【第3回WUBS】日本の王者白鷗大、歴史的4冠達成を視野に迎える新年度

昨年度の白鷗大は、5月のスプリングトーナメントで準優勝した後、初出場の第2回WUBS(Sun Chlorella presents World University Basketball Series=世界大学バスケットボール選手権)でも準優勝と成果を挙げ、秋の第99回関東大学バスケットボールリーグ戦(以下オータムリーグ)と第75回全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ)で二冠を達成して1年間の活動を終えた。今夏、8月10日(土)から12日(祝・月)にかけて国立代々木競技場第二体育館で開催される第3回WUBSには、日本の大学王者として臨むことになる。

昨年同様にハイレベルな戦いが予想される第3回WUBSは、白鷗大にとって前回唯一敗れた相手であるディフェンディング・チャンピオンの国立政治大学(チャイニーズ・タイペイ/以下NCCU)に借りを返す機会だ。その背景に加えて新チームの成長ぶりなど、見どころや参加意義の多い大会に違いない。

総合力の高いプレーメイカー佐藤涼成、ポーグ健らのリーダーシップやいかに白鷗大は、好成績を残した昨年度のチームから、大黒柱としてチームをけん引してきた身長193cmのフォワード脇 真大(3月に琉球ゴールデンキングスと契約[昨年12月から特別指定選手として活躍])や、190cmのパワーフォワード嘉数啓希(3月に鹿児島レブナイズと契約)、203cmのセンターでディフェンス面の奮闘で大いに貢献したシソコ・ドラマネらが卒業。それでも新年度のチームには得点、リバウンド、アシストと幅広い活躍を見せる173cmの3年生ガード佐藤涼成をはじめ、国内の大学バスケットボール界のエリートタレントが在籍している。新年度のキャプテンはガードの小畠一真(175cm/4年)が務め、パワーフォワードのポーグ健(188cm/4年)が副キャプテンの役割を担う。

最上級生の2人がけん引する新チームは、現時点でも多くの話題を提供している注目チームだ。3月26日に発表された第47回李相佰盃日・韓大学代表バスケットボール競技大会の男子代表には、佐藤のほか陳岡流羽(SG/186cm/4年)、境アリーム(C/196cm2年)の3人が名を連ねている。戦力的には、彼らが成熟度を増していくのと同時に、インカレで優秀選手賞に輝いた留学生のジョエル モンガ(202cm/3年)は、インサイドでの存在感をいっそう増してくるに違いない。さらには新入生にも、FIBA U19ワールドカップ2023で日本代表の史上初のベスト8入りに貢献したシューターの小川瑛次郎(SG/185cm/羽黒高)や、仙台大明成のキャプテンを務めた村 忠俊(PG/180cm)、そのチームメイトだったウィリアムスショーン莉音(C/198cm)らが加わることも明らかになっている。

昨年度惜しくも逃した3冠(スプリングトーナメント、オータムリーグ、インカレ全制覇)、さらにはWUBSでの初優勝を含む4冠。そんな高みを目指すのは欲張りすぎだろうか。いや、このチームなら、これらはすべて目指すべき妥当な目標設定と捉えるべきだろう。タレントぞろいのチームを、最上級生のリーダーシップと網野友雄監督の指針がどのように導いていくか、非常に興味深い。ちなみにWUBSで白鷗大が王座に就けば、日本勢として初のタイトルとなる。

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ジョエル モンガは第2回WUBSの3試合で平均9.3得点、9.7リバウンドのアベレージを残し、その後のインカレでは優秀選手賞に輝く活躍で2度目の王座獲得に貢献した(写真/©月刊バスケットボール)

ディフェンス重視のマインドセットで準優勝に輝いた第2回WUBS

昨年の第2回WUBSでは、初戦でペルバナス・インスティテュート(インドネシア)を97-49で退けた後、準決勝でディフェンディング・チャンピオンだったアテネオ・デ・マニラ大(フィリピン)に73-58で快勝。決勝ではNCCU(国立政治大/チャイニーズ・タイペイ)に前半33-54と大量リードを許したことが響き84-90で敗れたものの、最終スコアが示す通り終盤にフィナーレを彩る猛反撃を見せて大会を盛り上げた。網野監督はディフェンス重視の姿勢を強調してこの大会に臨んだが、3試合での平均失点65.7は大会2位の好成績であり、3試合中2試合で相手を60点未満に封じ十分持ち味を発揮した。さらには、厳しいディフェンスからの素早いトランジションでオフェンスも力強く展開し、平均84.7得点と得失点差19.0は大会1位だった。

今年度もチームに残るメンバーの中では、特に佐藤のオールラウンドな活躍が光った。佐藤は3試合すべてで2桁得点を記録し、3試合のアベレージは17.0得点、7.3リバウンド、3.3アシスト。中でもNCCUとの決勝では、24得点井10リバウンドのダブルダブルに加えて4アシスト、3スティールという大暴れだった。

昨年のWUBS決勝で、オールラウンドな能力の高さを披露した佐藤涼成(写真/©月刊バスケットボール)

プレースタイルとしては、新年度のチームについても網野監督のディフェンス重視の考えは変わらない。昨年度同様、タフなディフェンスで相手を苦しめ、スピード感あふれるオフェンスで得点を重ねるアグレッシブなバスケットボールで楽しませてくれるはずだ。

☆日本の大学バスケットボール

日本の大学バスケットボールは、9つの地区で全11連盟(北海道、東北、北信越、男女各々の関東、東海、男女各々の関西、中国、全四国、九州)と、その統括機構である全日本大学バスケットボール連盟により運営されている。毎年師走に行われるインカレは1949年の第1回大会から昨年までに75回開催され、男子では過去に15の大学が頂点に立った。最多優勝は日本体育大で14回。ただし、21世紀に入ってからは東海大の7回が最多だ。

天皇杯の歴代優勝チームを紐解くと、1950年代半ばまでは大学生たちがバスケットボール界をけん引していたことがわかる。第二次世界大戦後の高度経済成長下における企業チームの台頭や近年のプロ化推進に伴い、大学チームの天皇杯上位進出が簡単ではなくなっているのは間違いない。それでも、2007年の東海大ベスト4進出、13年の青山学院大ベスト8進出など、大健闘の例がある。

昨年のインカレで白鷗大は2年ぶり2度目の日本一に輝いている(写真正面は脇 昌大/©月刊バスケットボール)

☆白鷗大バスケットボール部とは

1986年創設の白鷗大は比較的新しい大学だが、バスケットボール部は男女とも、押しも押されもせぬ強豪としての地位を築き上げている。2023年度はオータムリーグとインカレで男女そろって優勝。Bリーグ、Wリーグで活躍するタレントも多く輩出しており、日本のバスケットボール界の発展を下支えする役割を力強く果たしてきた。

ソルジャーズのニックネームで親しまれる男子バスケットボール部は、近年特に躍進ぶりが目覚ましい。Bリーグ、日本代表での豊富な経験を持つ網野監督の下、過去5年間はいずれもインカレでベスト4入りを果たし、直近3年間連続で決勝に進出。2021年に初優勝を成し遂げると、23年にも2度目の王座獲得に成功している。白鷗大は21世紀に入ってから複数回日本一の座に就いた6大学の一つ。第3回WUBSで優勝するには、前回王者のNCCUやその他の強豪チームを上回る必要があるが、単に胸を借りるだけではない挑戦の姿勢に期待したい。

昨年のWUBS決勝でNCCU相手に惜敗を喫した後、網野監督は「勝てる力があるチームだと思うので、それを信じてもう一つレベルを上げていきたい」とステップアップへの意欲を語った。その後の好成績を見れば、WUBSでの経験が間違いなく糧になっていたことが感じられる(写真/©月刊バスケットボール)


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