倦怠期カップルにスワッピングやネトラレは効果あり?毛穴まで見えそうな超接写で魅せる官能映画『もっと、その先の快楽』

『もっと、その先の快楽』©endorfilm s.r.o. One Way Ticket Films s.r.o. Pink Productions s.r.o. Česká televize Lava Films Sp. z o.o. 2022

「ネトラレ」は倦怠期解消に有効か?

いわゆるカップル間の「マンネリ解消」は世界共通のテーマであり、はるか昔から“ときめき”を維持するための涙ぐましい努力に、人類は貴重なエネルギーを消費させられてきた。「記念日を大事に」とか「新しいことに挑戦」とか、非日常の演出は確かに一定の効果はあるだろう。

チェコ発の官能映画『もっと、その先の快楽』は、そんな倦怠期を迎えた夫婦ハンカとペトルが主人公。しかし、本作で2人が求めた“非日常”は、赤の他人との肉体的な交流だった。

ハンカとペトルは同棲中のカップル。しかしハンカは、2人の関係が悪化していると感じていた。関係を改善するため、ハンカは自身のエロティックな妄想や欲望をペトルと共有するように。それをきっかけに自分たちの快楽を探求し始めた2人は、やがて他のパートナーとのセックスも試すようになっていく……。

毛穴まで見えそうな超接写で「濡れ場」を見せる!

冒頭から“○○撮り”よろしく手持ちカメラ映像で、しかも毛穴まで見えるんじゃないかという接写で男女の“事後からの2回戦”の生々しさをアピールしてくる本作。かと思えば冷めきった夫婦のまんじりとしない会話劇に切り替わり、観客の漲りをショボンとさせる。

女性陣は美しいが男性陣はとくにイケメンでもマッチョとかでもなく、そのナヨさは夫婦間における“疲れ”を象徴しているかのよう。どうやら主人公カップルは“ベタな幸せ夫婦”らしく、そこから逸脱したくて仕方ないらしい。幸せなら良いじゃん! と言いたいところだが、生活をともにする以上マンネリは避けられず、それが日々の違和感として夫婦間の些細な“ささくれ”を刺激してくるのだろう。

“性の交換”を試してみたけれど……

本作は監督のトマシュ・ウィンスキが、ハンカを演じるハナ・ヴァグネロヴァと共同で脚本を執筆しているところがキモである。男の身勝手な乱交妄想ではなく、女性側のリアルな意見も取り入れているあたりが、物語を支配する罪悪感や、なんとも形容しがたい“うずき”を醸成しているように思える。

夫婦は中盤くらいまでは自分たちの試みに期待を抱いて前向きにディスカッションもするが、徐々に“それ以外”の心情が表情や態度に滲み出てくる。大声で「性の解放」などと叫べればまだ楽なのだろうが、社会的にある程度成功していて意識も高いカップルには、なかなかできることではない。

終盤にはギャスパー・ノエ作品かと思うような、ヒヤリとするシーンも。しかし本作は、背景=建築や自然などが不自然なほどに美しく、観ている側の憧憬を誘うように撮られている。これは同地の人々にとっては当たり前の背景なのか、それとも私たちの周りの“当たり前の日常の美しさ”を示唆しているのか……。

『もっと、その先の快楽』はCS映画専門チャンネル ムービープラス「プライベート・シアター」で2024年4月放送

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