マクセル、樹脂部品の新たな発泡成形技術を開発。リブ部分のみを発泡させ軽量化と強度向上。ドローンの軽量化に応用できるか

同技術によるサンプルは、上海で開催されるプラスチック業界におけるアジア最大の展示会「チャイナプラス2024」(4月23~26日)のMaxell Digital Products China Co., Ltd.(以下:MDCN)のブース(Hall1.1内 日本パビリオンB23)にて参考展示する。

樹脂使用量の削減および軽量化は、カーボンニュートラル達成のために電気自動車(EV)などのモビリティ分野を中心に世界的なメガトレンドとなっているという。それらの課題を解決する手段の1つとして、樹脂を発泡させる発泡成形技術がある。

発泡成形技術は、近年リサイクルや環境負荷の観点より、窒素や二酸化炭素を用いた物理発泡成形技術の実用化が進んでおり、マクセルが2017年に京都大学と共同で開発した低圧の物理発泡成形技術「RIC-FOAM」を応用した装置が現在射出成形装置メーカーより販売されている。その装置を使用し、軽量化や高精度化などを目的に自動車、家電、スポーツなどの分野で使われる部品が製品化されている。

一方で、「RIC-FOAM」を含めた発泡成形技術においては、樹脂の強度が低下すること、発泡剤起因のガスにより外観が悪化することが以前より課題として挙げられていた。

樹脂成形品の強度を高めるためには、基材を厚くする方法のほか、リブという補強構造体が広く採用されている。マクセルでは、これらの課題を解決する方法として、リブのみを発泡させる部分発泡成形技術を開発した。基材は発泡させず、リブのみを発泡させることで、強度ときれいな外観を両立するという。

リブを設けた成形品の曲げ剛性は、リブの高さに応じて高くなるという。そのため、高いリブを形成することで軽くて強い部品を作ることができるが、発泡させていない樹脂の成形では、リブを高くするとリブ根本の樹脂圧力が不足することにより樹脂の収縮に伴う凹み(ヒケ)が生じる。

また、従来の発泡成形では発泡によりヒケを解消できるが、基材も発泡するため強度や外観を維持することが困難だったという。

今回開発した技術を用いることで、従来の発泡成形機をそのまま使用し、射出成形時に金型内でリブのみ部分発泡させることが可能。部分発泡の技術は、マクセルがコアコンピタンスとするアナログコア技術「混合分散」「精密塗布」「高精度成形」のうち、「高精度成形」技術である金型・成形技術を進化させることにより実現した。

今後、同技術をブラッシュアップすることで、軽さ、外観、強度を実現した新しい構造設計およびそれに基づいた樹脂部品の創出に貢献していくとしている。現在、マクセルのグループ会社であるMDCNおよび協力メーカーにて、EVが多く生産される中国向けを中心に、同発泡成形技術を実用化する準備を進めている。

チャイナプラス2024では、マクセルの発泡成形技術「RIC-FOAM」および軽量化と高強度化を実現する応用技術、またそれらを用いた複数のサンプルの展示を行うとしている。

発泡させていない樹脂成形、通常発泡成形、部分発泡成形イメージ(射出成形品 リブ構造断面イメージ図)

部分発泡の効果

金型内におけるガス流通の制御と製品設計、金型設計のシミュレーションにより、狙った箇所のみを部分発泡させる。成形品のヒケやソリが改善され、外観は発泡させていない樹脂同等になる。例えば、基材厚みを1mmと薄くした場合、基材厚み3mmの平板に対して、質量は40%削減されるが、5kgの荷重では変形量が低減し、シミュレーション同等の効果が得られることを確認した。

曲げ試験の方法と結果

▶︎マクセル株式会社

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