またしてもバルサBから逸材CBが台頭! 青田買いで見つけた“ラ・マシア出身者とは異なる資質を持つ”19歳の新怪物候補。早くもプレミア勢の標的に

ベテランのジェラール・ピケに頼りっぱなしだった数年前とは、まさに雲泥の差だ。

バルセロナでCBが、もっとも充実したポジションのひとつになっている。アンドレアス・クリステンセンをアンカーで、ジュル・クンデを右SBで起用できるのはその何よりの証で、しかも、その底上げの最大の立役者である17歳のパウ・クバルシとはプレースタイルもバックグラウンドも対照的な新たな逸材が、バルサBで台頭している。19歳、セネガル出身のミカイル・フェイだ。年齢に似合わぬクレバーなプレーを見せるクバルシとは対照的に、こちらはアフリカの出身選手らしいダイナミックなプレーが特徴だ。

昨夏のデコのSD(スポーツディレクター)就任を境に、バルサは有望株の青田買いに本格的に着手した。スペインメディア『Relevo』によると、その際に狙いを定めたのが、“通常のラ・マシア出身者とは異なる資質を持った選手”だという。そこで当時、クロアチア2部のクストシヤ・ザグレブに所属していたフェイに白羽の矢が立った。CBではないが、フライブルクの下部組織から昨年獲得した17歳のMFノア・ダルビッチも、長身で、得点力を最大の売りとする、これまでのバルサ・カンテラではあまり見かけなかったタイプだ。
フェイのプレーがいかにダイナミックかは、サッカーを専門としたビッグデータの分析を行なう『Driblab』が集計した、空中戦勝率67.9%(スペイン3部のCB部門4位)、タックル成功率83.1%(同5位)という数字からも窺える。自身のセネガル代表デビュー(今年3月のガボン戦)に華を添えた35メートル弾が話題を呼んだが、バルサBの関係者が「何事においても果敢に取り組む。自信に満ち溢れている」と語るように、そうした思い切りの良さは、快足を飛ばしてピンチを阻止したり、対人の強さを発揮して数的不利な状況を打開したり、決死のスライディングタックルで相手のシュートを妨害したりと多方面で活かされている。

フィジカルの圧倒的な優位性を源にしたプレーはロナルド・アラウホとも比較され、またスペイン3部のCB部門では単独トップのパス成功率91.7%を誇るように、その先輩が得意としているとは言えないビルドアップ時の球出しにも優れている。希少価値の高い左利きで、本職のCBに加え、左SBをこなす点もセールスポイントだ。 もはやBチームでは突出した存在で、来シーズンのトップチーム定着が期待されるが、とはいえまだ19歳。CBは経験がものをいうポジションだ。ミスを犯すどころか、ファウルを取られることすら珍しいクバルシはあくまで例外で、フェイに関してはクラブも「じっくり育てていく」方針だ。昨夏のプレシーズンツアー中に指導したトップチームのコーチも、そのポテンシャルの高さを認めながらも、まだ戦術的に粗削りな部分があることを認めていると、前述の『Relevo』は伝えている。

加えて冒頭で触れたように、CBのポジション争いは熾烈を極める。ただその一方で、バルサが金欠であることは周知の通りだ。「主力選手の売却の必要はない」。ジョアン・ラポルタ会長は相変わらず強気な発言を続けているが、内情をよく知るラ・リーガのハビエル・テバス会長は、今夏にバルサがそれなりの補強を行ないたければ、ビッグネームの売却は不可欠と明言している。
その候補の1人に浮上しているのがアラウホで、CBの充実した陣容が「売却容認派」を後押ししている。同じことはマンチェスター・ユナイテッドを筆頭にプレミアリーグやリーグ・アン方面から熱視線を浴びているフェイにも言える。契約解除金は4億ユーロ(約656億円)に設定されており、すべては首脳陣の考え次第だが、220万ユーロ(約3億6000万円)で獲得した無名の若手を、現地で報じられているように2500万~3000万ユーロ(約41億~49億円)で売りさばくことができれば、ビジネス的には大成功だ。

加入から1年も経っておらず、トップチームではデビュー前でありながらも、ピッチ内外で何かと注目を集めるフェイ。バルサBに現われた新怪物候補は、スケール感も伸びしろも十分だ。

文●下村正幸

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