円安どこまで、貸出金利どうなる… コスト高に悩む青森県内企業、不安と警戒感

冷凍庫で保管しているアラスカ産の白身魚のすり身。円安や米国の物価高で今後の仕入れ値上昇を見込む=16日午後、青森市の丸石沼田商店

 日銀がマイナス金利政策を解除してから、円相場は円高に振れるとの予想に反して円安が加速している。16日の東京市場の円相場は1ドル=154円台に下落。輸入原材料や燃料などのコスト高に悩まされている青森県内企業は「円高になると思ったのに、どこまで円安が進むのか」と不安視する。さらに今後は金融機関が貸出金利の引き上げに動く可能性があるため、コスト高に加えて返済負担の増大にも警戒感を強めている。

 3月19日のマイナス金利解除から約1カ月で4円程度円安が進んだ。緩和的な金融環境を維持するという日銀の方針や米国の各種経済指標の動向、中東情勢の緊迫などが影響している。

 ちくわなど魚肉練り製品製造・販売の丸石沼田商店(青森市)は、アラスカ産やベトナム産の魚肉すり身を輸入して商品に使っている。原材料価格が安い時期に量を多く確保し、冷凍庫で保管して製造コストを抑える対応を取ってきた。

 しかし今後は、円安に加えて調達先の米国の物価高による影響から、さらなる仕入れ価格上昇を見込む。同社の沼田祐寛社長は「円相場が140円、130円と円高に振れてくれたら助かるのだけれど」と気をもむ。値上がり分の販売価格への転嫁には「消費者がついてきてくれるだろうか」と慎重姿勢だ。

 納豆や豆腐などを製造・販売する太子食品工業(三戸町)の工藤茂雄社長は「円高になるのではと見込んで予算を組んでいたが、円安を受けて原価計算をやり直している」と明かし、「今が円安のピークとずっと言われ続けているけれど、160円、170円まで進んだらどうなるのか」とため息をつく。

 日銀青森支店の武藤一郎支店長は16日の会見で「これまでの円安によるコスト高で販売価格への転嫁が進み、消費者の節約志向が高まった。その動きを今の円安が強めているとまでは言えないが、先行きを注意する必要がある」と述べた。

 マイナス金利解除を受け、県内金融機関は4月上旬、預金金利の引き上げに動いた。一般的にはこれに伴って、貸出金利の上昇が進む可能性がある。

 こうした金融環境に、県内商社の幹部は「当然金利は上がると考え、返済負担が増えることを警戒している」と明かす。水産物卸売業の中水青森中央水産(青森市)の担当者は「金融機関から貸出金利の引き上げの連絡は来ていないが、金利が上がれば借り入れを抑えることも考えなければ」と話す。

 丸石沼田商店の沼田社長は「急激な貸出金利の上昇は、負担が一気に高まる。いずれは必要なことだと思うが、徐々に進めてほしい」と求めている。

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