「どこかで自分を救ってほしいというのがあった…」自然や人々に触れ…高知で“コロナうつ”乗り越えた歌手

東京で活動するシンガーソングライターの男性が『コロナうつ』を乗り越えるため高知で暮らしています。「消えてしまいたい」。東京でこう思うこともあった彼は高知の自然に触れ、高知の人々に出会い、今、自信を取り戻しました。

高知市の飲食店で力強く歌う男性。シンガーソングライターのヤマモトケイスケさんです。メジャーデビューは7年前、以来、東京で活動していました。そんな彼が高知で歌う理由。それは、新型コロナです。感染がきっかけで心のバランスを崩し、人前に立つことができなくなりました。高知に来たのは、療養のため。再びギターを手にして歌えるようになるまでの日々をカメラが追いました。

安芸市のビニールハウスでナスの収穫を行っている、ヤマモトケイスケさん。シンガーソングライターです。出身は福岡県。5歳のころ音楽に目覚め、大学卒業後にはギター片手に渡米。帰国後本格的に音楽活動を開始し、2017年4月に、メジャーデビューを果たしました。

大きな壁となったのが、新型コロナです。音楽活動が制限されたことに加え、自身が感染した際には一時期、声がでなくなりました。緊張の糸を張ったギリギリの精神状態の中、逃げることもできず、「そううつ状態」に。時に『消えてしまいたい』と思うこともありました。

(ヤマモトケイスケさん) 「常になにかに追われているような感じがして、いつもずっと糸をピーンと張った状態で。糸を緩めてもいけないし、張りすぎても切れてしまうギリギリのバランスで生きてた気がして、(周りの)みんなも急いでるんですよね。逃げ場がなかった」

ヤマモトさんは心身のバランスを整えるため、2か月前に高知を訪れました。生きづらさを感じる人や障がいがある人に農業を通じた就労支援をする「農福連携」という取り組みを活用し、「こうち絆ファーム」で働いています。他の利用者と関わりながら収穫や出荷作業を行ってくる中で表情も変化してきたと、そばで見てきた代表理事の北村さんは話します。

(こうち絆ファーム 北村浩彦 代表理事) 「1週間くらいは顔色もあまりよくなく、元気がないなという感じだったが、いろんな利用者や職員、みんなと関わることによって、また施設でナスの収穫をするようになってからは、すごく明るくなって顔色も良くなってすごく元気になって、順調に回復してる思う」

この日、ヤマモトさんの姿は、いの町の山間部にありました。

行っているのは土佐和紙の原料、コウゾ畑をきれいにする作業。

(ヤマモトケイスケさん) 「全部が新鮮です、僕にとって。朝が来るたびに、また新しい自分の新しい扉を開いて、また一歩進んでいってるような感じがする」

高知に来て2か月。土に触れ、植物に触れ、様々な人と関わりました。川のせせらぎや鳥のさえずり、日がのぼって落ちるという当たり前のことに改めて気付き、ヤマモトさんは本来の自分を取り戻したと話します。

(ヤマモトケイスケさん) 「すごく自信につながりました。自分にできることがすごくたくさんあるんだなというのと、高知の方々が温かく迎えてくれて、自信を元に制作活動や音楽活動を続けて、今までやってきたことなかった活動も視野にたくさん入っているので行っていきたい」

ヤマモトさんは、再び、音楽活動を始めました。10日後に、高知市の飲食店で高知で出会った人たちに歌うことになり、農作業の後は毎日、ギターを手に譜面に向き合います。

その日がやってきました。

(ヤマモトケイスケさん) 「僕自身、2か月ぶりなので楽しみです」

(カメラマン) 「『ちょっと表情違うな』と思って…んーやっぱちょっとテンション上がっちゅう感じ(笑)」

(ヤマモトケイスケさん) 「本番の自分の土俵といいますか…」

(観客) 「今の自分のいろんなシチュエーションとかぶる所があって、響くものがすごくあった」 「高知でできたご縁や、人のご縁ってほんと大事だなということを私も再確認させてもらって本当に来てよかった」

(こうち絆ファーム 北村浩彦 代表理事) 「実際に生のギター・声が素晴らしいと思って凄い感動した。全然違った。そして本人がすごく来た時より2か月たって元気になっている、また歌に戻れるということ。もう涙出ました。本当にありがとうございます」

(ヤマモトケイスケさん) 「僕の中で音楽で人を救いたいということを音楽を続けるモチベーションにしていたが、どこかで自分を救ってほしいというのがあったみたいで、自分を救ってほしい音楽を高知でまた教えてもらって」

「今までできないことばかり理由にすることが多かった。そうじゃなくてじゃあどうしたらできるかなと考えた方が楽しい、ワクワクすることばかりなので、失敗も結局次の成功につながるステップの一つにしかすぎないと思えれば、全然何回も失敗しようという気持ちに、何回でもへこんで、何回でもころんで」

(よかったですね、高知に来て)

「はい、本当に良かったです」

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