症のなりやすさ 出典:横山 顕著『お酒を飲んで、がんになる人、ならない人』(星和書店)P.136 表8- 1より著者改変

何かの機会に飲酒をしていた人が、毎日お酒を飲むようになり、次第に飲まずにはいられなくなったり、飲まないと手が震えたりする離脱症状が起こるのが「アルコール依存症」です。

アルコール依存症になる人のうち、87%はお酒が飲める「NN型」の遺伝子を持つ人です。自分はお酒に強い、飲める口だと自負し、量や頻度が増えがちなのです。

飲むと赤くなる人は「がん」のリスクが高い

[図表4]がんになりやすいのは飲むと赤くなる人 出典: A Yokoyama,et al. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev.1996;5(2):99-102.

赤くなるけれど飲める人は、アセトアルデヒドの分解が遅く、肝臓だけでなく食道や咽頭がんのリスクも高いことが知られています。上図は食道がん患者のアルコール分解における遺伝子型の割合を示したもので、毎日飲酒をする人のうち、飲める人(NN型)より赤くなるけれど飲める人(ND型)の割合が多いと示されました。

「赤くならない人」はジョッキ3杯まで、「赤くなる人」は2杯まで

健康のために飲酒量はゼロがベストという結論が出てはいますが、お酒好きな人にとって、今日からお酒を飲んではいけませんと言われても現実はそう簡単ではありません。実際、飲酒によって得られるメリットもあり、いきなりゼロにしてくださいと言うつもりはありません。

ただし、健康リスクを極力上げない飲み方をするには、1日に飲んでよい上限を設けることが大切です

飲んでも赤くならない人は、純アルコール量で60gを上限にしましょう。ビールならジョッキ3杯、日本酒なら3合、ワインならグラス4〜5杯が目安です。意外と飲める気がしませんか?

飲むと赤くなるけれどお酒が好きな人の上限は、純アルコール量で40gです。飲めるけれど肥満や糖尿病がある人も上限は40gにしましょう。

[図表5]1日に飲んでよい上限量は? 出典:『肝臓から脂肪を落とす お酒と甘いものを一生楽しめる飲み方、食べ方』(KADOKAWA)より抜粋

「上限までなら毎日飲んでいいんだ!」は早とちり

勘違いしてほしくないのは、上限を守って毎日飲酒することを推奨しているわけではありません。普段、これ以上の量を飲んでいる人は飲みすぎなので、減らす目安として提示しています。

なお、厚生労働省が「健康日本21」で節度ある飲酒量として明記しているのは、1日平均純アルコール量20gです。これに近づけることが理想ですが、まずはご自身の体質に合わせ、上限を守ることから始めてほしいと思います。

[図表6]純アルコール20g分のお酒の目安 出典:『肝臓から脂肪を落とす お酒と甘いものを一生楽しめる飲み方、食べ方』(KADOKAWA)より抜粋

尾形 哲
医師
一般社団法人日本NASH研究所 代表理事

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