1軍31試合出場から大ブレーク…打率.400の23歳 データではっきり、大活躍の理由

日本ハム・田宮裕涼【写真:荒川祐史】

過去5年間の1軍出場は31試合も…今季は打率.400

日本ハムの田宮裕涼捕手が、「打てる捕手」として一気に大ブレイクを果たそうとしている。2023年までの5シーズンで1軍出場がわずか31試合だった若武者。16日の試合前時点で打率.400と好調をキープしている。今回は、田宮のこれまでの球歴と2軍成績に加えて、セイバーメトリクスで用いられる指標をもとに分析していく。

田宮は千葉・成田高から、2018年ドラフト6位で日本ハムに入団。プロ1年目の2019年は2軍で73試合に出場し、続く2020年には1軍デビュー。わずか4試合の出場ながら、打率.429と非常に優れた成績を残した。2021年からの2年間は苦しんだが、2023年はわずか10試合の出場で2本塁打、2盗塁を記録。10月5日のシーズン最終戦ではスタメンマスクを被って2安打を放つなど、確かな成長の跡を示した。

そして、2024年は自身初の開幕スタメンに抜擢され、「9番・捕手」として2打数2安打を記録。捕手としても先発の伊藤大海投手をリードして6回9奪三振無失点の好投を引き出し、チームの勝利に大きく貢献した。その後も攻守にわたって躍動を続け、打率.400とハイアベレージを記録している。

2019年から2023年までの5年間は、いずれも2軍で40試合以上に出場してきた。しかし、複数の本塁打を放ったシーズンも1度もなく、長打率も2022年の.320が最高。2023年には1軍出場した10試合で2本塁打を放ち、長打率.484という数字を残していたことを考えれば、長打率が控えめな数字となっていたのも意外な結果と言えそうだ。

「BABIP」は2024年に.524と高水準

田宮が1軍で記録してきた、年度別の指標を紹介する。キャリアを通じて1軍で選んだ四球は1つだけと、まさに類を見ないほどの積極性を示している。それに加えて、2軍における打率と出塁率の差もかなり小さくなっていることからも、球をじっくりと見ていくのではなく、好球必打の姿勢を徹底していることがわかる。

一方で、長打率は2023年が.484、2024年が.542と、2シーズン続けて優秀な数字を残している。2軍における本塁打の少なさは先述した通りだが、今季は8試合が終了した時点で1本の三塁打を記録。俊足を活かして常に先の塁を狙えるという点は、打者としての生産性を高めるうえでも大きな意味を持っている。

「ISO」は長打率から単打の影響を取り除いた、いわば真の長打力を示す指標とされる。田宮は10試合で2本塁打を放った2023年に.226という非常に高いISOを記録したが、今季はここまで.083と高いとは言えない数字にとどまっている。今後、昨季と同様の長打力を見せられれば、打者としての価値はさらに高まることになる。

本塁打を除くインプレーとなった打球が安打になった割合を示す「BABIP」に目を向けると、2024年は.524と非常に高い数値を記録している。一般的に、BABIPは運に左右されやすい性質を持ち、長い目で見ると一定の数字に収束していく傾向があるとされている。直近の3シーズンにおける田宮のBABIPは、いずれも基準値とされる.300を下回っていた。いわば、今季は運が向き始めているという考え方もできる状況なだけに、今後もBABIPが高水準を保つか否かは、田宮選手にとって非常に重要な意味を持ってきそうだ。

投高打低の傾向が強まる中で、現在のパ・リーグにおける「打てる捕手」という存在の希少性は高まっている。それだけに、田宮がこのまま主軸に成長を果たしてくれれば、チームにとっても他球団に対する大きな優位性を得ることにつながるはずだ。

大ブレークを果たした選手を数多く輩出している日本ハムにおける、新たな注目株と呼べる存在。プロ6年目に大ブレークを果たしつつある田宮選手の躍動感あふれるプレーからは、今後も目を離すことができなさそうだ。(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

© 株式会社Creative2